世界のスーパーコンピュータとそれを動かす人々


11月 7, 2022

HPE、シンガポールの気象庁向けに新しいスーパーコンピュータを提供

HPCwire Japan

Oliver Peckham オリジナル記事

ヒューレット・パッカード・エンタープライズ社は、シンガポールの気象機関であるメテオロジカル・サービス・シンガポール(MSS、シンガポール国立環境庁の一部門)向けに、新しいスーパーコンピュータを構築したことを発表した。この新システムにより、MSSはCrayベースの従来システムと比較して約2倍の計算能力を得ることができ、MSSは重要な予測およびモデリングの改善を可能にするとしている。

このシステム(名称未定)は、HPE Crayスーパーコンピュータをベースに、196個のAMD Epyc「Milan」CPUを搭載している。HPE Slingshot 10でネットワーク化されたこのシステムは、Cray ClusterStor E1000パラレルストレージシステムで補完されている。MSSのシンガポール気候研究センター(CCRS)データセンターでホストされているこのシステムは、すでに運用が開始され、受け入れが決定している。401.4ピークテラフロップスを実現する。

テラフロップス数はTop500に入るほどではなくても、このスーパーコンピューティングパワーは、MSSにとって重要な機能を実現することになるだろう。このシステムは、MSSの数値気象予測システムSINGV(英国気象庁との共同開発)を加速し、機械学習ベースの予測後処理アルゴリズムを可能にする。また、サブキロメートルの都市気象・気候モデルや、MSSがcSINGVと呼ぶ海洋・大気・陸水波結合モデリングシステム(もちろん、東南アジアに特に関連のある相互作用に取り組む)の開発を促進するものだ。

「CCRSでは、科学者とソフトウェアエンジニアが、高度なモデリングシステムを開発し、複雑なデータを調査して、島のユニークな地質学的位置のために、日常的にさまざまな気象プロセスを経験することが多い我が国のためにタイムリーな気象予測を提供することに尽力しています」と、CCRSのディレクター、デール・バーカー氏は述べている。「ヒューレット・パッカード・エンタープライズ社と共同で新しいスーパーコンピュータを設計した後、我々の研究センターは、モデリングとシミュレーション・ツールを進歩させる次世代技術を備えたより高速なシステムを獲得し、より深い研究方法論のための未来のタイプのアプリケーションをテストし適用する新しい機能を導入します。」

この新計算リソースは、比較的小さな国でありながら、卓越した HPC の存在を確立するために努力してきたシンガポールにとって、新たな大規模なスーパーコンピューティング投資となる。HPE は、シンガポールの国立計算機センター(NSCC)向けに、Milan CPU(および Nvidia A100 GPU)を搭載した、より大規模なシステムも構築している。このシステムの GPU パーティションは 2.86 Linpack ペタフロップスであり、CPU パーティションは 2.58 Linpack ペタフロップスとなっている。それぞれTop500の199位と247位にランクインしている。なお、各パーティションのピーク性能の合計は8.23ペタフロップスとなる。

HPEのHPC、AI、ラボ担当最高製品責任者兼上級副社長であるトリッシュ・ダムクロガー氏は、「シンガポールは、科学に大きく貢献し、イノベーションを加速させ、国民の利益のためにさまざまな分野を改善するスーパーコンピューティングプロジェクトを推進し続けています」と述べ、次のように述べている。「我々は、国家のデジタルアジェンダの一翼を担い、シンガポールの気象情報を活性化し、異常気象の予測を加速させる高度なエンドツーエンドのスーパーコンピューティング技術を備えた強力なシステムを構築するために、気象庁シンガポールに選ばれたことを光栄に思っています 」と述べている。

NSCCはまた、最近NvidiaおよびSingHealthと提携し、シンガポールのヘルスケアおよび医療研究イニシアティブにおけるディープラーニングおよびAIアプリケーションを強化するために「スーパーコンピューターとソフトウェア」を利用できるようにした。その詳細はこちら