世界のスーパーコンピュータとそれを動かす人々


1月 6, 2020

フォーミュラ1、如何にクラウドHPCを使用して次世代のレーシングを構築したのか

HPCwire Japan

Oliver Peckham

Rob Smedleyの説明によると、フォーミュラ1(F1)は、おそらく世界で最大のレーシングショーであり、すべてのレースで5億人のファンが見守っている。 F1のパフォーマンスエンジニアリングおよび分析チームのチーフエンジニアであるSmedleyは、Amazon Web Services(AWS)re:Invent 2019のステージで、HPCがどのように次世代のF1を可能にするかを説明した。

「私たちにとって重要な戦略的瞬間である2021年、スポーツ全体の技術規制が大幅に変更され、激震をもたらすでしょう」とSmedleyは述べた。以前、彼らはファンに、次世代のスポーツに何を期待するかを尋ねた。全般的に、彼らは車同士がわずか数インチ離れている状態での、より多くのタイヤとタイヤの争いを期待していた。

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  現在のウェイク問題の視覚化画像。 AWSによる提供画像。
 

もちろん、空気力学はそれを難しくする。F1の車の速度が上がると、ダウンフォースが上がり、車が地面に押し込まれる。これは離陸する飛行機とは全く反対である。しかしこれらの力はまた、大きな後流を作り出し、すぐ後ろに続く車を大幅に減速させる。(「ウェイクバッド」とSmedleyは述べた。)前の車に1秒遅れて追従すると、ダウンフォースは30%の減少となり、おおよそタイヤとタイヤの争いに必要な距離である0.5秒の遅れでは、ダウンフォースの減少が40%となる。

そのため、次世代の自動車のウェイクを最小限に抑え、ダウンフォースを最大限に高めるために、F1は計算流体力学(CFD)に注目した。Smedleyによると、F1は、CFDを使用し、約20年にわたって「仮想空域内の仮想車」を作成し、気流の物理学に対する洗練度と洞察力を高めてきた。もちろん、CFDには高性能コンピューティングが不可欠だった。

「CFDは常にスーパーコンピュータの問題を抱えていました」とSmedleyは述べた。「それは常にHPCの問題でした。」HPCにおいてのF1の始まりは控えめなものだった。初期の取り組みは、一晩でデイジーチェーン接続された20個のCAD端末だけで、設計者が午前中に戻った時には切断された。「今日では、」Smedleyは続けた。「私たちは約200個のコアを使用しています。それは約2.5倍もの計算能力なのです。」

F1は、2台の車のシミュレーションを構築して後流効果を視覚化し、後流を可能な限り減らす方法で次世代の車の設計を繰り返すことを望んでいた。それでも、コンピューティングの範囲は挑戦的だった。 「1台の車でCFDを実行し、今日の市場で最も優秀な家庭用コンピューターを使用する場合でも、」Smedleyは続けた。「約14日かかります。」F1の200コアシステムでさえ、個々の実行には4日間かかり、これは彼らが求めている意欲的な目標である能力にはほど遠い場所にあった。

そのため、F1はAWSと提携し、代わりにクラウド上でのシミュレーションを行った。Smedleyは、7,300コアで14のケースを同時に解決し、CFDモデルで合計27億個のセルを解決するという計算を簡単に実行した。「AWSとそのクラウドHPCサービスとの提携により、2台の車のシミュレーションは初めての反復でしたが、かかった時間は11時間半でした。現在では、2台の車のシミュレーションを行うのに8時間もかかりません」とSmedleyは述べた。

 
新しいアップウォッシュウェイクデザイン。AWSによる提供画像。  
   

「そして、その取り組みが私の背後に迫る2021チャレンジャーに繋がっているのです」とSmedleyは語った。「これが、私たちが望んでいるF1の変化であり、ファンがまさに求めているものであろうと願っています。」彼は、シミュレーションが、車の上にではなく、上を通過する「追い越し」後流を備えた新しい設計を開発するのに役立ったと説明した。

実際、シミュレーションの結果は驚くべきものだ。前の車の1秒後に追従した場合のダウンフォースの減少が30%から5%に変わり、0.5秒の場合は、40%からわずか7%になった。

「これは、まさに私たちが探していたものです」とSmedleyは述べた。