世界のスーパーコンピュータとそれを動かす人々


11月 7, 2013

中国のエクサスケールへの野望

HPCwire Japan

Nicole Hemsoth

「眠っているドラゴンにご用心。彼女は、目覚めたとき、地球は震えるだろう。」

~ Winston Churchill、中国について語る ~

20年間にわたり、TOP500.orgは世界最速の計算機のリストを半年ごとに公開している。 最初の17年間、No.1の座を巡る競争は、米国と日本の間で行き来していた。 しかし、2010年11月に、中国が天河-1Aスーパーコンピュータで切望されたポールポジションへ食い込んだ。

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天の川と訳される天河-1は、中国湖南省長沙にある国立防衛技術大学(NUDT)によって開発された。 それが2009年10月に発表されたとき、すぐにSC09で発表されたTOP500リストで世界最速のスーパーコンピュータとして第5位にランクされた。 アップグレードされた天河-1、14336個のXeonと7168台NVIDIA Tesla GPUを搭載し、LINPACKの最大計算速度で563Teraflopsから2.56Petaflopsに至らしめた。ロケットブースター化されたシステムは、テネシー大学のJaguarスーパーコンピュータを打ち負かして2010年11月にNo.1の座に就き、中国に技術大国として自慢する権利を与えた。それは、6年間、米国以外のシステムがNo.1の座を維持することは初めてのことだった。

米国は、16.32PetaflopsのLINPACK性能を持ってIBMのSequoia Blue Gene/Qが2012年6月に再びNo.1の座に返り咲いた。2012年11月にタイトルが再び手を変え、Titanと改名し、17.59PetaflopsのLINPACK性能を持つアップグレードしたJaguarが勝ち取った。堂々たるベンチマークにもかかわらず、Titanの君臨は短命だった。7ヶ月後の2013年6月、中国はそのアップグレードされたシステム、天河-2でリストの支配を再び確立した。驚くべき33.86PetaflopsのLINPACK性能で中国のシステムは、2位につけるTitanをほぼ2対1の大差で打ち負かした。

中国の天河-2は、現在、世界最速のスーパーコンピュータのままだ。 さらに、天河-2プロジェクトの予定は2年先行している。 スーパーコンピュータは、当初の計画では2015年に完了する予定だったが、最新の報告書はそれが2013年末までに完全に動作することが期待されていると言う。

この並外れた計算機で検討されている技術仕様は、16,000台の計算ノード、それぞれ2基のIntel Ivy Bridge Xeonプロセッサと3台のXeon Phiコプロセッサで構成され合計310万コアを有し、1.4ペタバイトの主記憶、およびTH Express-2と呼ばれるNUDT設計の独自の高速インターコネクトで構成される。 天河-2は、冷却のために割り当てられた追加の24メガワットを加え、17.6メガワットの最大電力消費となる。

最近のGuardian誌の記事で、中国の依然新興状況にあるスーパーコンピューティングの能力が国の吸収状態について教えてくれるのか探っている。 米国は依然としてTop 500システム中252システムと世界有数のスーパーコンピュータ能力があるが、中国がTop500中66台と追いつい来ている。 電気電子技術者協会(IEEE)は、「天河-2の勝利は、スーパーコンピューティングの性能競争への中国の断固とした姿勢を象徴しています。」と強調する。

最初のエクサスケール・スーパーコンピュータを構築するレースはまだ進行中であり、米国、EU、日本、インド、ロシア、中国はすべてこの目標を達成するために彼らの意思を表明している。 しかし、Guardianの短信によると、ほとんどの専門家は、賭けは中国を支持していると言う。 それは、Obama大統領が2011年の一般教書演説の中でアメリカ人に「私たち世代のスプートニクの瞬間」のために一緒に来るように呼びかけてから2年経つが、資金提供機関からの返答は冴えないものである。 エクサスケール計画は、ごく最近になって議会に提出されたが、新たな基金がまだ付与されていない。

対照的に中国は、2012年にR&Dに約1630億米ドルを費やして、ターゲットを絞った投資戦略を維持している。 2008年以来、他の国の予算が低迷していた同時期に、毎年18%の資金を増加している。

中国が主導するシステムを勝ち取ることができたとしても、それはそのために米国の技術に頼らなければならなかった。 このGuardianの記事の重要なポイントは、サセックス大学の科学と民主社会の教授、James Wilsdon、英国の独立系慈善団体Nestaの国際改革のヘッド、Kirsten Bound、とNestaの政策研究アナリスト、Tom Saundersによって書かれた。

「ある意味、天河-2は、中国人と同様にアメリカ人としての全ての部分で誇りとすべき成果でしょう。」と著者は書いている。しかし、中国は、独自技術の設計および製造でハードワークをこなし、ほとんどの専門家は、中国が初の100パーセントの自家製スパコンを製造するにはそれほど長くはかからないだろうと口を揃える。

中国は、外国の発達した技術に対して吸収、適応し、改善することに特に順応している。 スーパーコンピューティングは、この種の吸収プロセスが行われている場の主な分野のひとつであるが、例えば、高速鉄道網、先進的な原子炉や宇宙探査等の他の注目を集める事例でも起きていた。

筆者は「これらの例は、中国の指導者、習近平が言った「中国独自の技術革新」は、輸入されてから自国製の革新へ真っ直ぐな道筋になる事はないだろうことを示唆しています。しかし、中国と非中国の考えと技術や能力の間の線を引くのが困難な不明瞭なプロセスもあります。」と指摘する。

Nestaの報告「中国の吸収型状態:研究、技術革新と中国-UKの協力の見通し」は 、1年以上北京に派遣された初の高レベルな英国政府代表団と一致するような予定で来週、公開されるだろう。