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4月 13, 2016

宇宙天気予報がハードルを越える

HPCwire Japan

Tiffany Trader

宇宙天気予報は夕方のニュースに専用の枠を持っていないかもしれないが、地球の大気上に迫り来る破壊力は過小評価することはできない。特に宇宙天気の一形態であるコロナ質量放出(CME)は衛星や電力網を国家的さらには国際的なスケールで停止させる可能性を秘めている。

コロナ質量放出は太陽のコロナの内側からプラズマの噴出が太陽風中に放出された時に発生する。これらの風が地球の磁気圏に達する場合には、磁気嵐が無線通信を妨害し、電気システムを損傷することとなる可能性がある。人間と動物の生命もまた強烈な宇宙線によって悪影響を受けることとなる。このような事象を予測することは、正確な宇宙天気予報の開発に向けての重要なステップである。

過去20年間で最大規模で最も厄介なCME事象のひとつは2003年の10月末に発生した。複数のCMEが磁気衝撃波を地球に向かって突進させ、通信システムに大混乱を起こしたのだ。これまでのところ、これらの事象は追跡することが可能だが、計算の重さとデータ要求のために、先導するような防御を可能にする予測機能はまだ出現していない。この目標に向かって進んでいる名古屋大学の研究チームは、CME発生の背後にある実際のメカニズムのモデルとこの現象が宇宙空間を移動する方法をベースとしたCME事象ための新しいシミュレーションコードを開発した。この手法は2003年の観測データを使って正常に検証されたのだ。

Space Weatherの2016年2月号では、彼らの新しく開発された太陽風の磁気流体力学(MHD)シミュレーションが、CME内における磁気雲の移動との関係において、いかに地球における南向きの惑星間磁場の時間プロファイルの予測ができたかをこのチームは説明している。「我々は地球における太陽風パラメータの観測された複雑な時間プロファイルが、いくつかの特定のCMEの相互作用によって合理的に理解することができることを見つけました。」と彼らは断言している。

主著者である名古屋大学宇宙地球環境研究所の塩田 大幸氏はさらに次のように説明している:

「我々のモデルではリアルタイムな太陽観測から得られたCMEの発生メカニズムを考慮したうえで、複雑な‘フラックスロープ’をシミュレートすることができました。このモデルでは宇宙空間を伝搬する複数のCMEをシミュレートすることができます。南方向に向かうCME内の最初のフラックスロープの磁気フラックスの一部が地球に到達することを発見し、それが磁気嵐を引き起こす可能性があります。フラックスロープのメカニズムを包含することで、地球の位置に到達するCME内の磁場の振幅を予測し、到着時刻を正確に予測するのに役立つのです。」

予測するのに必要な速度を達成することは、パラメータのプロフィルをスリム化することを意味している。

「我々のモデルでは太陽コロナの範囲をシミュレートしていないので、リアルタイムの予測条件において、その計算速度は十分に高速に動作することができます。」と塩田氏は観ている。「これは、アンサンブル宇宙天気予報、放射線帯予報、およびより大規模な太陽系の磁気構造におけるCMEが生成する太陽風の影響をさらに研究するための様々なアプリケーションを持っているのです。」