世界のスーパーコンピュータとそれを動かす人々


7月 15, 2015

TOP500発表 日本が大きく躍進!

HPCwire Japan

ドイツ、フランクフルトで開催中のISC(International Supercomputing Conference)において、最新のTOP500が発表された。今回の発表も上位にはほぼ変化がなく、7位にKAUSTのShaheen II(記事を参照)が入ったことが唯一の変化である。ちなみに1位のTianhe-2であるが、1位になったのは2013年の6月であるから、これで5回連続となり2年間首位を保っている。この地位がいつまで続くのか興味深いところだ。

さて、上位にあまり変化がなかったが全体的にはどうなっているだろう。TOP500の最低ラインは実行性能で165TFLOPSと前回の153TFLOPSから若干しか上がっていないが、全体の実行性能では17.6%も伸びている(前回+12.7%)。コア数も前回より伸び率は増えているが、特にアクセラレータのコア数が+24.1%と前回(+15.1%)よりもかなり増加傾向にあるようだ。(前回の記事を参照)

今回値 前回値 伸び率
コア数 23,144,173 25,223,048 +9.0%
アクセラレータコア数 5,520,383 6,848,258 +24.1%
実行性能(GFLOPS) 308,850,512 363,316,936 +17.6%
ピーク性能(GFLOPS) 453,502,503 514,365,615 +13.4

 

では日本の方はどうだろうか?今回日本は大躍進をとげている。TOP500に入ったシステムスは39システムと前回から7システムも増えている。台数ばかりではない。実行性能、理論性能ともに30%を超える伸びだ。やはり年度末のスーパーコンピュータの更新に伴う増加であることは間違いない。また、アクセラレータのコア数も3倍近くまで増えており、TOP500全体のアクセラレータのコア数の3割に達している(前回約1割)。

今回値 前回値 伸び率 TOP500全体

に占める割合

コア数 3,245,742 1,945,550 +66.8% 14.0%
アクセラレータコア数 1,667,642 609,694 +173.5% 30.2%
実行性能(GFLOPS) 33,696,616 25,027,460 +34.6% 10.9%
ピーク性能(GFLOPS) 43,506,246 32,541,972 +33.7% 9.6%

 

全体的に大きく躍進した日本であるが、どのようなシステムが入ってきたのだろうか? 以下に日本の39システムを示す。

今回の特徴は新規システムが11システムもあることだ。特に富士通がFX-100を出荷し始めたことが主な要因であり、さらに14位まではすべてペタフロップスコンピュータである。今回新たに新規に加わった11システム中7システムがペタフロップスコンピュータとなっていることは驚きだ。これが先の3割を超える全体性能の向上につながっているのだ。

また、理化学研究所に設置されたExaScaler社のShoubuはTOP500で162位に入り込んでいる。電力値が不明のため何とも推測し難いが、本年3月には同社がワット当り6.217MFLOPSを計測しており、この値はGreen500で1位に相当する値となっている。これが今回どこまで向上しているのか期待される。

順位 機関名 システム名称 今回TOP500 前回TOP500
1 理化学研究所 K computer 4 4
2 東京工業大学 TSUBAME 2.5 22 15
3 核融合研究所 プラズマシミュレータ 27 新規
4 IFERC Helios 51 38
5 JAXA SORA-MA(FX-100) 53 新規
6 東京大学物性研究所 Sekirei 54 新規
7 東京大学 Oakleaf-FX (FX-10) 65 48
8 九州大学 QUARTETTO(日立HA-8000-tc) 67 49
9 理化学研究所和光 HOKUSAI GW(FX-100) 70 新規
10 気象研究所 FX-100 71 新規
11 国立天文台 Aterui (Cray XC30) 85 63
12 東京大学物性研究所 Sekirei-ACC 88 新規
13 筑波大学 COMA (Cray CS300) 93 570
14 物質材料研究機構 数値材料シミュレータ 94 新規
15 電力中央研究所 SGI ICE X 114 86
16 高エネルギー加速器研究機構 SAKURA(IBM BG/Q) 123 91
17 高エネルギー加速器研究機構 HIMAWARI(IBM BG/Q) 124 91
18 筑波大学 HA-PACS 158 117
19 理化学研究所和光 Shoubu (ExaScaler) 162 新規
20 京都大学 camellia (Cray XC30) 175 132
21 名古屋大学 富士通PRIMERGY 213 165
22 京都大学 magnolia (Cray XC40) 223 174
23 民間(重工業) HP 224 175
24 北陸先端大 Cray XC40 253 新規
25 筑波大学 HA-PACS TCA(Cray) 257 198
26↑ 分子科学研究所 富士通PRIMERGY 264 245
27 OIST Sango 282 新規
28 京都大学 Camphor (Cray XE6) 285 227
29 東北大学金属材料研究所 日立SR-16000 295 236
30 民間(通信) HP 322 260
31 IFERC Helios 327 265
32↑ 高エネルギー加速器研究機構 Suiren (ExaScaler) 366 369
33 統計数理研究所 システム「I」 374 301
34 高エネルギー加速器研究機構 Suiren Blue (ExaScaler) 392 新規
35 日本原子力研究開発機構 富士通BX900 408 332
36 民間(IT) HP 428 352
37 民間(電気) HP 467 391
38 東京工業大学 TSUBAME-KFC 469 392
39 九州大学 富士通PRIMEHPC 496 418

前回からの主な変化は次の通り。

  • システム数は前回の32システムから39システムに増加。
  • 新規に追加されたシステムは11システム。
  • 日本のペタフロップスコンピュータ(理論最大性能)は14システム。
  • 34位のSuirenが前回より性能アップ。
  • 26位の分子科学研究所のシステムが性能アップ。