世界のスーパーコンピュータとそれを動かす人々


11月 14, 2013

氷結防止素材へまた一歩

HPCwire Japan

Tiffany Trader

GEグローバル研究所には、オークリッジ国立研究所のマルチ・ペタフロップスのスーパーコンピュータTitan を利用して、水滴が冷たい表面に接触したときどのようにして氷になるのかを研究している科学者がいる。彼らは、氷の形成と積層をはばむような"防氷"物質を開発しようとしているのだ。

「ちは、ある種の面が氷形成を阻む性質があることを観察しているが、その正確なメカニズムまではわかっていない。」とEのHPC推進者Rick Arthur氏は書いている。
「私たちは、氷が阻止される条件についての知見を得る手段として、シミュレーションを活用しているのです。」

この技術を待ち望んでいる産業システムは実にたくさんある。風力発電タービン、沖合の油田・ガス掘削機や生産リグは、非常な低温気象や、雨や雪にも耐えることができるが、氷になっては、お手上げである。GEの研究者たちは、この科学テーマを追求するために、エネルギー省ASCRの先進的計算チャレンジとして、Titanの8千万CPU 時間を使う権利を得たのである。

ブログがハイライトとして紹介しているのは、GE先端計算研究所の科学者、Masako Yamada博士の仕事である。シミュレーションのおかげで、Yamada博士と彼女の同僚は、氷の防止要因について、次に示すようなより深い理解を得ることができたのである。氷結を防止できる面の特質は4つの潜在的な効果により評価できる;

1) 氷点を下げること, 2) 氷化の開始を遅らせること, 3) 氷と表面の付着力を減らすこと 4) 凍る前に水滴を弾けさせること

候補を絞り込んでいくためには、モデリングとシミュレーションが不可欠である。だが、Yamada博士が説明するように、分子動力学を計算するには、恐ろしいほど時間を要するのである。

"分子"の意味は、全ての水分子の位置を把握する必要があるからで、"動力学"の意味は、非常に短い時間間隔で計算するからである。

Titanのような世界最速のスーパーコンピュータだけが、この種の計算集約的な仕事をこなすことができる。GPUで実行できるようアプリケーションを改良するのは、さらに大きなステップだった。チームは、TitanのGPUアクセルレータで処理できるようにコードを書き換えることで、5倍の性能向上を図ることができた。

「それでも、なお」と、Yamadaは語る、「私たちはようやく50ナノメートルの水滴をモデル化できたに過ぎません(実際の水滴に比べるとまだまだ小さ過ぎる)し、私たちが望んでいる時間周期までシミュレーションを行うまでには至っていないのです。」

"現実生活"での経験に対し、仮想的なモデルを使うことで、出来事をより深く把握することができる。

「私たちは、水分子が表面でどのように相互作用しているかを正確に観察することができます。」と、Yamadaは記している。「これは、どんな実験にも不可能なことなのです。加えて、バーチャルな世界においては、結果は不純物、欠陥やなんらかのランダムなノイズにも影響されることはないのです。」

この研究が新しいクラスの物質を創成することに役立つのは明らかである。安全性の高い航空機エンジンから自己教会する自動車の窓ガラスシールド、くっつきにくいアイスクリーム・スクープなど、潜在的な応用範囲は想像出来うる限り広いはずである。