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10月 15, 2014

エクサスケーラー社、Green500を狙う国産液浸型冷却システムを発表

HPCwire Japan

株式会社ExaScaler社(東京都千代田区)は、完全開放型で保守性に優れ、システム全体を高効率に冷却できる新しい液浸冷却手法を開発したと発表した。

発表記事によれば、この新しい手法により16kWまでのシステムを冷却可能なサーバラック8U(ユニット)の液浸冷却システム「ESLC-8」を、来月11月16日から21日まで米国ルイジアナ州ニュー・オーリンズで開催されるSC14において、共同研究先の東京大学ブースでパネル展示を行う予定だという。

液浸冷却には、相変化による気化熱(潜熱)を用いて冷却(Two-Phase Cooling)を行う密閉型と、冷媒による熱伝導によって液体のまま抜熱することによって密閉環境を不要とした開放型が実用化されている。前者の代表例として、米Cray社のCray-2で採用された沸騰冷却システム、後者の例として、不活性合成油を用いた米Green Revolution Cooling社のCarnotJetシステムがあげられる。

ESLC8-2
ESLC-8システム小型室外機

ExaScaler社によると、今回開発したESLC-8は完全な開放型であり、水と比較して大きく粘度が異ならない不活性液体を冷媒として用いていることから、高い保守性を確保できるとのことだ。冷媒から抜き出した基板は短時間で冷媒を切ることができ、空冷環境の場合とほぼ同等に扱うことが可能となるらしい。また、ESLC-8で使用する冷媒は水よりも蒸発し難い性質を持つため、気化熱(潜熱)を用いる冷却装置で使用される冷媒とは異なり、蒸発による冷媒損失を懸念する必要がない。ESLC-8は、これまでの液浸冷却装置と比較して、高い効率での冷却を可能としている。当初の構成では合計16kWまでのシステムをサーバラック8Uに実装して、冷媒をポンプで強制的に循環し、熱交換器、ならびに小型室外機により冷却することで、主要な半導体電子部品を含めてシステム全体の温度を循環冷媒から20℃以内に保つことが可能となるとのことだ。

ExaScaler社は一般的な19インチラック用の1Uサーバー製品を8U分収納可能なESLC-8に引続き、4U構成、16U構成、32U構成の製品を順次製品化する予定とのことだ。加えて、新しい液浸冷却方式に特化したマザーボードの独自開発も計画しているそうだ。

これらの製品構成により、ExaScaler社では今回開発に成功した独自の液浸冷却システムを基軸に、HPC領域とデータセンター市場に向けた事業展開を計画していると言う。

ESLC-8諸元:(発表資料による)

冷却可能システム 1Uサーバ8台分
搭載可能CPU数 16個(Intel Xeon E5プロセッサ)
搭載可能GPU枚数 32枚(PCIe 3.0 x16接続)
冷却能力 13,800 Kcal/h(循環冷媒温度25度,室外機2台構成時)
ポンプ能力 100リットル/min
冷媒物性と容量 不活性液体(非公開),約200リットル
液浸型冷却槽外形 100(H)x60(W)x45(D) cm (配管突起部を含まず)
液浸型冷却槽重量 約480Kg (冷媒を含む)