SC13: AMDは、何をChangeするのか?
本日、SC13の出展社フォーラムのプログラムの中でAMDのMichael Schulteによる「AMD’s Dense Computing Solution for HPC」と題する講演が行われ、AMDの今後のHPC戦略の紹介が行われた。

SchulteによるとAMDは今後基本的に演題にもあるようにAPU型のプロセッサアーキテクチャを軸に高密度サーバ技術を中心としてHPCへの展開を想定しており、そのための中核として来年以降に発表を予定している従来のx86アーキテクチャをベースとした「Berlin APU」、およびARM Cortexコアアーキテクチャをベースとした「Seattle CPU」の2つの異なるタイプのプロセッサによりHPC市場の広いニーズに応える。
Berlin APUは、従来のx86アーキテクチャの互換性を維持しつつ、次世代のGPUコアを統合した単一のプロセッサとして高密度サーバ用途を考慮した設計となっているようである。Berlinは、省電力性能にも優れ、HyperTransportに准じるファブリックインターコネクトを用意し、数万のオーダーまでをコンパクトな実装でシステムとして仕上げられるように考慮されたアーキテクチャとなる予定である。x86コアには第4世代の「Steamroller」アーキテクチャを採用し、現在の「Kyoto」世代のOpteron Xシリーズと比較して、速度、容量とも倍以上のメモリ性能を目指している。さらに次世代のグラフィックコア技術を取り入れたGPUを統合して実装し、x86コアとメモリ空間を透過的にアクセス可能なHSA(Heterogeneous System Architecture)が採用される、とSchulteは説明した。
また、「Seattle CPU」はARMの省電力コアアークテクチャであるCortex-A57 64-bitコアを基本アーキテクチャとして採用し、最大で8個のコアを単位消費電力あたりの演算性能を最大化することを目指した設計となるようである。Seattleは、Berlin以上の高密度実装を可能とし、さらに10Gigabit Ethernetや次世代型PCI-e等も統合し、十分な入出力性能を確保することも考慮されていると言う。
そして、Schulteによると、AMDではBerlin、Seattleの両プラットフォームも含め様々なプラットフォームを統合するHSAにも注力して行くと言う。AMDは、HSA Foundationを昨年6月に既に設立しており、様々なワークグループの基に技術仕様の策定が行われている。(詳しくは、www.hsafoundation.comを参照)
HSAの目指すものとして主に次の3項目をSchulteは説明した;
1) 容易なプログラミング
・リッチな高レベルプログラミングモデルによる迅速なランタイムの実現
・動的なメモリ割当が可能な統合アドレス空間の提供
2) システム性能と省電力性能の向上
・カーネル起動時間の短縮と効率的なCPU-GPU間通信
・キャッシュ可能かつコヒーレントなCPUとGPUの統合メモリ構造
・ポインター受け渡しによるメモリ移動の削減
3) サービス品質(QoS)の向上
・多重並列GPUプロセスのサポート
・CPU/GPUリソースにおけるプリエップティブなマルチタスク機能
・ページ機能を持つ共有仮想メモリのサポート
これらに基づきHSAプラットフォームを定義し、その上にHSAランタイム基盤が様々な高レベルプログラミングモデルをサポートし、そのランタイム基盤の基に最適化されたHSAアクセラレーテッドアプリケーションが動作する構造となる。HSAランタイム基盤にはOpenCLが統合され、CPUとGPUなどの加速コプロセッサが様々な高級プログラミング言語を通してシームレスに利用可能な実行環境を実現するとSchulteは言う。
さらにARMベースであるSeattleプラットフォーム向けの統合Linux環境としてLinaroプロジェクトを進めており、LinuxをベースとしたARMエコシステム構築のための準備が進められている。