世界のスーパーコンピュータとそれを動かす人々


12月 21, 2020

2020年11月TOP500 日本の現状 シェア首位は富士通

HPCwire Japan

先月 新しいTOP500が発表され、わが富岳が2期連続首位を達成しホッと一息ついたところで、ゆっくりと日本のスパコン実情を見てみることにしよう。2020年6月のリストでは29台の日本のシステムが掲載されたが、今回11月のリストでは5システム増えて34システム(全体の6.8%)となって台数エントリ的には中国、アメリカに次いで3位だ。中国は相変わらず大量のシステムを載せており、前回226システムから若干減って214システム(全体の42.8%)、アメリカは前回も今回も113システム(全体の22.6%)であった。

システムシェア 性能シェア
   

ところがエントリしているシステムの合計性能で見ると日本は全体の24.4%とアメリカの27.5%に次いで2位だ。中国はエントリ台数はアメリカの2倍あるのに、全体性能で見ると劣っている。これは1システム毎の性能が低いことを示している。

さて、日本の34台のシステムは次のとおりである。

今回

前回

機関名

システム名

Rmax

Rpeak

ベンダー

1

1

理化学研究所

富岳

(A64FX)

442,010

(415,530)

537,212

(513,854)

富士通

14

12

産業技術総合研究所

ABCI

(Xeon)

19,880

32,576

富士通

19

NEW

宇宙航空研究開発機構

TOKI-SORA

(A64FX)

16,592

19,464

富士通

22

18

最先端共同HPC基盤施設

Oakforest-PACS

(Xeon Phi)

13,554

24,913

富士通

 

31

27

東京工業大学

TSUBAME 3.0

(Xeon)

8,125

12,127

HPE SGI

33

NEW

核融合科学研究所

Plasma Simulator

(SX-Aurora)

7,892

10,510

日本電気

41

36

名古屋大学

不老

(A64FX)

6,617

7,785

富士通

45

NEW

日本原子力研究開発機構

HPE SGI 8600

(Xeon)

6,162

8,439

HPE SGI

49

41

気象庁

Cray XC50

(Xeon)

5,730

9,125

HPE Cray

50

42

気象庁

Cray XC50

(Xeon)

5,730

9,125

HPE Cray

58

NEW

名古屋大学

不老 Type IIサブシステム

(Xeon)

4,880

7,519

富士通

63

53

九州大学

ITO サブシステムA

(Xeon)

4,540

6,912

富士通

68

59

東京大学

Oakbridge-CX

(Xeon)

4,289

6,618

富士通

70

60

匿名研究機関

Apollo 6500

(Xeon)

4,128

5,783

HPE

78

67

さくらインターネット

Apollo 6500

(Xeon)

3,712

5,365

HPE

87

New

東京大学物性研究所

Ohtaka

(AMD)

3,486

5,120

DELL

99

83

宇宙航空研究開発機構

SORA-MA

(SPARC)

3,157

3,481

富士通

105

87

物質・材料研究機構

数値材料シミュレータ

(Xeon)

3,082

4,971

HPE SGI

107

89

京都大学

Camphor 2

(Xeon Phi)

3,057

5,483

HPE Cray

119

101

量子科学研究開発機構

JFRS-1

(Xeon)

2,787

4,190

HPE Cray

214

181

国立天文台

ATERUI II

(Xeon)

2,090

3,072

HPE Cray

238

203

北海道大学

Grand Chariot

(Xeon)

2,000

3,053

富士通

239

204

富士通

A64FXプロトタイプ

(A64FX)

1,999

2,359

富士通

257

222

日本原子力研究開発機構

HPE SGI ICE X

(Xeon)

1,929

2,409

HPE SGI

272

New

日本原子力研究開発機構

HPE SGI 8600

(Xeon)

1,870

2,801

HPE SGI

298

261

分子科学研究所

分子シミュレータ

(Xeon)

1,785

3,072

日本電気

313

278

気象研究所

PRIMERGY CX2550

(Xeon)

1,715

2,816

富士通

318

283

東北大学流体科学研究所

AFI-NITY

(Xeon)

1,691

2,703

富士通

330

392

プリファードネットワークス

MN-3

(MN Core)

1,652

(1,621)

3,137

(3,922)

PFN

413

377

匿名

J2

(Xeon)

1,649

2,119

Lenovo

433

397

理化学研究所

HOKUSAI BigWaterfall

(Xeon)

1,601

2,580

富士通

437

401

筑波大学

Cygnus

(Xeon)

1,582

2,399

日本電気

481

444

NTTコミュニケーションズ

MN-1

(Xeon)

1,391

4,917

Supermicro

496

459

電力中央研究所

HPE SGI 8600

(Xeon)

1,326

2,027

HPE SGI

 

富岳はコア数を増やしてベンチマークを新たに実施

富岳は2期続けて首位を取ったが、黙って居たわけではない。前回からコア数を増やして性能を向上させている。前回のコア数は7,299,072コアだったのに対し、今回7,630,848コアで新たにベンチマークを行った。興味深いのは理論性能は24ペタフロップスしか増大していないのに、実行性能が27ペタフロップスも向上していることだ。研究者もしくはベンダー富士通の努力の結果なのだろうか?でも良く頑張った。

JAXAの新スパコン TOKI-SORAが登場

JAXA、宇宙研究開発機構が新たに導入したスーパーコンピュータTOKI-SORAが19位に登場した。こちらも富岳と同じ富士通のArm A64FXを搭載したFX-1000システムだ。理論最大性能は19.4ペタフロップスで、国内スパコンとしては産総研のABCIに次いで3位となった。これで国内トップ4位までのスパコンは富士通製となった。

 
  核融合科学研究所 「雷神」
 
  物性研究所 「Ohtaka」
   

大規模SX-Auroraが初登場

日本電気SX-Aurora TSUBASAの大規模な展開の初システムとなる融合科学研究所のプラズマシミュレータ「雷神」が33位に入った。理論性能は10.5ペタフロップスとなっている。最近発表された東北大学の新スパコン「AOBA」が1.8ペタフロップスなので、このプラズマシミュレータの巨大さが分かると思う。

TOP500入りした初の国内DELLスパコン

今回87位に入った東京大学物性研究所のOhtakaはDELシステムだ。物性研究所は先代のシステムがSGIのシステムであったのがひっくり返されたことになる。もちろんSGIも昔からのユーザであった訳ではない。物性研究所は古くから多様な計算機を導入してきている。富士通VPP500、日立SR8000、SR11000、SGI Altix、NEC SX-9、富士通FX10など、研究の目的に合わせてベンダーに拘ることがない。そこで今回はDELLシステムとなったようだ。DELLシステムは民間では実績があるが、アカデミアのスパコンとしては前例があまり無かった。今回の物性研究所への導入を契機に今後のDELLの展開が注目されそうだ。

この他にも新しく3システムがリストに入った。45位 日本原子力研究開発機構 HPE SGI 8600、58位 名古屋大学 不老 Type II サブシステム、272位 日本原子力研究開発機構 HPE SGI 8600。

今回リストから落ちたのは前回468位だったPEZY ComputingのNA-1であった。

国内をベンダー別でみると次のようになる。

国内TOP500 ベンダーシェア

富士通のシステムは14システムでシェア41%、HPEは旧SGIシステムが6システム、旧Crayシステムが5システム、元々のHPシステムが2システムでHPE合計13システムとなり、シェアは38%、NECは3システムで9%のシェアであった。

さて来年2021年6月ではどう変わるだろうか?アメリカのAuroraやFrontierの登場時期がいつになるかで、「富岳」の首位がいつまで続くかが決まりそうだ。また、中国というダークホースもいる。本来であれば2020年にはプリ・エクサスケールのシステムが登場してくる予定だったが、どうも遅れているようだ。