世界のスーパーコンピュータとそれを動かす人々


2月 9, 2022

地球外核に含まれる炭素量の推定に3台のスーパーコンピュータが威力を発揮

HPCwire Japan

Oliver Peckham

炭素は、地球上の生命体に不可欠な構成要素の1つであり、水素、窒素、酸素とともに、居住可能な惑星を探したり、惑星がどのようにして形成されたかを解明したりする際に、重要な元素の1つである。しかし、地球コアの多くは人間にとって不透明で、直接触れることができないため、地球の組成についての理解はほとんど進んでいない。今回、フロリダ州立大学(FSU)とライス大学の研究者らは、スーパーコンピュータを利用して、地球外核に含まれる炭素量をより正確に推定することに成功した。

今回の研究をまとめた論文の共著者であり、フロリダ州立大学の地質学准教授であるMainak Mookherjeeは、サンディエゴ・スーパーコンピュータ・センター(SDSC)のKimberly Mann Bruchおよびフロリダ州立大学のBill Wellockとのインタビューの中で、「地球コアの組成を理解することは、固体地球科学における重要な問題の1つです。惑星のコアは大部分が鉄であることがわかっていますが、鉄の密度はコアの密度よりも大きいのです。コアには、密度を下げるための軽い元素があるはずです。炭素はその1つであり、どれくらい存在するかについて、より良い制約を与えています」。

今回の研究では、地球外核の組成を推定するために、これまで知られていた惑星を伝わる音波の特性を、第一原理分子動力学法(FPMD)を用いて様々な異なる惑星の組成で同じ実験をシミュレーションして得られたデータと比較した。

FPMDは、このような実験では高い計算コストがかかるため、研究者たちはXSEDE(Extreme Science and Engineering Discovery Environment)から割り当てられた3台のスーパーコンピュータを利用した。SDSCのスーパーコンピュータ「Expanse」(2.48 Linpackペタフロップス)、ピッツバーグ・スーパーコンピュータセンターの「Bridges-2」システム、テキサス先端計算センターの「Stampede2」システム(10.7 Linpackペタフロップス)である。

その結果、地球外核の重量の0.3〜2.0パーセントに相当する550~3680京トンの炭素があると推定された。「地球外核に含まれる炭素の割合は低いですが、面積が非常に大きいため、膨大な量になります」と、論文の主執筆者でFSUの地球科学のポスドク研究員であるSuraj Bajgainは述べている。

「XSEDEのコンピューティングアロケーションを利用しなければ、私たちの研究は実現しませんでした」とBajgainは付け加えた。「私たちの研究の次のステップでは、Expanseを使って、炭素だけでなく複数の軽元素の影響を調べて、研究を改善していきます」。

この研究の詳細については、SDSCのKimberly Mann BruchとFSUのBill Wellockの報告書はこちらで、論文はこちらでご覧ください。