データが科学を再構築する–第一部:観測からシミュレーションへ
オリジナル記事「How Data Is Reshaping Science – Part 1: From Observation to Simulation」
望遠鏡が宇宙の広がりを明らかにした初期の突破口から、シュライデンとシュワンが植物細胞を特定した顕微鏡、そしてラザフォードが原子核を定義した粒子加速器に至るまで、科学はしばしばその道具を通じて大きな進歩を遂げてきた。この傾向は、現代を象徴する道具であるデータセットとその相棒であるAIによっても継続している。両者が一体となり、データが発見の物質的基盤であり手段でもある新たな実験室を形成しているのだ。
これが新シリーズ『科学のデータ最前線』の幕開けとなる物語だ。本シリーズはデータ指向のアプローチが科学技術に新たな活力を与える様を探る。本稿はその第一弾として、観測からシミュレーションへの移行に焦点を当てる。多様な分野の事例を検証し、科学者がツールの記録と同様にモデルの予測を信頼する方法を学ぶ過程を分析する中で、この転換が科学的発見の未来に何を意味するか考察する。
科学的な発見の本質の変化
研究者は大量のデータと強力なAIモデルを手にし、ますます多くの作業を機械の中で行うようになっている。多くの分野で、かつて実験室で始まった実験が今では画面上で始まる。AIとシミュレーションが発見の順序を逆転させたのだ。多くの場合、実験室は最初のステップではなく、最後のステップとなった。
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| (Inovational World/Shutterstock) | |
この現象は科学のほぼ全領域で見られる。研究者は一つのアイデアを順番に試す代わりに、何千ものシミュレーションを実行し、現実世界で試す価値のあるものを選別する。新素材、脳モデル、気候システムのいずれを扱う場合でも、パターンは明確だ。計算処理こそが発見の試金石となったのである。
ローレンス・バークレー国立研究所の「マテリアルズ・プロジェクト」は、コンピュータで新化合物を検証するために開発された。科学者たちは化学物質を混ぜて結果を見る代わりに、材料の挙動を予測するため何千ものシミュレーションを実行する。このシステムは電気伝導率から熱限界、化学的安定性まであらゆる特性を予測できる。これらは全て製造前に完結する。極めて有望と見なされた候補のみが選ばれるのだ。
ヒューマン・ブレイン・プロジェクトのEBRAINSは、科学者が脳回路をシミュレートすることを可能にする。動物実験や侵襲性の高い試験に頼らず、薬物や刺激に対するニューロンの反応を検証できるのだ。NVIDIAのEarth-2は既に開発が進んでおり、気候変動の影響を詳細にモデル化できる。これにより、あらゆるシナリオを徹底的かつ迅速にテストすることが可能となる。
これは単なる競争ではない。より多くの調査や失敗の機会を増やすことではなく、学びの機会を増やすことだ。何かが失敗しても、何週間もの労力が無駄になるわけではない。それは次の反復のためのデータとなる。研究室はもはや研究者が試行錯誤する場所ではない。研究者が答えを得る場所なのだ。
科学の新たな道具
データは科学の根本的な働き方を変えた。従来の実験における推測と検証のリズムは置き換えられた。発見はペトリ皿から始まるのではなく、データから始まる。どの仮説を検証すべきか考える代わりに、研究者はモデルに道筋を示させるのだ。
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| (Blackboard/Shutterstock) | |
メタとカーネギーメロン大学が開発した「Open Catalyst」のようなツールは、実験室でのテストを実行する前に、分子がどのように反応するかを科学者が予測するのに役立つ。このシステムはコンピュータ上で化学反応をシミュレートするため、時間を節約し、高価な試行錯誤を減らす。水素燃料や炭素回収のための新しい触媒など、クリーンエネルギー向けの高性能材料を見つけるのに特に有用だ。
生命科学分野では、DeepMindのAlphaFoldがアミノ酸配列からタンパク質の折り畳み構造を予測する。これはかつて何年もかかる実験作業を必要としたものだ。その成果はEMBL-EBIが運営する公開データベースを通じて、実験計画から薬剤標的設定まであらゆる研究の指針となっている。多くの生物学者にとって、AlphaFoldは今や研究の第一歩だ。
シミュレーションは物理学の分野でも支配的になりつつある。かつては観測が不可能だった領域だ。科学者たちはアルゴンヌ国立研究所のAuroraスーパーコンピュータを使い、直接再現できない条件をシミュレートしている。プラズマの挙動、星の形成、ビッグバン直後の現象などがそれだ。これらは単なる可視化ではなく、実際の実験に代わるものとなっている。
顕微鏡は消えていない。望遠鏡も依然として重要だ。しかしこの新たな環境では、それらが最初に用いられる道具となることは稀である。むしろ多くの場合、モデルが先導し、実験室がそれに続くのだ。
デジタルツインと合成データ:発見の新たな原動力
かつて科学は「何を観察できるか」という問いから始まった。今やそれはしばしば別の問いから始まる:「何をシミュレートできるか」と。
あらゆる科学分野において、発見の最初の草案はもはやノートや実験台の上で生まれるのではない。モデル内部で生まれるのだ。物理システムのソフトウェア複製であるデジタルツインと合成データセットは、研究者が真っ先に手に取るツールとなりつつある。これらは現実を巻き込む前に実験のリハーサルを可能にする。シミュレーションで有望に見えなければ?現実世界に持ち込む手間すら省けるのだ。
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| (DC Studio/Shutterstock) | |
NASAの航空研究では、これが標準的な手法になりつつある。新しい航空機の設計は、風洞実験に直行しない。代わりに、数週間から数ヶ月間、計算流体力学シミュレーターの中で検証される。技術者は、翼を流れる気流の挙動、乱流における圧力変化、抗力が揚力に与える影響をテストする。問題が発見されれば、修正を加えて再実行する。データがあるおかげで、ミスや材料の無駄を心配する必要はない。プロトタイプを実際に作る頃には、すでにその飛行をシミュレーションで確認済みなのだ。
エネルギー分野でも、同じ理屈が地下で展開されている。シェルやBPは合成地震データを用いて岩盤構造や圧力システムをモデル化する。仮想的な井戸を設計し、ドリルが地中に触れる前に地殻がどう反応するかをシミュレートする。これも科学だ。ただ最初にコードで起こる種類の科学である。
農業分野でもこの変化が起きている。ワンソイルやピートといった企業は、衛星画像と気候データから農場全体を仮想再現したデジタル農地を構築している。早期作付けや灌漑削減、農薬不使用といった条件下での結果をシミュレートする。これらのモデルは抽象的ではない。実際の農地、実在の農家、実際の季節と結びついている。ただ試験が数ヶ月ではなく数秒で終わるだけだ。
これら全てを強力にしているのは、単に速度や規模だけではない。それは「選別効果」だ。かつては実験室が起点だった。今や実験室は、シミュレーションが理由を示した後に行く場所だ。現実世界は消えていないが、仮想世界の検証者という新たな役割を獲得したのだ。
シミュレーション世界における科学者の新たな役割
確かに、仕事は変わっている。科学者はもはや仮説を検証したり顕微鏡を覗いたりするだけではない。ますますシステムを管理する役割を担っている――モデルがずれるのを防ぎ、何がいつ変更されたかを追跡し、出力結果が実際に意味を持つことを確認するのだ。実験を実行する立場から、実験が行われる環境そのものを構築する立場へと移行したのである。
そして、DeepMindであれ、リバモアであれ、NOAAであれ、あるいは単にモデルを構築している研究チームであれ、その仕事は同じ種類のものだ。データが使えるかどうかを確認し、最後に誰が触れたのかを突き止め、ラベルが正確かどうかさえ疑問に思う。AIは多くのことができるが、自分が間違っている時はわからない。ただひたすら続けるだけだ。だからこそ、これは依然として人間の介入に依存しているのだ。
彼らはまだ好奇心を持っている。洞察を追い求めている。だが今や、仕事の大部分はシステムを正常に保つことだ。なぜならモデルの出力は正しく見えるからだ。きれいに見える。だがそこに至るまでの全過程を追跡しなければ、それが本物だと確信できない。その判断――直感による検証――は依然として人間である君に委ねられている。これは依然として科学だ。ただより上流で行われているだけだ。
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現実がコードになる時に失うものと得るもの
科学がシミュレーションに移行すると、多くのものを得る。速い。かつてないほどアイデアをスケールできる。モデルは疲れない。コーヒーを飲み終わる前に千回の実験を走らせられる。よりクリーンな出力、より厳密な制御が得られる。紙の上では、全てが進歩に見える。そしてそれは事実だ。
しかし、失うものもある。
機械の中で全てが起きると、変な匂いや割れたガラス、場違いな奇妙な反応はなくなる。実験室で眉をひそめさせた小さな出来事も失われる。直感的な判断も。発見へとつながった事故も。モデルはそんなものを与えてくれない。モデルは指示通りに動くだけだ。
そう、確かに精度は上がる。だが感覚は少し失う。コントロールは得られる。だがコンテクストはすり抜ける。現実は厄介だが、反撃してくる。モデルはそうしない。そうさせない限りは。どこを見るか、いつ止めるか、何を信用しないか、全て指示しなければならない。
それは依然として科学者の責任だ。道具は変わった。環境も違う。だが仕事の本質は?何かがおかしいと気づくことだ——たとえ数字が完璧に見えても。むしろそういう時こそだ。
このシリーズの次回では、論文や実験データ、数十年にわたる科学的研究で訓練されたモデルに迫る。後半では、その基盤となるインフラと、AIを活用した科学研究を今なお悩ませる再現性の問題を検討する。結局はデータに帰着する——その構築方法、信頼性、そして活用方法だ。見逃さないよう購読とフォローを。
本記事はBigDATAwireに初掲載された。











