材料科学、スーパーコンピューティングで新たな高さへ
Tiffany Trader

材料工学とも呼ばれる物質科学は、計算能力と量子力学の進歩によって力を得て、今その新しい時代の先端に位置している。これまで、企業はより良い飛行機、自動車、その他の機器を設計するためにスーパーコンピュータを使用してきたが、今科学者はゼロから新素材の開発に同様の技術を使用している。
MITの材料科学・工学部門のGerbrand Ceder教授とLawrence Berkeley National Laboratoryのスタッフ・サイエンティストKristin Persson氏が執筆した最近のScientific Americanの記事は、コンピュータ主導の材料設計におけるの重要な方法論に焦点を当てている。スーパーコンピューティングと高度な数学との強力な組み合わせのおかげで、原子レベルで新しい材料を構築できるようになった。
この方法は、高生産性計算材料設計と呼ばれ、改良電池、太陽電池、燃料電池、コンピュータチップ、およびその他多くの技術に関して高度な発展に貢献している。
これらのデジタル・プロトタイピングのツールが使用される以前は、新材料の設計の為に多くの面倒な繰り返し作業が必要であった。ブレークスルーは沢山の試行錯誤と推量の山の上でのみ発生した。しかしこの新しいプロセスでは、研究者は短時間に数千の候補材料をテストすることができ、非常に合理的かつ効率的になった。
1800年代後半のトーマス•エジソンのような発明家は、直感と骨の折れる試行錯誤に頼るしかなかった。一度にひとつの材料しかテストできずに、炭化した木綿糸で作ったフィラメントを使用した電球を開発し、特許を取るのにエジソンは14カ月もかかった。数年後、別のアメリカ人がタングステンフィラメントを発見した。そしてそれは今日でも白熱電球に使用されている。
1991年に発表され、巨大な前進として大歓迎されたソニーのリチウムイオン電池でも、何千人も研究者による、数十年の研究の成果であった。
しかし材料科学は、高生産性コンピューティングのおかげで、次の大きなステップを踏み出した。
「材料科学革命の縁に立っています。」とScientific Americanの記事の著者は書いている。「我々は今この百年の物理学とコンピューティングの進歩により、エジソンのやり方を越えることができるようになりました。指数関数的に増加する計算機の処理能力の向上と、1960年から1970年代に量子力学方程式の単純ながら正確な解法を開発したWalter Kohnと故John Popleの研究成果を結合することにより、スーパーコンピュータと第一原理を利用した新しいゼロからの材料設計できるようになりました。 」
材料は、化学化合物で構成されている。電池の電極の様なものはいくつかの化合物の複合体であり、グラフェンのような物質は唯一炭素から構成されるはるかに簡単な物質である。高生産性計算材料設計では強力なスーパーコンピュータを使用して、同時に数百から数千もの化学化合物を分析して特定の特性を探索することができる。
材料の特性 – 密度、硬度、光沢、電子伝導性など – は、材料を構成する原子の量子特性によって決定される。高生産性材料設計では、数千回もの量子力学的計算に基づいて新しい材料が構築される。仮想原子は、仮想結晶構造の構成要素となる。スーパーコンピュータは、これらの仮想化合物を数百または数千を作成し、そしてそれらの形、大きさ、導電率、反射率などの特性を評価する。コンピュータは求められる特性に基づいて仮想物質をスクリーニングし、最も有望な候補を提出する。計算の各段階で、研究者はさらにその結果に基づき対象を絞り込むことができる。
記事では、材料設計の黄金時代が開花しつつあると主張している。これまでのシリコンチップと光ファイバーガラスの技術革新は、現代社会の基盤を作り上げた。そして今、クリーンエネルギー、軽量金属合金、そして次世代スーパーコンピュータ(ポストシリコン時代の何か?)の分野において、大きなブレークスルーを起こす新しい材料の発明が待たれている。