世界のスーパーコンピュータとそれを動かす人々


4月 12, 2021

米国、中国のスーパーコンピュータ関連企業7社をブラックリストに追加登録

HPCwire Japan

Tiffany Trader

米国と中国の緊張関係が続く中、米国政府は4月8日、中国のスーパーコンピュータ企業7社を経済的ブラックリストに追加した。U.S. Entity Listは、米国の利益に重大な脅威を与えると考えられる組織に米国企業が重要な技術を供給することを禁止するものだ。

国家安全保障上の懸念を理由に、商務省はこれら7つの企業をリストに追加する裁定を発表した。天津ファイティアム情報技術有限公司、上海高性能集積回路設計センター、サンウェイ・マイクロエレクトロニクス社、国立スーパーコンピューティングセンター済南、国立スーパーコンピューティングセンター深圳、国立スーパーコンピューティングセンター無錫、国立スーパーコンピューティングセンター鄭州である。

バイデン政権は、これらの組織が高度なコンピューティング能力を、米国の国家安全保障に反する軍事的追求のために使用していることを懸念している。

商務省の担当者は、「これらの組織は、中国の軍事関係者が使用するスーパーコンピュータの構築や、中国の不安定な軍事近代化活動、大量破壊兵器(WMD)計画に関与している」と公告している

「スーパーコンピューティング能力は、核兵器や極超音速兵器など、多くの(おそらくほとんどすべての)現代兵器や国家安全保障システムの開発に不可欠である」とGina Raimondo米商務長官は文書による声明を発表し、「商務省は、中国が米国の技術を利用して不安定にしているこれらの軍事的近代化の取り組みを支援することを防ぐために、その権限を最大限に活用する」と付け加えた。

 
無錫国家スーパーコンピューティングセンター  
   

上海の北西に位置する国立スーパーコンピューティングセンター無錫は、2016年6月から2018年6月まで世界ランキング1位を獲得したスーパーコンピュータ「Sunway TaihuLight」を運営している。TaihuLightは、Nvidia-Mellanox社のHDR InfiniBandを採用したインターコネクト技術を除き、主に中国の固有技術を用いて構築されている。このシステムの製造元であるサンウェイ社は、同じくEntity Listに名を連ねているが、現在、中国の技術をベースにしたエクサスケールシステムを開発中である。

前回、中国のスーパーコンピューティング組織がブラックリストに追加されたのは2019年6月で、Sugon、Higon、Chengdu Haiguang Integrated Circuit、Chengdu Haiguang Microelectronics Technology、Wuxi Jiangnan Institute of Computing Technologyに影響を与えた。この動きにより、Sugonはスーパーコンピューティングの頂点に立つであろう300ペタフロップス以上の新システムを発表する計画が頓挫したと報じられている

さらに2015年には、次のような中国の組織がEntity Listに登録された。国防技術大学、長沙国家スーパーコンピューティングセンター、広州国家スーパーコンピューティングセンター(NSCC-GZ)、天津国家スーパーコンピューティングセンターである。

現在、世界で最も速いと公表されているスーパーコンピュータは、日本の「富岳」だ。2020年6月にLinpackスコア415.5でTop500リストの1位の座を獲得し、2020年11月にはLinpackレーティングが向上して442ペタフロップスとなり、首位の座を拡大した

産業安全保障局(BIS)が発行するEntity Listは、「輸出品、再輸出品、転送品(国内)が大量破壊兵器(WMD)プログラムに転用されるリスクが高まる 」可能性のある活動を行った個人や組織について通知するものである。