SGIとANSYS、商用CAEコードのスケーリングで新記録
Doug Black

HPEに最近買収されたスーパーコンピュータ・ベンダーであるSGIは、プロダクト・エンジニアリングとシミュレーション・ソフトウェア企業であるANSYSとチームを組んで、商用CAEコードのスケーリングにおける新しい世界記録を試みている。SGIによると、両社は昨年、ANSYS Fluent燃焼モデル・ソフトウェアを145,000個の CPUコア上で実行させ、過去の記録の16,000を超える記録を達成している。
確かにSGIにとっては良い週となった。SGIのゼネラルマネージャーでハイパフォーマンス・コンピューティングの副社長であるGabriel Bronerによる個別のプログにおいて、北陸先端科学技術大学院大学JAISTとの共同で2つの新記録を達成することを同社は報告している。「我々はSGI UV 3000システムでSPECint_rate_base2006で50,200、SPECfp_rate_base2006で51,500の世界新記録を達成しました。」とBronerは書いている。
SGIの仮想製品開発製造ソリューションのディレクターであるTony DeVarcoのプログ投稿において、ANSYSの発表が取り上げられている。シミュレーションコードのエクストリームなスケーリングはHPCクラスのシステムを使った製造メーカーにとって、モデリング・ソフトウェアの性能を最大限に引き出すために非常に重要な問題である。
「SGIはANSYS提供の8.3億セルのガス燃焼モデルを1,296から145,152 CPUコアまで実行することができたのです。」とDeVarcoは述べている。「これはひとつのシミュレーションを実行するソルバーの合計経過時間を1,296コア時の20分から145,152コア時のたった13秒まで短縮しており、全体のスケーリング効率で83パーセントを達成したのです。」
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これは両社が共同で行っている一連のCFDベンチマーク・プロジェクトにおける最新のものである。DeVarcoによると、最初は1年以上前に遡り、SGI UVのインメモリ・コンピューティング・プラットフォームとANSYS HFSSソフトウェアが、Cosite解析やレーダー断面積解析のような大規模、高周波電磁気問題を解くことができることを示した時だ。「そればかりだけでなく、計算機システムのメモリを食いつぶすこと無くマルチ周波数解析を実行できるようになったのです。」
11月にANSYSは、低周波電磁気問題に関わる全ての工程を同時に解決することができるマクスウェルの時間分割法に取り組むためにSGIに接触してきていた。
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今年始めにリリースしたANSYS 17.0において、ANSYSのメカニカル・パッケージが1,000コアまでスケールする能力を持ったことでSGIの関心を引いた、とDeVarcoは述べている。「構造力学の顧客と緊密に連携している我々のアプリケーション・エンジニアがV17 sp-5モデルを用いて1,008コアまでスケールしたのです。」とDeVarcoは述べた。
8月に、ANSYSとSGIのアプリケーション・エンジニアが世界初の商用分散メモリ・スーパーコンピュータのひとつであるSGI ICE XAシステム上でANSYS Fluentをスケールする世界記録を達成することで協力した。このベンチマークは、SGIのマニュファクチュアリング・チームが新システムを米国大気研究センター向けに構築する際に行われたとDeVarcoは述べている。このシステム(「シャイアン」と名付けられた)が試験を通過する際に、SGIのエンジニアがフルシステム上で商用コードを実行するベンチマークを行うことを望んでいた。「ANSYS Fluentはびったりだったのです。」と彼は述べた。
このFluentベンチマークは、他のMPI実装用に記述された技術アプリケーションを再コンパイル無しに実行時にSGI Message Passage Toolkit(MPI)を活用できるように設計されているSGI MPI PerfBoostを使って達成された。
SGIのもうひとつのハイライトであるSPECrate記録は、多くの同時タスクを処理するためのマシンのスループットもしくは能力を計測するものだ。「これらは実世界のアプリケーション。コードに基づいており、大規模、マルチプロセッサ・システム向けのワークロードを表すものとして高く評価されているいるものです。」とBronerは書いている。
SPECrate FP Metric – 浮動小数点アプリケーションのスループット
SPECrate Integer Metric – 整数アプリケーションのスループット
JAISTは日本における最初の独立した国立大学院大学として、先端科学技術における最高位レベルの研究に基づいた大学院教育を行うために1990年10月に創立された。JAISTのSGI UV 3000は256台のIntel Xeon E5-4655 v3プロセッサ(1536コア)と32テラバイトのメモリを搭載した単一の共有メモリシステムである。JAISTのSGI UV 3000ハイパフォーマンス・システムは大規模シミュレーション、機械学習、および高速アルゴリズム研究など様々な分野の研究者と開発者をサポートしている。
この記事はHPCwireの姉妹誌であるEnterpriseTechで最初に掲載された。