世界のスーパーコンピュータとそれを動かす人々


6月 26, 2014

TOP500:世界の中の日本

HPCwire Japan

西 克也

今週発表された新たなTOP500の上位に変化はなかったが、さて日本のスパコンはどうだったのだろうか?かつては米国についで世界で2番目であったスパコン大国日本の現状を見てみよう。

リスト全体ではアメリカは相変わらず233システムをエントリさせており全体の約半分を占めている。次に多いのは中国だ。中国は76システムと前回の63から驚異的な伸びを示している。日本は30システムと数の上ではイギリスと同じで3番目に多いエントリ数となっている。

まずはTOP500全体の合計状況を表1に示す。コア数およびアクセラレータコア数の伸びは小幅であったが、理論最大性能の合計は前回と比較して1割の増加となり、初めて400ペタフロップスを超えた。実行性能の合計もそれにともなって同様に伸びている。

今回値 前回からの伸び率
コア数 21,666,731 +4.6%
アクセラレータコア数 4,796,162 +4.6%
実行性能(GFLOPS) 274,100,486 +9.6%
理論性能(GFLOPS) 403,500,906 +10.7%

表1. TOP500全体の合計値

さて日本はでどうであろうか、表2に日本のシステムの合計値を示す。

今回値 前回からの伸び率 全体に占める割合
コア数 1,657,278 +6.3% 7.6%
アクセラレータコア数 337,246 +36.1% 7.0%
実行性能(GFLOPS) 23,997,822 +6.8% 8.8%
理論性能(GFLOPS) 31,072,507 +7.4% 7.7%

表2. 日本の合計値

コア数の伸びは小幅であったがアクセラレータコア数が36.1%増と全体と比較して大きな伸びを見せている。前回日本のアクセラレータコア数の合計は247,800であったので、約9万コア増えたこととなる。これは筑波大学のCOMAシステムが47,824コア、京都大学のcamelliaシステムが28,800コア、FOCUSのSystem Eが11,520コアで、この3システムにより増加した9万コアのほとんどを占めている。いくらアクセラレータのコア数が増えたとはいえ、システム全体に占めるアクセラレータの割合が小さいため、性能の合計値にはあまり貢献していないようだ。理論性能および実行性能の合計とも約7%程度の伸びとなっており、全体平均の約10%の伸びと比較するとあまり良い増加率ではないように見える。

さて、TOP500中の日本のシステムであるが、今回は30システムとなった。前回は28システムであったので2システムの増加とも言えるが、実際には新規が6システムで、リストから外れたのが4システムとなっている。今回リストから外れた4システムには、海洋研究開発機構のSX-9や北海道大学のSR-16000が含まれている。

機関名 システム 今回順位 前回順位
1 理化学研究所  K computer  4  4
2 東京工業大学  TSUBAME 2.5 13 11
3 IFERC  Helios 30 24
4 東京大学  Oakleaf-FX (富士通FX-10) 36 30
5 九州大学  QUARTETTO(日立HA-8000-tc) 37 36
6 筑波大学  COMA (Cray CS300) 51 新規
7 電力中央研究所 SGI ICE X 63 54
8 高エネルギー加速器研究機構  HIMAWARI(IBM BG/Q) 68 57
9 高エネルギー加速器研究機構  SAKURA(IBM BG/Q) 69 58
10 筑波大学  HA-PACS 89 73
11 国立天文台  Aterui (Cray XC30) 90 74
12 京都大学  camellia (Cray XC30) 102 新規
13 名古屋大学  富士通PRIMERGY 134 108
14 民間(重工業)  HP 142 新規
15 筑波大学  HA-PACS TCA(Cray) 165 134
16 核融合科学研究所  Plasma Simulator(日立) 187 152
17 京都大学  Camphor (Cray XE6) 190 155
18 東北大学金属材料研究所  日立SR-16000 196 162
19 分子科学研究所  富士通PRIMERGY 204 168
20 民間(通信)  HP 216 178
21 民間(電気)  IBM iDataPlex 252 364
22 日本原子力研究開発機構  富士通BX900 269 211
23 民間(IT)  HP 286 229
24 民間(電気)  HP 323 新規
25 九州大学  富士通PRIMEHPC 340 264
26 東京大学物性研究所  SGI ICE 369 272
27 民間(ソリューション)  IBM iDataPlex 377 新規
28 東京工業大学  TSUBAME-KFC 437 311
29 計算科学振興財団  System E(Cray CS300) 452 新規
30 京都大学  Laurel (Cray XtremeX) 495 378

表3. TOP500における日本のシステム

数年前よりHPやIBMが民間のシステムを掲載するようになった。今回も新たに3システムが掲載された。4位の京コンピュータは順位を維持できたが、他のほとんどは順位を下げている。その中で順位を上げているシステムがある。今回252位となった民間のシステムだ。IBM iDataPlexを使用しており前回の364位から大幅に順位を伸ばしている。電気関係の民間ということであるが、このサイトはちょっと興味深い。まずひとつには前回のIBMシステムを増強したようだ。IBM iDataPlexのコア数を7,088コアから9,968コアに増強しており、実行性能も前回の140TFLOPSから196TFLOPSと40%増大している。このおかげで順位が364位から252位にあがったのだ。また、この企業は今回HPのシステムも導入したようだ。HPのシステムは323位にリストされて新規追加となっている。この企業は2つのシステムをランクに入れており、合計の理論最大性能は479TFLOPSで1システムであれば110位以内にランクされる大規模システムだ。

また筑波大学が3つのシステムをランク内に出したことも興味深い。最新のCOMAおよび従来のHA-PACSとHA-PACS TCAであるが、100位以内に2システムと165位に1システムであり、暫くは3システムともTOP500に残りそうだ。

次回のTOP500リストは2014年11月に行われるSupercomputing 2014会議において発表される。