米国、エクサスケールに迫る。Frontierの設置が進行中
Tiffany Trader

先日(9月29日~30日)にZoomで開催されたAdvanced Scientific Computing Advisory Committee(ASCAC)において、スーパーコンピュータ「Frontier」がテネシー州オークリッジにあるオークリッジ国立研究所でインストール中であることが明らかになった。オークリッジ・リーダーシップ・コンピューティング・ファシリティのスタッフは、エクサスケール・コンピューティング・プロジェクトのコミュニティとテクノロジーパートナーであるHPEの支援を受けて、今年、米国初のエクサスケール・システムをフィールドに投入し、システムが初日から実際の科学に対応できるようにするために懸命に取り組んでいる。
DOEの先端科学コンピューティング研究局(ASCR)のBarb Helland副局長は、「2021年9月30日までに、少なくとも1台のエクサスケール・コンピューティング・システムの導入(ハードウェアの受け取りと設置)を開始する 」という優先目標を達成したと宣言した。
![]() |
|
ORNLで行われているフロンティアのインストール作業(出典:ORNL/DOE) | |
これは、「政府のニーズや人工知能技術などの社会的な優先課題を代表するさまざまなアプリケーションにおいて、現在の10ペタフロップス(1秒間に10^15回の浮動小数点演算)システムの少なくとも100倍の性能を提供するハードウェアとソフトウェアの能力を統合した、有能なエクサスケール・コンピューティング・エコシステムを構築するための研究開発に従事する」というDOEの大きなミッション目標における重要なマイルストーンとなる。
「我々はキャビネットを手に入れている。」とHellandは150人近いASCACミーティングの参加者に語り、「Frontierは配送されている。」と述べた。
「これは重要なことです。なぜならば、米国政府は、有能なエクサスケール・コンピューティング・エコシステムの研究開発に従事するという省庁の優先目標を掲げていたからです。『2021年9月30日までに、少なくとも1台のエクサスケール・システムの導入を開始する』というのが、この省庁優先目標で達成しなければならない主なマイルストーンです。そのシステムがFrontierです。」
Frontierは、HPEが構築した9,000台以上のCray EXノードで構成され、各ノードには第3世代のAMD Epyc CPU1基とRadeon Instinct MI200 GPU4基が搭載され、Slinghot 11ネットワークで接続される。ORNLによると、Frontierは1.5エクサフロップス以上のHPCおよびAI処理性能を提供すると予測されている。
今年の夏、DARPAが2008年に設定した20MWのエクサスケール・パワーという目標を、Frontierが達成できることが分かった。29メガワットで1.5エクサフロップスを実現するということは、1エクサフロップスで19.33メガワットということになる。
![]() |
HPC User Forumで発表(2021年9月7日) |
達成されれば、この印象的なエネルギー効率の飛躍は、(2019年にCrayを買収した)HPEと、2025年までに30倍のエネルギー効率向上を達成するという目標を本日公表したばかりのAMDによる技術の進歩を示すことになる。
これらの技術やその他の技術の進歩は、一連のエクサスケール開発プログラム(FastForwardなど)や、CORAL(Collaboration of Oak Ridge, Argonne and Livermore)プログラム、さらにはNational Strategic Computing InitiativeやExascale Computing Projectを通じて行われた公共投資がなければ、この時間枠では実現できなかっただろう。
![]() |
「OLCF is ready for Frontier」(出典:DOE ASCACミーティングスライド、2021年9月29日)。 |
現在進行中のFrontierインストールを示すフルサイズのヘッダー画像:こちら。