世界のスーパーコンピュータとそれを動かす人々


6月 30, 2014

みずほ証券、インテルXeon Phiで顧客を支援

HPCwire Japan

スポンサー記事:インテル

新しいXeon Phiベースのシステム、計算時間で30倍の高速化を実現

 優れた財務収益をもたらす形で顧客と「喜びを共有すること」は、みずほ証券の明言化された目標のひとつだ。この機関は日本の3大メガバンクのひとつであるみずほファイナンシャルグループのメンバーである。

みずほ証券の取締役社長 本山博史氏は昨年の中期事業計画の中で、会社の総合力の向上は、この目的を達成するための重要な部分であると指摘している。そこには業界をリードするHPCを含む金融技術の強化が含まれている。

具体的に、この企業の債券グループの一部である信用・デリバティブ取引部門は、世界的な金融機会を活用するための業務の合理化に興味を持っていた。低金利は、仕組債および債券とデリバティブの組み合わせに基づいた事前パッケージ化された投資の需要をもたらしていた。

信用・デリバティブ取引部門のディレクターである赤羽崇氏は「デリバティブを評価するには、複雑な確率微分方程式を解く必要があるのです。」と説明している。

赤羽氏は、デリバティブの指標価格設定を行うためのデリバティブ評価システムが必要とする膨大な計算量は非常に長時間かかるため、顧客の要求を満足することができなかった、と語っている。また、リスク値の計算(トレーダーが自分のポートフォリオを管理するために必要なもの)は、取引の増加により完了するまでに丸一日かかるようになっていた。

赤羽氏と彼のクオンツ・チームは、NVIDIA Teslaテクノロジーと強力な富士通の京コンピュータを含む、処理能力を高めるためのいくつかのオプションを調査した。NVIDIAのソリューションは複雑であり、あまりにも多くの開発時間を必要とすると判断した。京コンピュータは、単に高価であるだけでなく、新しいアーキテクチャを特色としており、みずほの部門にとっては不慣れであった。

このクオンツは既に8コアのIntel Xeonプラットフォーム上でデリバティブの評価モジュールを開発していた。急成長する仕組債市場の計算需要により、このみずほのチームは高性能のIntel XeonPhiコプロセッサの利用を調査することとなった。チームは開発パートナーであるフィックスターズ社の支援を受け、Xeon Phiの高並列処理能力を最大限に活用するための必要なアルゴリズムを作成した。

「Xeon Phiは他のプラットフォームよりも簡単に見えました。」と赤羽氏は語っている。「実際に、私どものクオンツは6ヶ月でプロトタイプ・モジュールを開発しましたが、これは非常に速いです。」

この部門は2014年3月に新しいシステムを運用環境で使い始めた。各計算ノードは4基のIntel Many integrated Core (MIC)アーキテクチャをベースとしたXeon Phiコプロセッサを搭載したLinuxサーバから構成されている。システムのグリッド・コンピューティング・アーキテクチャはIBM Platform Symphonyがベースである。

システム上で実行されているアプリケーションは金利および外国為替(FX)のデリバティブを評価している。システムは現在「プレーンバニラ」デリバティブ(標準、金融商品の最も基本のバージョン。)を計算している。仕組債(エキゾチックデリバティブが組み込まれた債券)については、この夏に稼働予定だ。

「Intel MICアーキテクチャへの移行は私どものサーバコストを大幅に削減します。」と赤羽氏はコメントしている。「この大きさのシステムを持つ他の金融機関でのコストは私どものシステムコストの10倍以上であると推測しています。」

以前のXeonベースのプラットフォーム上でこのアルゴリズムを動かした場合と比較すると、新しいPhiベースのシステムは計算時間で30倍以上のスピードアップを提供していると赤羽氏は付け加えている。

しかし、赤羽氏は終わりまでには程遠い。みずほの顧客により多くの喜びをもたらす新しい目標を持っているからだ。

例えば、「私どもの目標は全ての計算をリアルタイムにプラス1秒で終了するようなシステムを構築することです。」と語っている。高速なXeon Phiコプロセッサは赤羽氏の野望を実現することに役立つだろう。