世界のスーパーコンピュータとそれを動かす人々


8月 13, 2013

GPU、銀行での価格設定ルーチンを高速化

HPCwire Japan

Alex Woodie

ロンドンに本拠を置く銀行、HSBCは、Intel XeonプロセッサのグリッドからNVIDIAのTesla GPUへポートフォリオ価格決定プロセスを移動することによってコンピュータのコストを数百万ドル節約することができるかもしれない、とCUDAプログラミングツールを提供することによって銀行を支援した会社、Xceleritがレポートした。

 

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4月にXceleritは、2012年に資産で2.6兆ドル以上を報告しているHSBCにおいて、定量的リスク・評価グループ(QRVG)によって実施した有望な実験を報告した 。 QRVGは、毎晩、バーゼルIIIの要件ごとに、HSBCのポートフォリオ全体に渡って、そのリスク・エクスポージャを計算するためにCVA(クレジット価値調整)を実行する責任がある。

現在、Intel Xeonプロセッサのグリッド上でCVAプロセスを実行するのに数時間掛かっている。Xceleritのブログ投稿によれば、HSBCのQRVG開発およびヘッジ会計システムの責任者であるエウリコ・コーバスは、一晩毎でなく、1日の間でこの計算を実行するためにGPUを使用することは可能か否か見てみたかった。

HSBCは、従来のIntelプロセッサ上でCVAワークロードを駆動するコードに大きな投資を行っているが、その開発者は、NVIDIAのGPUプログラムへ対応するために必要なCUDAの専門知識が不足している。「我々は、Xceleritが簡単な方法で我々の既存のコードを最大速度でGPUを駆動する提案をしたことを聞いていた。」とコーバスは、ブログ投稿で述べている。

数日間のプロジェクトで稼働後、一人の開発者は、CVAプロセスをGPU上で試しに実行するアプリケーションの有望な部分を確認していた。Xceleritによると、CUDAへコードを移行する作業は、コード内へXceleritのAPIコールを多少挿入する必要であった。

次に、QRVGグループは、GPU上でいくつかの価格計算をテストすることに着手した。 一例では、QRVGは1万のスワップ手形のセットを取り、26の時間ステップを持つ1,000個のモンテカルロ・シナリオのセットを使い、合計で2億6千におよぶ個別計算でその価格付けを行った、とXceleritが報告している。

価格設定ルーチンが単一のTesla K20 GPUで実行されたとき、パフォーマンス分析によると、4コアのIntel Xeon E5620 CPUよりも19倍速く処理した。 さらに3基のGPUを装備したシステムで実行すると、ほぼ直線的にスケーリングし、Intel CPUより57倍の速さで作業を完了した。

それは、複雑なCVAプロセスの小規模で比較的単純なコンポーネントを含んだ小さな実験だったが、それはHSBCにとって大きな節約の可能性を実証した。 HSBCの実験に関するフォーブスの記事によると、GPU対応システムはフルセットで約22,000ドルであり、対して600CPUのグリッドは100万ドルだった。

「我々は、ちょっと水の中に我々のつま先を浸しているところです。」とコーバスはXceleritのブログ投稿で述べている。 「我々のクオンツチームは、コンピューティングパワーのために貪欲な食欲を持っており、明らかにGPUを使用することは、その問題に対する費用対効果の高いソリューションを提示しています。」

規制当局が銀行法を強化し、所要自己資本を強化するにつれ、銀行は保有資産全般に渡ってCVAとリスク計算を実行するために、より速く、より効率的なハードウェアを要求する。 GPUコンピューティングは、ハードウェアの支出を削減するだけでなく、電気料金の支援もソリューションの一部として提供することができる。