世界のスーパーコンピュータとそれを動かす人々


9月 16, 2013

DOE、エクサスケールを値付け

HPCwire Japan

TIffany Trader

米国エネルギー省は、2022年までのエクサスケール・システムの分野の計画を発表した。しかしこの目的を満たすには、ターゲットを絞った研究開発のため、10億ドルから14億ドルの投資が必要になると言う。 議会へ提出したDOEの2013年6月版「エクサスケール戦略」報告書を、最近、FierceGovernmentITより入手した。

20130916-S1

報告書は、今日のペタスケール・スーパーコンピュータよりも100から1000倍高速なエクサスケール・システムが、科学およびセキュリティ分野の両方で競争優位性を維持するために必要とされることを明確にしている。 エクサスケール・コンピューティングは、燃焼、気候や天体物理学のような分野における将来のデータセットの処理に不可欠であることを主張しており、「大規模シミュレーションと大 規模データ分析の課題を一緒に対処する上で重要なレバレッジ」であるとDOEは書き添えている。

しかし、実用的なエクサスケール・マシンが現実となる前に、対処すべき幾つかの非常に大きな障害がある。 これらは、エネルギー問題、システムバランスとメモリ障壁、耐障害性とランタイムエラーへの対処、そして大規模な並列処理の活用である。 これらの問題のすべてに注力した研究開発が必要である。

電力要件の低減が幾つかのエクサスケールの試みの最も重要な目的のひとつである。レポートでは、現在の技術で構築されたエクサスケール・スーパーコンピュータは、フーバーダムの約半分の出力に相当するほぼギガワットの電力を消費するだろうと指摘している。今後10年間の標準技術の進展から、専門家は、エクサスケール・スーパーコンピュータは、200メガワットまでの範囲内の電力要件で、推定年間2~3億ドルの予算で構築することができると推測している。 資金提供機関がこのくらいのお金を費やすか否かを見守らなければならないが、DOEは、その電力要件が現在のクラス最高のシステムが存在する20メガワット近傍まで減少し、10分の1まで切り詰められることを期待している。

比較のポイントとしては、オークリッジ国立研究所に設置された米国最大のスーパーコンピュータ、Titanであり、17.59 Petaflopsを達成するために8.2 MW必要とする。 世界最速のシステムである中国の33.86 Petaflopsの天河-2は、17.8 MWのピーク電力負荷があるが、冷却が追加されるとその数字は24 MWへ上昇する。

DOEレポートは、次の10年の初頭(2022年頃)までにこのようなシステムを処理する目標を備えた包括的なエクサスケールのロードマップへ追加すべき焦点となる5つの主要分野を推奨している。

・DOEのリーダーシップコンピューティングファシリティで、今日のシステムに比べて50~100倍優れた計算能力を提供する。

・効率改善の増加分を想定し、そのようなシステムは2010年の業界予測の10倍を下回る電力要件を持っている。

・正確な完全炉心計算、シミュレーションや強い乱流の化学的相互作用を有する混合燃焼レジームのための燃焼モデルの検証と改善、バイオマス転化のための酵素の設計、エネルギーグリッド内での利用可能なエネルギー源に基づくより現実的な決定、これらのような高度な計算能力を必要とするシミュレーションとデータ解析アプリケーションを実行する。

・増え続けるデータストリームを分析するために必要な容量と性能を提供する。

・最先端のハードウェアとソフトウェアの情報セキュリティ機能を進展させる。

レポートに記載された計画では、2022年までにエクサスケール・コンピューティングシステムを実現するために必要とされる研究開発と工学技術を網羅しているが、実際のシステムの調達はこの試みとは区別されている。提案されたアプローチでは、例えば100 Petaflops、250 Petaflops、500 Petaflops、そしてそれ以上というようにエクサスケールまで上昇する性能の中間段階でシステムの開発を継続することである。 現在、米国では、HPCマシンを獲得し、運用するためにNNSA Advanced Simulation and Computing(ASC)とScience Advanced Scientific Computing Research(ASCR)プログラムの事務局を通じて毎年$1.8億から$2億の間の投資を行っている。

研究開発ではエクサスケール・スーパーコンピュータの実現方法を準備することが必要とされており、$10億~$14億の間で値札が付けられ、この数値はコンピューティング業界の主要な利害関係者の調査によるものである。 この数値はDOEに対するコストであり、ベンダーからの「コスト共有の貢献」、およびソフトウェア・エコシステムで解決する
べきソフトウェア構成要素の開発の期待が入っている。このプログラムの責務は、DOEの科学局と国家核安全保障局(NNSA)で共同して共有される。