世界のスーパーコンピュータとそれを動かす人々


3月 21, 2017

エクサスケールを目指す新たな日本のスパコン・プロジェクト

HPCwire Japan

Tiffany Trader

日本のスーパーコンピュータは、AIとの相乗効果もあり順調である。わずか数週間で、HPEと富士通が日本の研究機関(東京工業大学と理研)にPascal GPUベースの深層学習スーパーコンピュータを提供する事が発表された。

日本はエクサスケール・コンピューティングのレースでもトップランナーのひとつだ。国家プロジェクトとして2022年までに最初のエクサスケール・コンピュータ、『ポスト京』を開発予定だ。それは、先日まで日本最高速機であった『京コンピュータ』の後継機種であり、100倍も高速になるだろう。

日本のニュースが、もう一つのスーパーコンピューティングプロジェクトが始動している事を明らかにした。それは新興スーパーコンピュータメーカーである株式会社ExaScalerと慶応大学によるものである。ExaScalerのCEOである斉藤元章博士の指導のもと、エキサスケールのひらめきを持ったオリジナルのスーパーコンピューターデザインを開発しようとしている。

斎藤博士は、究極のスーパーコンピューティングの重要な側面を対象とする3つのHPC企業の創設者である。

1.マルチコアプロセッサを開発している株式会社PEZY Computing

2. 高効率液体冷却に注力している株式会社ExaScaler

3. 3D多層メモリシステムを開発(特許情報参照)しているウルトラメモリ株式会社

PEZYとExaScalerは、世界で最もエネルギー効率の高いスーパーコンピュータの1つ、「菖蒲」を開発した。「菖蒲」は、Green500の1位を3回連続して取得(2015年6月、2015年11月、2016年6月:発表は1年に2度)した。 最新のリストでは「菖蒲」は6.67ギガフロップス/ワットの評価で、3位になっている(2つのPascal GPU搭載マシンが上位にいる)。 「菖蒲」は理研に設置され、ZettaScaler-1.6アーキテクチャに基づいている。 ZettaScaler-2.0は2017年に完成予定である。

3社(PEZY、Exascaler、ウルトラメモリ)は共同して、スーパーコンピュータシステムを開発している。新しいスーパーコンピュータには、慶応義塾大学黒田忠広教授が開発した大容量、低消費電力の3D集積回路(IC)が搭載される。 ExaScalerは液体フッ化炭素冷却技術を供給する。

日本のニュースによると、このアプローチは、スーパーコンピュータを縦横1mまでに小型化することを可能にする。さらに、日本の海洋研究開発機構横浜研究所に設置するために、18個のボックスを接続して、24ペタフロップスのシステム(精度レベルは確認中)を作成する予定である。

日本のニュースによると、「この企業学術プロジェクトチームは、6月までに日本で最速の計算速度を達成することを目指している。それは、世界で第3位になるはずだ。」としている。

このチームの最終目標は、世界で最速のスーパーコンピュータを作ることである。これは、中国の93ペタフロップのSunway TaihuLightを上回り、数多くのエクセスケールにフォーカスしたプロジェクトを凌駕するものになるかもしれないが、その目標を達成するためにはさらに資金が必要である。

このプロジェクトは国立研究開発法人である科学技術振興機構(JST)が支援している。正確な資金提供レベルは不明だが、これまで有望な技術については最大50億円を提供している。これまでのところ、日本政府は(文部科学省のフラッグシップ2020プロジェクトとして)ポスト京プロジェクトに1,100億円を支出する予定だ。

理研計算科学研究機構の牧野淳一郎氏は、「この先いくつかの課題があるかもしれないが、ExaScaler / 慶応大学のシステムは消費電力と価格の両面で優れた技術に育つ可能性があります。それらは次世代のスーパーコンピュータに革命的な影響を与える可能性があります。」と語った。

日本はTOP500設立の頃からスーパーコンピューティング・パワーの一員であり、当初はTOP500の首位をめぐってツバぜり合いを行っていた。富士通やNECのようなスーパーコンピューティングの大手は日本企業だ。現在国内2位となった京コンピュータは2011年にTOP500リストにトップで初登場した。現在それは第7位で、Linpackで10.5ペタフロップの性能を誇っている。