世界のスーパーコンピュータとそれを動かす人々


8月 19, 2013

フォード、オークリッジ国立研究所のHPCでで、車の流れと燃費効率を両立させることに成功

HPCwire Japan

Alex Woodie

フォードの最近の自動車を運転する人は皆、オークリッジ国立研究所(ORNL)と共同で実施したHPCの成果のおかげで、ガソリンにかけるお金を節約できるはずだ。車体の下の複雑な空気流れを把握するために、100万プロセッサ時間かけて計算したのである。

世界中の自動車メーカーが数千億円ものコストをかけて米国政府の要求する燃費に適合する方策を検討している。低回転抵抗のタイヤからハイブリッドエンジンまで、性能向上を得るためのどんな課題をも乗り越えてきた。

通常なかなか知られることのない検討領域の一つに、車のフロントグリルからエンジン室に入り込む空気の流れがある。この問題は燃費にも車全体の性能にも大きな影響を及ぼす。しかしながら、最大の冷却効率を得ながら、同時に流れ抵抗を最小にする方法を見つけ出すのは、とても難しい仕事と言える、というのも、エンジン室内の多くの部品の一つ一つが空気流れと密接に関わるからである。

"たった一つの部品のサイズや配置を少し変えるだけで、計算モデル全体に大きな影響を及ぼす。"とフォード・ヨーロッパで熱流体CAEの主任を務めるバークハード・フーペルツは、オークリッジ先進計算施設のウエブサイトで語っている。"もう少し効果を上げようと何かを変更することが、結果として冷却効率を下げたり、抵抗を増やしてしまうことがある。"

従来、自動車メーカーは、適切な設計に辿り着くためにトライ&エラーの方法で膨大な時間を費やしてきた。フォード社は、数年前に、設計プロセスを加速し、ラインナップ上の多くの車種に適用できる空力のプロトタイプモデルを構築することに決めた。ところが、このやり方では、最適な設計パラメータを見つけ出すまでに、数千回ものシミュレーションを必要とする。これが、フーペルツとシニアHPC技術スペシャリストで研究主任のアレックス・アッカーマンによって率いられたチームが、ORNLとJaguarスーパーコンピュータで直面した課題だった。

ORNL の記事によれば、最初にすべきことは、Underhood 3D (UH3D)と呼ばれる流体力学プログラムをJaguarに載せることだった。UH3DをJaguar(後にはTitanに移行されたのだが)の上で走らせるためのチューニングを施した後、フォードチームは、4種の走行状態のもとで、11個の形状パラメータと(冷却ファンの速度などの)非形状パラメータをテストするために、1600回の計算を実施し、ほぼ百万プロセッサ時間を費やした。

Jaguarで行われた計算のおかげで、フォードは、冷却性能を最大化することと、抵抗を最小化することとの間でどちらをも満足する設計案を見つけることができた。"Jaguarを活用することで、要求された設計変数と運転条件でのエンジンルーム内解析を実施し、真の意味での最適な答えを見付け出す新たな方法論を初めて開発することができた。"と、アッカーマンはORNLに語っている。

これらの結果は、フォードがこの数年、車を路上で走らせてきたことの証明である。フォードは、いくつかの車種の燃費マイル数を誇張していたという非難を浴びていながらも、 -特にC-MAX Hybridについては、今月表示マイル数を下げることになった- 幅広いラインナップで著しい燃費の向上を図ってきた。少なくとも、それらの一部はJaguarの上でなし遂げられた成果である。