世界のスーパーコンピュータとそれを動かす人々


2月 6, 2015

米国気象予報がついにFLOPSを獲得

HPCwire Japan

Tiffany Trader

米国国立測候所は、IBMとの4,450万ドルの契約による2台のCrayシステムによって、スーパーコンピューティングの能力を10倍に増強する。このアップグレードで、プロジェクトが完了する今年後半には、この機関の合計スーパーコンピューティング・リソースを0.5ペタフロップスから5ペタフロップスに増強することとなり、「さらにタイムリーで、正確、信頼性の高い、そして詳細な予報」を提供できるようになる。

このインフラを更新する計画は、ハリケーン・サンディーによる補足法案とは別に設定された2,500万ドルと共に、2013年7月から行われている。IBMはこのマシンを供給することですでに契約を結んでいたが、この企業がx86サーバ事業を中国のレノボに売却したことで購入が遅れていたのだ。米国が中国が所有するパーツを使用する事はセキュリティ・リスクがあると判断したため、当事者はCrayを下請けとして使うことをIBMと取り交わすように動いていたのだ。

米国海洋大気庁(NOAA)のこのプレスリリースに詳述されているように、実際には予報システムに2つのアップグレードが計画されている。この1月に2台の同一のIBMマシンの各能力を0.213ペタフロップスの3倍の0.776ペタフロップスにし、合計の能力を1.552ペタフロップスにする。NOAAによると、この機関にとってこの能力は、より高い解像度と長いタイムスパン(解像度は27kmから13kmで10日間、55kmから33kmで11日から16日間)を使うグローバル予報システム(GFS)のアップグレード版を走らせるには十分な能力である。グローバル・アンサンブル予報システム(GEFS)は、垂直レベルの数値を42から64に拡張し、水平解像度を55kmから27kmで8日間および70kmから33kmで9から16日間にシフトさせる同様のアップグレードを受ける事となる。

ハリケーンの気象研究と予報モデルもまたアップグレードされ、毎日1時間毎に15時間数値予報を配信する高解像急速リフレッシュモデルが今や動いており、NOAAの国立測候所の気象学者が、有害な気象現象の経路、タイミングおよび強さをより予測できるようにしている。

ここ数年、米国の予報の精度は、高性能コンピュータに投資するカナダやヨーロッパのライバルである予報グループに対して落ちている。批評家は、アメリカのモデルではハリケーンサンディーが陸地から離れて沖に向かっていることをまだ示していた頃、ヨーロッパモデルであるECMWFが東海岸に上陸することを正確に予測したことを指摘している。

現在、ヨーロッパ中期気象予報センターは2台コンピュータを所有しており、各々おおよそ2.5ペタフロップスで動作しているのに対し、米国は2台のシステムで各々213テラフロップスだ。演算能力で10倍不利である事にも関わらず、NWSはヨーロッパセンターのミッションには無いさらに計算集約な地域予報を実行する責任を持っている。

ワシントン大学の大気科学の教授で改善された米国予報の率直な支持者であるCliff Massは最近の進展に楽観的だ。「もし、国立測候所がこれら強力なコンピュータを賢く使うなら、いやま全てが変わることができるのです。」と最近のブログに彼は書いている。

「適正に使う事で、この新しいコンピュータの能力は、この国に巨大なプラスの影響を持つ合衆国の数値気象予報に革命を起こし、大幅に改善することができます。」とMassは続けている。「米国数値気象予報における問題は計算能力不足に制限されておらず、巨大な米国アカデミック研究コミュニティにおける巨大な知識ベースや、米国の政府系研究開発における取り組みの非効率性/重複性に乗る事ができないように、これらの問題は対処される必要があります。これらは今後注意が必要な問題です。しかし、計算能力不足の言い訳はできなくなり、米国数値気象予報のルネッサンスが可能となるのです。」

2014年3月にNOAAの管理者に就任した元宇宙飛行士のKathryn Sullivanは、NOAAのポートフォリオ(政治的な対立と自動削減に影響される予算の時代の偉業ではない)をバランスする使命を帯びている。

「NOAAはアメリカの環境諜報機関です。」とSullivanは声明の中で述べている。「私達は、重要で深刻な気象、水、および気候現象に対して強くなるためにコミュニティが必要とする情報、データ、そしてサービスを提供します。これらのスーパーコンピューティングのアップグレードは、よりタイムリーで、正確、そして信頼できる予報につながるようにデータを実用的な情報に変換する能力を大きく改善します。」

「私達はスーパーコンピュータおよび観測プラットフォームに大幅で重要な投資を継続して行います。」と、NOAA国立測候所のディレクターであるLouis Uccelliniは付け加えている。「全体的な能力を増強することで、私達は毎秒1,000兆の計算を処理する事が可能となり、すべて予報と予測に使われます。この処理能力の増強は、天気に強い国家を構築するのに必要なより正確で一貫性のある予報のための数値予測モデルを改良する私共の取り組みにとって不可欠なのです。」