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7月 12, 2016

2016年6月TOP500分析 (2) 国内リスト状況

HPCwire Japan

中国の大量エントリに伴って各国がエントリ台数を減らすこととなったが、日本も前回の37エントリから29エントリに8エントリも減らすこととなっている。今回の最低ラインは前回の206TFLOPSから286TFLOPSと約39%上昇している。前々回の最低ラインが165TFLOPSで前回に対しては約25%の上昇だったので、今回の伸びは著しい。そのため前回リストにあった下記10システムがリストから落ちることとなってしまった。

北陸先端大 Cray XC40
筑波大学 HA-PACS TCA
分子研 富士通CX250
東工大 TSUBAME-KFC
沖縄先端大 Sango
京都大学 Comphor
東北大/金材研 SR16000
民間通信会社
IFERC Helios Xeon Phi
高エネ研 睡蓮

新規は理研の菖蒲と自動車会社の2エントリで差し引き8エントリ数が失われたこととなる。

 

順位 機関名 システム名 今回 前回 Rmax
1 理化学研究所 京コンピュータ 5 4 10,510
2 JAXA SORA-MA (FX100) 23 60 3,157
3 名古屋大学情報基盤センター FX100 26 21 2,910
4 東京工業大学 TSUBAME2.5 31 24 2,785
5 核融合科学研究所 プラズマシミュレータ 38 30 2,376
6 日本原子力研究開発機構 SGI ICE X 43 34 1,929
7 IFERC Helios 70 59 1,237
8 東京大学物性研究所 Sekirei 72 61 1,178
9 東京大学情報基盤センター Oakleaf-FX 85 74 1,043
10 九州大学情報基盤研究開発センター QUARTETTO 88 77 1,018
11 理化学研究所情報基盤センター 菖蒲 93 135 1,001
12 理化学研究所情報基盤センター HOKUSAI GW 96 83 989
13 気象研究所 FX100 97 84 989
14 国立天文台 Aterui 118 101 801
15 東京大学物性研究所 Sekirei-ACC 122 104 777
16 筑波大学計算科学研究センター COMA 132 112 746
17 物質材料研究機構 数値材料シミュレータ 134 113 742
18 電力中央研究所 SGI ICE X 173 139 582
19 高エネルギー加速器研究機構 SAKURA 199 156 537
20 高エネルギー加速器研究機構 HIMAWARI 200 155 537
21 筑波大学計算科学研究センター HA-PACS 294 219 422
22 自動車会社 HP Apollo 325 新規 403
23 京都大学学術情報メディアセンター Camellia 345 255 381
24 統計数理研究所 システム「i」 363 264 364
25 東京大学医科学研究所 Shirokane3 398 287 343
26 名古屋大学情報基盤センター Fujitsu CX400 400 288 341
27 京都大学学術情報メディアセンター Magnolia 455 322 307
28 民間重工業 457 323 306
29 理研宇宙物理研究室 皐月 485 新規 290

 

今回ここで注目したいのは、前回60位から急浮上して23位となり、国内2位となった宇宙航空研究開発機構のSORA-MAだ。今回のLINPACK実行性能は3,157TFLOPS、ピーク値は3,481TFLOPSだ。前回はそれぞれ、1,189TFLOPS、1,310TFLOPSであったので、半年で3倍近くになったこととなる。実はこれは元々計画されていたもので、SORAは3期に分けた計画となっている。第一期は2014年10月の55.8TFLOPS、第二期は2015年10月の1.31 PFLOPS、そして今回の第三期は2016年4月運用開始の3.49PFLOPSとなっていたのだ。これはかなり大きな性能向上であり今回国内2位になったことについてはあまり公表されていない。そのことについてJAXAは、計算機の性能でなく成果が重要であるので公表していないとコメントしている。

さらに今回からTOP500とGREEN500が統合され、発表も同時に行われるようになった。また今回から計測方法が変更となり、値は前回より下がることとなっている。以下が上位5位である。

 

順位 機関名 国名 システム名 メーカー MFLOPS/Watt Rmax
(TFLOPS)
1 理化学研究所情報基盤センター 日本 菖蒲 PEZY Computing 6,673 1,001
2 理化学研究所宇宙物理研究室 日本 皐月 PEZY Computing 6,195 290
3 無錫国立スーパーコンピューティングセンター 中国 Sunway TaihuLight NRCPC 6,051 93,015
4 近代物理研究所 中国 Sugon 4,778 311
5 民間 中国 Inspur 3,775 415

 

今回のリストでの注目点は1,2位にPEZY Computingの睡蓮と皐月が輝いているいることもあるが、3位のSunway TaihuLightだ。以前GREEN500の上位をIBMのBlueGeneが独占した時期もあったが、それ以降は比較的性能が低いシステムにおいて低消費電力性能が競われてきた。しかし、今回Sunway TaifuLightはTOP500の断トツ首位にも関わらず、GREEN500でも3位に入賞してきた。大規模システムにおける低消費電力の実現は将来のエクサスケールシステムにもつながる大きな技術要素だ。また、上位5システムの内3システムが中国で、上位20システムの内でも何と17システムが中国であることも驚きだ。中国が今後この低消費電力性能をどこまで向上していくのか、さらにそれに対抗して日本を含む他の国はどのような開発を行っているのかが注目される。