世界のスーパーコンピュータとそれを動かす人々


7月 5, 2017

2017年6月TOP500 国内スパコン状況 SGI/HPEが好調、11月には大幅な入れ替えが予想される

HPCwire Japan

ISCで今年1回目のTOP500が発表された。日本は前回の27エントリから33エントリと6システム増加した。内訳は4システムが圏外となり、新たに10システムが加わっている。今回リストから消えたのは筑波大学のHA-PACS、自動車会社のHP Apollo、京都大学のCamellia、統数研のシステム「i」である。

順位 機関名 システム名 今回順位 前回順位 Rmax
1 最先端共同HPC施設基盤 Oakforest-PACS 7 6 13,555
2 理化学研究所 京コンピュータ 8 7 10,510
3 JAXA SORA-MA (FX100) 34 30 3,157
4 京都大学 Comphor 2 (Cray XC40) 37 33 3,057
5 名古屋大学情報基盤センター FX100 39 35 2,910
6 東京工業大学 TSUBAME2.5 44 40 2,785
7 核融合科学研究所 プラズマシミュレータ 55 48 2,376
8 東京工業大学 TSUBAME 3.0 61 新規 1,998
9 日本原子力研究開発機構 SGI ICE X 62 54 1,929
10 海洋研 Gyoukou(暁光) 69 新規 1,677
11 IFERC Helios 94 82 1,237
12 東京大学物性研究所 Sekirei 102 86 1,178
13 東京大学情報基盤センター Oakleaf-FX 123 104 1,043
14 九州大学情報基盤研究開発センター QUARTETTO 128 108 1,018
15 理化学研究所情報基盤センター 菖蒲 137 116 1,001
16 理化学研究所情報基盤センター HOKUSAI-GW 141 119 989
17 気象研究所 FX100 142 120 989
18 産総研 AIST AIクラウド 148 新規 961
19 サービス企業 クラスタ 179 新規 853
20 京都大学 Laurel 2 193 新規 822
21 東京大学 ReedBush-H 203 新規 802
22 国立天文台 Aterui 204 157 801
23 東京大学物性研究所 Sekirei-ACC 216 163 777
24 環境研 GOSAT-2 220 新規 770
25 筑波大学計算科学研究センター COMA 240 177 746
26 物質材料研究機構 数値材料シミュレータ 244 179 742
27 理研 RAIDEN 306 新規 635
28 北陸先端大 Cray XC40 338 新規 585
29 電力中央研究所 SGI ICE X 339 253 582
30 高エネルギー加速器研究機構 SAKURA 375 281 537
31 高エネルギー加速器研究機構 HIMAWARI 376 282 537
32 Yahooジャパン Kukai 466 新規 461
33 東京大学 Reedbush-U 468 361 460

新たに加わったシステムの中には興味が惹かれるシステムがいくつかある。ひとつめは東京工業大学のTSUBAME 3.0だ。この夏にインストール予定であるが、SGIの工場でフルシステムではないが早々にベンチマークを取ってリストに加わった。このシステムはGreen500でも1位となっている。このシステムは夏以降にフル稼働するとピーク性能で12ペタフロップスとなり、TSUBAME 2.5を軽く抜くこととなる。

次に注目されるのは、現在インストールを行っている海洋研究開発機構のGyoukou(暁光)だ。これはエクサスケーラー社がインストールを行っており、今後も増設を続け年内には20から30ペタフロップスクラスの国内最大の国産スーパーコンピュータとなる予定だ。これは科学技術振興機構JSTの平成28年度産学共同実用化開発事業(NexTEP)未来創造ベンチャータイプ採択された課題だ。2016年度から2020年までの5年間で50億円の開発費が助成される。

もうひとつ注目されるのはYahooジャパンのエクサスケーラー社のシステムである。実行性能で461テラフロップスと比較的小規模なシステムだが、ニュースリリースでも述べられているように、このシステムは Yahooジャパンも音声認識のためのディープラーニングのために設置されているとのことだ。またエクサスケーラー社のシステムではあるが、搭載しているのはNVIDIAのP100だ。PEZY-SCではない。さらに、このシステムはGreen500で2位をとっている。

この他に新たにリストに加わったシステムとしては、18位産総研のAIクラウド、19位匿名企業、20位京都大学のLaurel2、21位東京大学ReedBush-H、24位環境研GOSAT-2、27位理研のRAIDEN、28位北陸先端大のCrayが加わった。

33システムのベンダー別システム数では次のようになっている。

ベンダー システム数
HPE 11
(内9システムがSGI)
富士通 9
クレイ 5
エクサスケーラー 3
IBM 2
NEC 1
日立 1
ブル 1

これからも分かるように首位はHPEだが、これはSGIのおかげだ。SGIは富士通と同じ9システムを販売している。SGIは一昨年の日本原子力研究開発機構を富士通から奪い取った後も健闘しており、昨年と今年で東京大学、環境研、そして東京工業大学を獲得している。その半面富士通以外のメーカーは不調だ。NECは東京工業大学のTSUBAME 2.5のプライムではあるが、システムはHPEだ。ここで唯一エントリがあるのは産総研のAIクラウドである。また日立は2013年にインストールした九州大学のシステムがエントリしている。日立のスパコンとしての象徴であった気象庁のシステムはプライムこそ日立のままだがシステムはクレイとなって今年リリースされる予定だ。

次回11月のTOP500には、ピーク性能10ペタフロップス超のスパコンが複数登場する予定だ。20,30ペタフロップスの海洋研のGyoukou、東京工業大学のTSUBAME 3.0、そして10月に稼働する予定の九州大学の富士通製のスパコンだ。これらシステムの登場で日本のTOP5スパコンは入れ替えが発生するだろう。さらに、1年後には産総研のABCIスパコンが登場する。しばらく入れ替えが少なかった日本のスパコンも次の1年では大きく変化していく予定だ。