世界のスーパーコンピュータとそれを動かす人々


3月 5, 2015

宇宙シミュレーションが暗黒物質を照らす

HPCwire Japan

Chelsea Lang

哲学者は、我々の宇宙、そして宇宙に存在する我々すべてが、巨大なコンピューター・シミュレーションの中にだけ存在するかと議論するが、Durham大学の科学者tらは、仮想宇宙の考えを現実に変えた。

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EAGLEシミュレーションによる銀河間ガスと銀河のスナップショット (写真:Virgoコンソーシアム)

星々、銀河、そして暗黒物質さえもが生まれるメカニズムをよりよく理解するために、オランダのLeiden大学の科学者らと共同して、Durhamの天文学者らは、2台のスーパーコンピューター、Durham大学のCosmology Machine (COSMA)とGENCIのCurieを使っている。

EAGLE (Evolution and Assembly of GaLaxies and their Environments) と呼ばれたシミュレーション・プロジェクトは、星団について、サイズが誤っており、形が丸すぎ、含まれる星々が古すぎた、過去のモデルの改良を目指す。

天文学者の望みは、EAGLEを、より強力な銀河風から別々に設定することである。その銀河風は、初期の星々からガスを吹き飛ばす働きをしたが、成熟した銀河では発見されていない。

「コンピューターによって生成された宇宙は本物そっくりです。」と、王立天文学会誌2015年1月号に掲載されるEAGLEに関する論文の共著者であるDurham大学Richard Bower 教授は述べている

「すべての成長段階、大きさ、色の銀河、私たちが世界最大の望遠鏡で見てきた銀河のすべてが、そこにあります。」

これらの結果によって、研究者は、138億年前に起こったビッグ・バンから宇宙がどのように生成されたか、よりよく理解できるようになったはずである。

共著者である Liverpool John Moores大学Rob Crain博士によると、「これは、私たちの新しい時代の始まりです。私たちは、宇宙の条件を操作でき、140億年におよぶ宇宙の進化を研究できます。」

Bower氏は、「信じがたいことに、EAGLEの世界では、私たちが時間を逆方向に動かすボタンを押せます。」と付け加える。

しかし、EAGLEの有用性は、そこで終わらない。プロジェクトは、これから、暗黒物質(dark matter)の探索に光を当てられるかもしれない。

Durham大学計算宇宙論研究所責任者の Carlos Frank教授は言った。「私は過去30年間、よく眠れなかった。」

「暗黒物質は、銀河について私たちが知っているすべての鍵ですが、私たちはまだその正確な性質を知りません。」

暗黒物質は、宇宙に存在する物質の85%ほどを占めると推定されているが、光を放射も吸収もしないので、望遠鏡では見えず、ほかの見える物質への重力によって間接的にのみ観測できる。

物理学者は、「ハロー(halos)」と呼ばれる暗黒物質の塊が、宇宙のガスを捕まえて、銀河の形成に寄与するという理論を立てて、これらのハローがたくさん見つかるはずだと予想した。しかし、わずか数ダースだけのハローが天の川銀河を中心に観測されており、予想とは異なる。

数百万のハローが、極端な熱のために、冷却して星になることを妨げられたというシミュレーションによって、EAGLEは、これらの現象の理解を助ける。