がん腫瘍の分析に力を発揮するKeenelandプロジェクトとは?
Alex Woodie

エモニー大学の研究者たちは、がん腫瘍の時間変化を分析し理解する方策が、Keenelandプロジェクトのスーパーコンピュータで実施されたHPCの成果により格段に向上したことを報告している。かつては数週間かかっていた高解像度のがん腫瘍画像の分析が、ハイブリッド型GPU-CPUシステムにより、ものの数分で完了できるようになったのである。
彼らは、病理学、顕微鏡画像、画像分析やHPCの専門家たちからなる本プロジェクト率いている。この仕事は、分子レベル、微視的解剖、巨視的解剖のレベルで、脳腫瘍の中で起こっていることの理解を掘り下げることを目標にし、放射線画像、顕微鏡画像や遺伝子データを分析し、つなぎ合わせ、補正することから成り立っている。研究者たちは、がん腫瘍の形態に関する一般的知識、新たな処方の開発に加え、極めて特殊なこの分野におけるHPCの活用に、新たな進展をもたらすと期待している。
高解像度スキャナーの低価格化のおかげで、研究者たちは大量の高解像画像を蓄えている。エモシー大学の研究者たちの場合、がん腫瘍の細い断面に見られる神経腫瘍をスキャンしている。50,000 x 50,000ピクセルの神経腫瘍画像が、数分で得られてしまう。
画像取得が従来よりもコストパフォーマンスが高い一方で、ノックスビルにあるテネシー大学の計算科学研究所の想定によれば、分析の方にはまだチャレンジすべき課題が残されている。この課題を克服するために、研究チームは、Keenelandスーパーコンピュータを分析処理用に最大限に活用する方法を開発した。
Keenelandは、NSFの資金援助に基づいて、ジョージア工科大学、 NICS、オークリッジ国立研究所、テキサス大学、NVIDIA、Hewlett-Packardが連携している。本プロジェクトは、256ノード、615テラフロップスのHP社Proliant SL250をベースにしたKeeneland フルスケール・システムをはじめ、幾つかのHPC拠点を持っている。各ノードは、2個のインテル製Sandy Bridge プロセッサ、3つの, NVIDIA M2090 GPU アクセルレータ, 32GBのホスト・メモリ、そして、Mellanox InfiniBand FDR 内部ネットワークで構成されている。
エモリー大学のチームが活用している技術は、画像分析と人工知能による分類手法の組み合わせを含んでいる。NICSの想定によれば、Keenelandシステムを利用しているチームは、腫瘍核の境界特定、分裂した核の形や質感の抽出、核の数値の整理、グループを形作る画像の分類、画像と遺伝情報を比較し、相関付けるための“アソシエーション分析”をルーチンとして実行すること、などのいくつかの分析手法を実施している。
Keenelandの性能は、時間通りに仕事をこなさなければならないチームの能力を引き出す手助けをしてきた。チーム・メンバーである、エモリー大学CCI(統合的情報学センター)のタヒン・カークは、NICS(国立計算科学研究所)で述べている。“CPUコア、CPU、複数ノード間で分散化された計算の運用を注意深くスケジューリングすることで、100ノードのKeeneland で1秒間に150枚もの4,000 x 4,000ピクセルの画像を分析することができる。
チームは、エモリー大学生物医学情報学のチェアであり、CICプログラムのディレクター、ジョエル・サルツ教授に率いられている。