核融合エネルギーへ一歩接近
Tiffany Trader

恒星のエネルギーを地球上で再現する研究である核融合は、長いことエネルギー研究者たちの究極の目標になっている。この領域には懐疑的な意見も多いが、ローレンス・リバモア国立研究所(LLNL)の関係者は、数十年以内には商業的に運用可能な核癒合プラントが可能になるという見通しを表明した。
1950年代に見出されて以来、LLNLは核融合の謎を解明すべく数々の手法を開発してきた。現在では主に、磁場融合方式と慣性核融合方式の二つの原理が知られている。1960年代にレーザーが発明されたとき、LLNLはそれを、核融合の微小爆発を点火させるために集光させるアイデアを思いついた。LLNLのNational Ignition Facility(NIF)では、レーザー光を用いて制御された熱核燃焼を実現すべく、努力を続けている。
2013年8月13日、NIFにある192本すべての超強力レーザービームが、デュートリウム‐チタニウムで満たされたカプセルに照射された。数ナノ秒後には、カプセルは崩壊し、ほぼ3×10^15の中性子核エネルギー、すなわち8000ジュールの中性子エネルギーを放出した。これは従来の成果よりも3倍も高い記録的な効率であった。
研究所の公式見解によれば、”今回達成されたことは、コンピュータ・シミュレーションのベンチマークとしても需要な成果でした。また、2012年12月にNNSAから議会に働きかけて着手し、これまで前進してきた道筋の一歩を示すものとなりました。"
研究所のコンピュータは、今回の結果を分析し始めているが、最初の計算だけでも期待させるに十分である。LLNLは次のように報告している。"高温プラズマ中の融合反応が始まり、燃焼中心部が自己発熱することで、効率がほぼ50%まで上昇しました。融合反応が支配的になるアルファ燃焼まであと少しのところまで進んだのです。"
NIFとフォトン科学の主席副部長 Ed Mosesは、この実験を"自立燃焼という目標への重要な進歩であり、NIF上での融合点火に向けた次の重要な意味を持つ段階"と位置付けている。
NIFの実験は、制御室内に設置されている高度なコンピュータ・システムにより、統合制御されている。システムは、ミラー、レンズ、モーター、センサー、カメラ、増幅器、コンデンサー、診断装置など60,000箇所の制御ポイントに繋がった950個のフロント・エンド・プロセッサを有している。
米国は、安全で潜在的に無限の、環境に優しいエネルギー源としての長期的な可能性ゆえに、核融合に投資を続けている。実験は、瞬間的に自己燃焼を実現したものの、エネルギー入力の方が出力よりもまだ多かった。実用化には、融合エネルギーが電力を持続的に供給できるだけの余剰エネルギーを生成しなくてはならないのである。
核融合科学の意義深さに加えて、最近の実験成果は、核兵器実験をせずに国の安全を確保するNIFの役割を担保している。制御下に置かれた極小爆発が示すのは、核実験を続けることから生じる結果を受容する必要なく、国家資産を保証し安全に確保できるということである。