IBM、Total社が採用した世界最速の商用スーパーコンピュータを発表
現在、世界で最も力を持つスーパーコンピュータ2基を誇るIBMは、商用スーパーコンピュータのトップにも立っている。IBMのPower9 CPU-GPUアーキテクチャを活用したPangea IIIは、フランスのエネルギー複合企業トタルグループが石油探査や将来の石油およびガス生産量の予測などの「収益機会への結びつき」に利用されている。

業界ランキングにおいてPangea IIIは、(25理論ペタフロップ)17.9 Linpackペタフロップを達成し、公的にベンチマークされたスーパーコンピュータとして11番目の速さを記録した。Total社は、新しいシステムがグループのコンピューティング能力をほぼ5倍の31.7ペタフロップスまで拡張すると同時に、システムのストレージ容量を3倍の76ペタバイトまで増やすことを発表した。エネルギー大手の最も強力な力で2015年のシステムをSGI(2016年にHPEによって買収)から置き換えたことにより、現在、新しいIBMパワーハウスは、Total社の最も高性能なPangeaスーパーコンピュータとなっている。
HPCシステムが商業市場でますます普及するにつれて(Intersect 360 Researchの業界アナリスト、Addison Snellは、市場の最新情報として、HPC市場の58%を商業部門が占めていると述べている)、エネルギー部門はスーパーコンピューティングクラスのシステムを積極的に取り入れるようになった。BPが使用しているシステムの1つが最も強力な商用スーパーコンピュータであるとHPEが発表した直後である昨年初め、同じくHPEによって構築されたHPC4と呼ばれる18.6ペタフロップス(ピーク)のクラスタ、およびNvidia GPUを組み込んだIBMのPower9アーキテクチャを使用し、商用スーパーコンピューティングの首位を飾った。
Total Exploration&Productionの代表、Arnaud Breuillacは、次のように述べている。「この新しいシステムによって、我社の探査および開発における地質学的リスクを軽減し、プロジェクトの成熟と納期を短縮し、最適化された現場操作を通じて資産価値を高めることができるでしょう。」
IBM Power9ベースのHPCアーキテクチャは、世界2大システムである米国エネルギー省のSierraおよびSummitスーパーコンピュータの開発にも使用された(参照記事 HPCwire: “Top500 Purely Petaflops; US Maintains Performance Lead“)。このアーキテクチャは付属のNvidia GPUアクセラレータを利用して、消費電力を抑えながらパフォーマンスを向上させるものである。
IBMは何社か存在したPangea IIIの構築を希望する入札企業のうちの1社だったが、IBMの加速コンピューティングに対するアプローチがトタル社の賛同を得る結果となった。Power9 CPUとNvidiaのTesla V100 Tensor Core GPU間の高速専用NVLinkにより、x86ベースのマシンと比較してCPUとGPU間のメモリ帯域幅を5.6倍に増やすことができる、とこれらのパートナーは述べている。
「IBMがPangea IIIをTotal社において勝ち取ったことは、様々な意味において重要なことです」とSnellは述べた。「少なくともまず重要なのは、Pangea IIIが、現在最も知られている商業用スーパーコンピュータであるということです。米国エネルギー省以外の場所でIBMのPower9が大きな勝利を手にしたことにより、HPE / SGIからライトハウスカスタマーを獲得しました。2018年、IBMはHPC業界の市場を上回るペースで成長し、このまま勢いを増していくことを目指しています。」
Total社は、エネルギー蓄積の位置を特定するために使用されるより高解像度の画像を生成するため、より大きなデータセットを処理することができる新しいアルゴリズムと組み合わせて、追加の計算処理能力を使用すると述べた。Total社はPangea IIIを、生産履歴上のデータセットを統合して特定のサイトから追加の埋蔵量を特定する貯留層シミュレーション手法の実行にも使用する予定だ。このシステムは、さらなるエネルギー探索のための候補地に対する早期評価にも使用可能である。
IBMが、より多くの商業顧客をPower9アーキテクチャのターゲットにしていることを受け、同社のエクサスケール・システム担当で副社長であるDavid Turekは、「Pangea IIIは、IBM Power Systemsが大規模な政府機関や研究組織だけのものではないことを表しているのです。」と述べた。