2015年11月 TOP500 日本は4システム減少
(2015年11月25日訂正)

米国オースティンで開催中のSupercomputing’15において、最新のTOP500が発表された。上位5システムに変化は無く、上位10システムにおける変化は6位のTrinityと8位のHLRSのHazel Hanの2システムが新たに加わったことだ。どちらもCrayシステムである。それに伴い、FZJのJUQUEENとローレンスリバモア国立研究所のVulcanが上位10システムから外れることとなった。
全体的な傾向としてはアクセラレータコア数の伸びよりもプロセッサコア数の伸びが大きい。プロセッサコア数の伸びは前回は+9.0%であったが今回は+15.9%伸びている。今回一挙に約4百万コア増加しているわけだが、上位10システムに新たに加わったTrinityで301,056コア、Hazel Henで185,088コアなので、増加コア分の4分の一に過ぎない。ということは、全体的にコア数が増えたということになる。性能の方は実行性能で+15.1%(前回+17.6%)、ピーク性能で+24.2%(前回+13.4%)となっている。TOP500に入る最低性能は実行性能204TFLOPS必要だった(前回は165TFLOPS)。
今回 | 前回 | 伸び率 | |
コア数 | 29,236,135 | 25,223,048 | +15.9% |
アクセラレータコア数 | 7,080,687 | 6,848,258 | +3.4% |
実行性能合計(GFLOPS) | 418,253,988 | 363,316,936 | +15.1% |
ピーク性能合計(GFLOPS) | 638,924,802 | 514,365,615 | +24.2% |
さて、日本のシステムはどうだったのだろうか?今回日本のエントリは36システムで前回の40システムから3システム減っている。今回新規は3システムだったので、合計6システムがリストから消滅したことになる。今回新たに加わったのは、2位と24位の名古屋大学と35位の原研だ。2位の富士通FX100システムはピーク性能では3位の東工大のTSUBAME2.5に負けているが、実行性能では東工大を抜くことができたようだ。35位のSGIシステムは精通されている方はご存知のようにいろいろな経緯で富士通からSGIに変わった。
もうひとつ注目すべきなのは順位を上げたシステムが2システムあることだ。ひとつめは17位の理研に設置されているPezy+Exascaler社の菖蒲システムである。前回は160位で実行性能は412TFLOPSだったのに対し、今回は605TFLOPSと1.5倍になっている。これまでもPEZY社が各種の会合で説明していたように、前回の計測ではシステムをフルに稼働することができなかったためである。今回160位から135位に躍進している。また、統計数理研究所のシステムも順位を上げている。前回は375位で実行性能は201TFLOPS、今回は264位で364TFLOPSで1.8倍の性能だ。これはプロセッサコア数が前回の9,600コアから18,624コアに増えたことと、アクセラレータを増設したことによるものらしい。
順位 | 機関名 | システム名 | 今回TOP500 | 前回TOP500 |
1 | 理化学研究所 | 京コンピュータ | 4 | 4 |
2 | 名古屋大学情報基盤センター | FX100 | 22 | 新規 |
3 | 東京工業大学 | TSUBAME2.5 | 25 | 22 |
4 | 核融合科学研究所 | プラズマシミュレータ | 31 | 27 |
5 | 日本原子力研究開発機構 | SGI ICE X | 35 | 新規 |
6 | IFERC | Helios | 60 | 52 |
7 | JAXA | SORA-MA | 61 | 53 |
8 | 東京大学物性研究所 | Sekirei | 62 | 54 |
9 | 東京大学情報基盤センター | Oakleaf-FX | 75 | 65 |
10 | 九州大学情報基盤研究開発センター | QUARTETTO | 78 | 67 |
11 | 理化学研究所情報基盤センター | HOKUSAI GW | 83 | 70 |
12 | 気象研究所 | FX100 | 84 | 71 |
13 | 国立天文台 | Aterui | 101 | 85 |
14 | 東京大学物性研究所 | Sekirei-ACC | 104 | 88 |
15 | 筑波大学計算科学研究センター | COMA | 112 | 93 |
16 | 物質材料研究機構 | 数値材料シミュレータ | 113 | 94 |
17 | 理化学研究所情報基盤センター | 菖蒲 | 135 | 160 |
18 | 電力中央研究所 | SGI ICE X | 139 | 112 |
19 | 高エネルギー加速器研究機構 | HIMAWARI | 155 | 121 |
20 | 高エネルギー加速器研究機構 | SAKURA | 156 | 122 |
21 | 筑波大学計算科学研究センター | HA-PACS | 219 | 156 |
22 | 京都大学学術情報メディアセンター | Camellia | 255 | 173 |
23 | 統計数理研究所 | システム「i」 | 264 | 375 |
24 | 東京大学医科学研究所 | Shirokane3 | 287 | 193 |
25 | 名古屋大学情報基盤センター | Fujitsu CX400 | 288 | 新規 |
26 | 京都大学学術情報メディアセンター | Magnolia | 322 | 222 |
27 | 民間重工業 | 323 | 223 | |
28 | 北陸先端大 | Cray XC40 | 365 | 252 |
29 | 筑波大学計算科学研究センター | HA-PACS TCA | 370 | 256 |
30 | 分子科学研究所 | 富士通 | 377 | 263 |
31 | 東京工業大学 | TSUBAME-KFC | 393 | 469 |
32 | 沖縄科学技術大 | Sango | 402 | 281 |
33 | 京都大学 | Camphor | 405 | 284 |
34 | 東北大学金属材料研究所 | Hitachi SR16000 | 419 | 294 |
35 | 民間通信会社 | 450 | 321 | |
36 | IFERC | Helios | 455 | 326 |
37 | 高エネルギー加速器研究機構 | 睡蓮 | 497 | 366 |
次回はもう少し深く世界の中の日本の現状を分析してみたい。