2020年11月TOP500 日本の現状 シェア首位は富士通
先月 新しいTOP500が発表され、わが富岳が2期連続首位を達成しホッと一息ついたところで、ゆっくりと日本のスパコン実情を見てみることにしよう。2020年6月のリストでは29台の日本のシステムが掲載されたが、今回11月のリストでは5システム増えて34システム(全体の6.8%)となって台数エントリ的には中国、アメリカに次いで3位だ。中国は相変わらず大量のシステムを載せており、前回226システムから若干減って214システム(全体の42.8%)、アメリカは前回も今回も113システム(全体の22.6%)であった。
システムシェア | 性能シェア |
ところがエントリしているシステムの合計性能で見ると日本は全体の24.4%とアメリカの27.5%に次いで2位だ。中国はエントリ台数はアメリカの2倍あるのに、全体性能で見ると劣っている。これは1システム毎の性能が低いことを示している。
さて、日本の34台のシステムは次のとおりである。
今回 |
前回 |
機関名 |
システム名 |
Rmax |
Rpeak |
ベンダー |
1 |
1 |
理化学研究所 |
富岳 (A64FX) |
442,010 (415,530) |
537,212 (513,854) |
富士通 |
14 |
12 |
産業技術総合研究所 |
ABCI (Xeon) |
19,880 |
32,576 |
富士通 |
19 |
NEW |
宇宙航空研究開発機構 |
TOKI-SORA (A64FX) |
16,592 |
19,464 |
富士通 |
22 |
18 |
最先端共同HPC基盤施設 |
Oakforest-PACS (Xeon Phi) |
13,554 |
24,913 |
富士通
|
31 |
27 |
東京工業大学 |
TSUBAME 3.0 (Xeon) |
8,125 |
12,127 |
HPE SGI |
33 |
NEW |
核融合科学研究所 |
Plasma Simulator (SX-Aurora) |
7,892 |
10,510 |
日本電気 |
41 |
36 |
名古屋大学 |
不老 (A64FX) |
6,617 |
7,785 |
富士通 |
45 |
NEW |
日本原子力研究開発機構 |
HPE SGI 8600 (Xeon) |
6,162 |
8,439 |
HPE SGI |
49 |
41 |
気象庁 |
Cray XC50 (Xeon) |
5,730 |
9,125 |
HPE Cray |
50 |
42 |
気象庁 |
Cray XC50 (Xeon) |
5,730 |
9,125 |
HPE Cray |
58 |
NEW |
名古屋大学 |
不老 Type IIサブシステム (Xeon) |
4,880 |
7,519 |
富士通 |
63 |
53 |
九州大学 |
ITO サブシステムA (Xeon) |
4,540 |
6,912 |
富士通 |
68 |
59 |
東京大学 |
Oakbridge-CX (Xeon) |
4,289 |
6,618 |
富士通 |
70 |
60 |
匿名研究機関 |
Apollo 6500 (Xeon) |
4,128 |
5,783 |
HPE |
78 |
67 |
さくらインターネット |
Apollo 6500 (Xeon) |
3,712 |
5,365 |
HPE |
87 |
New |
東京大学物性研究所 |
Ohtaka (AMD) |
3,486 |
5,120 |
DELL |
99 |
83 |
宇宙航空研究開発機構 |
SORA-MA (SPARC) |
3,157 |
3,481 |
富士通 |
105 |
87 |
物質・材料研究機構 |
数値材料シミュレータ (Xeon) |
3,082 |
4,971 |
HPE SGI |
107 |
89 |
京都大学 |
Camphor 2 (Xeon Phi) |
3,057 |
5,483 |
HPE Cray |
119 |
101 |
量子科学研究開発機構 |
JFRS-1 (Xeon) |
2,787 |
4,190 |
HPE Cray |
214 |
181 |
国立天文台 |
ATERUI II (Xeon) |
2,090 |
3,072 |
HPE Cray |
238 |
203 |
北海道大学 |
Grand Chariot (Xeon) |
2,000 |
3,053 |
富士通 |
239 |
204 |
富士通 |
A64FXプロトタイプ (A64FX) |
1,999 |
2,359 |
富士通 |
257 |
222 |
日本原子力研究開発機構 |
HPE SGI ICE X (Xeon) |
1,929 |
2,409 |
HPE SGI |
272 |
New |
日本原子力研究開発機構 |
HPE SGI 8600 (Xeon) |
1,870 |
2,801 |
HPE SGI |
298 |
261 |
分子科学研究所 |
分子シミュレータ (Xeon) |
1,785 |
3,072 |
日本電気 |
313 |
278 |
気象研究所 |
PRIMERGY CX2550 (Xeon) |
1,715 |
2,816 |
富士通 |
318 |
283 |
東北大学流体科学研究所 |
AFI-NITY (Xeon) |
1,691 |
2,703 |
富士通 |
330 |
392 |
プリファードネットワークス |
MN-3 (MN Core) |
1,652 (1,621) |
3,137 (3,922) |
PFN |
413 |
377 |
匿名 |
J2 (Xeon) |
1,649 |
2,119 |
Lenovo |
433 |
397 |
理化学研究所 |
HOKUSAI BigWaterfall (Xeon) |
1,601 |
2,580 |
富士通 |
437 |
401 |
筑波大学 |
Cygnus (Xeon) |
1,582 |
2,399 |
日本電気 |
481 |
444 |
NTTコミュニケーションズ |
MN-1 (Xeon) |
1,391 |
4,917 |
Supermicro |
496 |
459 |
電力中央研究所 |
HPE SGI 8600 (Xeon) |
1,326 |
2,027 |
HPE SGI |
富岳はコア数を増やしてベンチマークを新たに実施
富岳は2期続けて首位を取ったが、黙って居たわけではない。前回からコア数を増やして性能を向上させている。前回のコア数は7,299,072コアだったのに対し、今回7,630,848コアで新たにベンチマークを行った。興味深いのは理論性能は24ペタフロップスしか増大していないのに、実行性能が27ペタフロップスも向上していることだ。研究者もしくはベンダー富士通の努力の結果なのだろうか?でも良く頑張った。
JAXAの新スパコン TOKI-SORAが登場
JAXA、宇宙研究開発機構が新たに導入したスーパーコンピュータTOKI-SORAが19位に登場した。こちらも富岳と同じ富士通のArm A64FXを搭載したFX-1000システムだ。理論最大性能は19.4ペタフロップスで、国内スパコンとしては産総研のABCIに次いで3位となった。これで国内トップ4位までのスパコンは富士通製となった。
核融合科学研究所 「雷神」 | |
物性研究所 「Ohtaka」 | |
大規模SX-Auroraが初登場
日本電気SX-Aurora TSUBASAの大規模な展開の初システムとなる融合科学研究所のプラズマシミュレータ「雷神」が33位に入った。理論性能は10.5ペタフロップスとなっている。最近発表された東北大学の新スパコン「AOBA」が1.8ペタフロップスなので、このプラズマシミュレータの巨大さが分かると思う。
TOP500入りした初の国内DELLスパコン
今回87位に入った東京大学物性研究所のOhtakaはDELシステムだ。物性研究所は先代のシステムがSGIのシステムであったのがひっくり返されたことになる。もちろんSGIも昔からのユーザであった訳ではない。物性研究所は古くから多様な計算機を導入してきている。富士通VPP500、日立SR8000、SR11000、SGI Altix、NEC SX-9、富士通FX10など、研究の目的に合わせてベンダーに拘ることがない。そこで今回はDELLシステムとなったようだ。DELLシステムは民間では実績があるが、アカデミアのスパコンとしては前例があまり無かった。今回の物性研究所への導入を契機に今後のDELLの展開が注目されそうだ。
この他にも新しく3システムがリストに入った。45位 日本原子力研究開発機構 HPE SGI 8600、58位 名古屋大学 不老 Type II サブシステム、272位 日本原子力研究開発機構 HPE SGI 8600。
今回リストから落ちたのは前回468位だったPEZY ComputingのNA-1であった。
国内をベンダー別でみると次のようになる。
国内TOP500 ベンダーシェア |
富士通のシステムは14システムでシェア41%、HPEは旧SGIシステムが6システム、旧Crayシステムが5システム、元々のHPシステムが2システムでHPE合計13システムとなり、シェアは38%、NECは3システムで9%のシェアであった。
さて来年2021年6月ではどう変わるだろうか?アメリカのAuroraやFrontierの登場時期がいつになるかで、「富岳」の首位がいつまで続くかが決まりそうだ。また、中国というダークホースもいる。本来であれば2020年にはプリ・エクサスケールのシステムが登場してくる予定だったが、どうも遅れているようだ。