世界のスーパーコンピュータとそれを動かす人々


6月 11, 2015

IBM、シリコンフォトニクスを高度化、量子コンピューティングへ

HPCwire Japan

Tiffany Trader

IBMのエンジニアは完全に統合された波長多重シリコンフォトニクスのチップを開発し、企業側は100 Gb/sの光トランシーバの製造を直ぐに行うことができるだろうと語っている。この高度化はクラウド・コンピューティングやビッグデータのアプリケーションが必要とする大量のデータを移動するためのより経済的な方法を提供することを確約するものだ。

これはシリコンフォトニクス技術にとって重要なマイルストーンである、とIBMは語っており、コンピュータチップ間で超高速に大量のデータを転送するのに、銅線での電気信号の代わりに光パルスを利用する方法を指している。

IBMの設計は、サブ100nm半導体技術を使って単一のシリコンチップ上の従来の電気回路と一緒に組み込まれる光学部品を可能にしている。企業はこの新トランシーバが、たった1秒間に6千3百万回のツイートもしくは6百万個の画像を行うことができるとしており、高精細デジタル映画を完全にダウンロードするのにたった2秒で可能だとしている。

このリリースはエンタープライズや消費者の領域にフォーカスしているが、集積シリコンフォトニクスはHPCがエクサスケールやその先に向かうにつれて直面する熱や電力の問題にも対処することができるのだ。

このIBMの技術は明らかにファブ・フリレンドリーでもある:

「IBMの新CMOS集積ナノフォトニクス技術はシリコンチップ製造工場での標準の製造プロセスを使用していますので、いつでも商業化できる技術なのです。」

実用的な量子コンピュータに向けて

このフォトニクスの進歩はビッグブルーからのもうひとつの回路ブレークスルーに続いており、量子コンピューティングという聖杯に向けた針を動かす。初めて、IBMの研究者はビットフリップと位相フリップの量子エラーを同時に検出し計測する能力を披露しており、この機能は「いかなる本当の量子コンピュータ」に重要であると彼らは言っている。彼らはまた新しい正方形量子ビット回路設計を公表しており、研究者らは「より大規模な次元に正常に拡大できる唯一の物理アーキテクチャ」であるとしている。

四分の一インチの正方形チップ上に4個の超伝導キュービットから構成される正方格子構造は、研究者が両方の種類の量子エラーを同時に検知できる技術革新だ。キュービットが線形アレイ配置で編成されている場合、この重要な機能は失われる。

「これまで研究者達はビットフリップもしくは位相フリップの量子エラーを検知できてはいましたが、2つが一緒ではありませんでした。この分野の以前の研究では、線形配置を使って、ビットフリップを観察してシステムの量子状態における不完全な情報を提供するだけで、量子コンピュータとしては不適切なものでした。」とIBMの量子コンピューティング・グループのマネージャであるJay Gambettaは語っている。「私達の4キュービットの結果は、線形配列とは対照的に正方格子状にキュービットを配列させることで、両方のタイプの量子エラーを検知することによって、このハードルを越えることができ、より大規模なシステムまでスケールすることができるのです。」

IBMは、動作する量子システムを達成するために、もっとキュービットを追加することで、この設計がスケールできる確信を表明している。

「量子コンピュータは最適化とシミュレーションの分野において、今日のコンピュータでは不可能な新たな能力を開くと確約されています。」と会社のプレスリリースで述べている。「もし、たった50量子ビット(キュービット)の量子コンピュータを構築できるなら、今日のTOP500のスパーコンピュータのどの組み合わせもかなわないでしょう。」

この研究は、一部IARPA(知能高等研究計画活動)から資金提供を受けており、4月29日号のNature Communications誌に掲載されている。