世界のスーパーコンピュータとそれを動かす人々


4月 17, 2020

スーパーコンピュータでのモデリング: COVID-19は食料品店でどのように拡散するのか

HPCwire Japan

Oliver Packham

このCOVID-19の時代において、多くの人々は、社会的距離を保ち、自分自身の健康を守ろうとするために、ガソリンを買ったり、食料品を買ったりするような単純な活動を慎重に扱うようになってきている。しかし、さまざまな活動の相対的なリスクについてはかなりの不確実性があり、相反する情報が蔓延している。フィンランドの研究者チームは、スーパーコンピュータを使って、COVID-19のような病原体が食料品店のような空間でどのように拡散するかをシミュレーションすることで、これらの不確実性の一部に対処することに着手した。

研究者は4つの異なる組織、アアルト大学、フィンランド気象研究所、フィンランドVTT技術研究センター、ヘルシンキ大学の所属である。最初に、彼らは典型的な食料品店のデザインを模し、棚と棚の間に通路がある空間のモデル化を行った。次に、隣り合う2つの通路にそれぞれ1人ずつの人間を配置した。

そして、そのうちの1人に「咳」をさせ、20マイクロメートル以下の雲状のエアロゾル粒子を目の前に吹き付けた。研究者たちは、気流に沿って移動したり、沈むのではなく空気中に留まったりするこれらの粒子が、シミュレーションされた空間の中でどのように移動するか観察を行った。

アアルト大学、フィンランドVTT技術研究センター、フィンランド気象研究所の3つの組織が一連の開始条件を与えられ、独自にモデル化を行った。それらはすべて、咳をした後、雲状の粒子がそのエリアに大きく広がり、最終的には数分かけて薄まっていくという、同じ結論に達した。これに基づいて研究者たちは、咳をしている人が立ち去った後も、その重要な数分の間に、空気中の粒子で他の買い物客を感染させる可能性があると結論づけた。

フィンランド健康福祉研究所のチーフスペシャリストであるJussi Saneは「このコンソーシアムで得られた予備的な結果は、私たちの提言の重要性を浮き彫りにしています」と述べた。「私たちは、体調が悪いときは家にいることを推奨しています。また、袖やティッシュに咳をすること、手の衛生に気をつけることなども指示に含まれています。」Saneはまた、この研究は有用ではあるが、まだ新しい勧告や修正された勧告を発する根拠にはなっていないことにも注意を促した。

 
  スーパーコンピュータPuhti
写真:Mikael Kanerva、CSC
   

シミュレーションを実行するために、研究者たちはフィンランドの科学・IT企業であるCSCのスーパーコンピュータ「Puhti」を使用した。PuhtiはAtos社のBullSequana X1000システムで、1,000個のCPUノードで構成され、それぞれにCascade Lake時代のIntel Xeonプロセッサを2個ずつ搭載しており、メモリサイズも様々なものが混在している。Mellanox HDR InfiniBandを採用したPuhtiは、Nvidia Volta V100 GPUを搭載した80ノードのAIパーティションも搭載している。AIパーティションを除くと、PuhtiのLinpack性能は1.7ペタフロップスで、現在のTop500リストでは232位となっている。

研究者は、非常に短い時間で利用可能になったPuhtiにより、初期の結果と可視化を1週間以内に完了することができたと述べた。現在、研究者たちはモデルを改良し、エアロゾル粒子の挙動についてより広範な質問に答えるため、それらを使用してのモデル作業の継続を計画している。

この研究に関するCSCの記事は、ここをクリックして読むことができます。