今日の天気: GPUで高速化された天気予報
John Russell

天気予報は常に挑戦だ。ハリケーンSandyが大西洋岸を走り抜けた時、米国の実行モデルが海上に抜けると予報していた一方で、ヨーロッパのモデルはSandyが実際にそうなったように左に急旋回して陸地に向かうことを予期していたのは有名だ。予報は高い賭けの活動なのだ。スイスの気象気候連邦局(MeteoSwiss)は気象予報用の初めてのGPUで加速化されたスーパーコンピュータを発表した。
MeteoSwissによると、新システムはNVIDIA Tesla K80 GPUで高速化されたCrayスーパーコンピュータ(Cray CS-Storm)で、前身のCPUベースのシステムの40倍のパワーを提供する。NVIDIAによると、NVIDIA、MeteoSwiss、スイス国立スーパーコンピューティング・センター(CSCS)、Crayおよびスモール・スケール・モデリング・コンソーシアム(COSMO)間のおよそ2年間に達する共同研究でMeteoSwissの気象予報能力を改善する。
当然NVIDIAはGPUベースの高速化が気象予報のコミュニティで必要不可欠なツールとなって欲しいのだ。新MeteoSwissシステムの各ノードは8個のGPUを搭載しており、累積で浮動小数点演算性能の90%を提供している。(48個のCPUと192基のK80)現在、新システムと旧システムの両方が稼働しており、新システムが完全運用となる2016年の早い時期にフェーズアウトする計画だ。
気象モデルはある時間における大気の状態をサンプルし、流体運動と熱力学の方程式を使って未来のある時間での大気の状態を予測する。このモデルは予報領域をグリッドに分割し、近接セル間との相互作用と伴に各グリッドセル内で方程式を解き予測を計算する。格子点がお互いに近いほど、最終予報におけるリアリズムが増えるような全体的なモデルの解像度が高くなるのだ。
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COSMOコードを最適化するのは多大な労力であり、性能増加の達成のために重要だった。NVIDIAのアクセラレート・コンピューティングのグループ・プロダクト・マネージャであるRoy Kimによれば、気象予報アプリケーションは通常10から20年以上経過しており、Fortranで書かれていることが多い。CUDAとOpenACCの組み合わせがGPU用にコードを最適化および移行するのに利用された。
「このプロジェクトで働いているチームは、コードがポータブルで保守性を持てるようにOpenACCを利用しています。CUDA部分については、コードを読みやすくするためにStellaと呼ばれるライブラリを作成したのです。」とKimは語った。
作業は完了しているようだ。MeteoSwissは毎時の24時間予報および数日間の中期予報を行っている。GPUベースのシステムへ切り替える前は、24時間予報モデルは2.2kmグリッドがベースで、1日に8回シミュレーションを実行していた。切り替え後は、グリッドの粒度は1.1kmに改善している。中期予報については6.6kmのグリッドを使って、1日に3回実行し、3日間の予報を得ていた。切り替え後は、グリッドの解像度は2.2kmに縮小され、1日に42回シミュレーションを行って5日間の予報を行っている。
「以前は、2.2kmの解像度では嵐雲の形成をモデリングするのは難しかったのですが、1.1kmでは、嵐雲を非常に正確にモデルすることができるようになりました。彼らは現在1つだけのシミュレーションでなく、複数のシミュレーションも実行できるようになったのです。」とKimは語った。また、スイスアルプスの標高変化に伴う微気象の変化を迅速にトラッキングできるようにするモデルの忠実度の改良も期待されている。
重要なのは、改善され移植されたコードがCOSMOの一般配布に現在入っていることで、NVIDIAは、ほとんどがヨーロッパがベースのCOSMOユーザの大きなコミュニティの中で、さらに活動を刺激したいと考えている。
CSCSにある2キャビネットのCray CS-Stormスーパーコンピュータは満杯状態だ。各キャビネットは、合計96基のNVIDIA Tesla K80 GPUアクセラレータと24個のIntel Haswell CPUを持った12台のハイブリッド演算ノードから構成されている。GPUはこの新コンピュータシステムの重要な要素のひとつだ。これはシミュレーションのエネルギー効率を3倍にし、通常のCPUの2倍高速にしている。「高品質な気象予報は常に処理能力に依存しています。」とCSCSのディレクターであるThomas Schulthessは述べている。「このGPUと改訂したモデルで、通常のシステムよりさらに迅速で正確に気象シミュレーションを計算できるようになり、エネルギー効率もコスト効率も高くなりました。」
「初めての気象予報への運用における高密度GPUベースのCray CS-Stormシステムの草分け的な利用は、CSCS、MeteoSwiss、NVIDIA、Cray間の強力で協調的なパートナーシップの結果なのです。」とCrayの上級副社長で最高戦略責任者であるBarry Boldingは語った。「GPUとCPUの8対2の利用で、Cray CS-Stormシステムは、より詳細で高解像度の気象予報を実行する強力なツールをMeteoSwissに提供するでしょう。」