世界のスーパーコンピュータとそれを動かす人々


11月 14, 2013

超強力磁石開発のためのスーパーコンピューティング

HPCwire Japan

Tffany Trader

日本のIT企業である富士通が、京スーパーコンピュータを使って永久磁石の磁化反転プロセスをシミュレーションする技術を世界で始めて実現した。公式発表によれば、「この技術は、重レアアースに依存しない電気モーターや発電機などの装置を製造できる新たな可能性を切り開きました。」

磁化反転プロセスは、価値の高い科学研究であるが、磁性材料を正確にモデル化するには膨大な計算量を必要とする。富士通が開発した技術は、有限要素法とマイクロマグネティックスを組み合わせたもので、原子数個程度の微小領域に分割するプロセスになっている。この技術により、従来の方法よりも何倍も小さなナノ・スケールでの複雑な微小構造を持った磁化プロセスが計算可能になった。

本研究は、重レアアース元素を必要としない強力な磁石などの新たな磁性材料を開発する方向への踏み石となる。こういった元素はその供給量が限られているため、重要なことである。ハイブリッドや電気自動車に使われている最新型のモーターは、これら重レアアースに依存しているので、新たな超強力磁石が出現すれば、この成長分野に大きな恩恵をもたらすはずである。

レアアース磁石の磁化反転シミュレーションは、 物質・材料研究機構の協力のもと、京スーパーコンピュータで実施された。9月5日に北海道大学で開催された第37回日本磁気学会学術講演会で、富士通と物質・材料研究機構との共同で発表された。

富士通によって開発された京スーパーコンピュータは、神戸にある理研計算科学研究機構に設置されている。Linpackで10.51ペタフロップスの性能を持ち、最新のTOP500で4位に位置している。

研究者の次のステップは京システムで超巨大計算を実施し、"マルチスケール磁性シミュレーター"を開発することだ。