世界のスーパーコンピュータとそれを動かす人々


7月 17, 2014

HPC User Froum会議がAICSで開催

HPCwire Japan

西 克也

東京でGPU Technology Conferenceが開催されている7月16日、神戸の理化学研究所計算科学研究機構において米国の調査会社IDCと理化学研究所の共催でHPC User Forumが開催された。この会議は米国内での開催が中心に行われており今回は53回目となる。年に2回米国内で、さらに海外で2回の計4回開催されており、日本では前回2005年に海洋研究開発機構で開催されて以来、実に9年ぶりとなった。(http://www.hpcuserforum.com/)

会議では各HPCセンターのアップデートや、日本で開催したことから理化学研究所、宇宙航空研究開発機構、海洋研究開発機構および東京大学など日本のHPCセンターの紹介も行われた。参加者は約100名。

冒頭に計算科学研究機構の機構長の平尾公彦氏が挨拶し、京コンピュータが紹介され、最新のTOP500では4位といまだ強力な計算機であり、最新のベンチマークであるHPCGでは中国のTianhe-2についで世界2位であることを強調した。

引き続き、IDC社のEarl Joseph氏が2013年のHPC市場について説明を行った。2013年は世界全体で103億米ドルの売り上げがあり(内、スパコンと呼ばれる市場は約40億ドル)、2012年と比べて約8億ドル程度落ち込んでいるが、Joseph氏の説明によれば、これは2012年に大規模な調達があったためである。またベンダーシェアを指名し、トップはHPで33.4億ドル、2位はIBMで28.6億ドルであった。国内ベンダーは富士通とNECが上がっており、富士通は1億2千8百万ドルでベンダーの中では7位、NECは7千2百万ドルで9位となっている。さらにIDCは2018年の市場を全体で147億ドルと予測している。

2018hpcmarket

その後、日本を含むHPCセンターのプレゼンテーションが行われ、日本での開催ということで富士通が「Post-FX10」について簡単に説明を行った。「Post-FX10」については昨年のSC13の際に我々が取材した内容から特に変更はないが、明確に次のエクサスケールを目指していることが説明に追加されている。

世界中のHPCコミュニティから参加者があったこともあり、休憩時間中は久しぶりの再会と新しい関係を構築する話が聞こえてきた。ワークショップには韓国のKISITIからも参加があり、Director GeneralのJysoo Lee氏も参加していた。Jysoo Lee氏との立ち話では、2015年に計画されている数十ペタフロップスマシンの予算獲得は現在進行中であるようだ。またLee氏は2020年に計画されている「SuperKorea 2020」システムに関して、ベンダーシステムの導入の他に独自に開発するコンポーネントを含んだ新しいスーパーコンピュータシステムの開発も視野に入れているそうだ。開発モデル的には中国のTianhe-2のようにすべてのコンポーネントを独自に開発するのではなく、一部のコンポーネントを独自開発する方向であるようだ。

また私がこの6月のISCにおいて知り合ったNCSAの産業応用を推進している責任者であるMerle Giles氏との話では、技術計算の95%のユーザはいまだWindowsベースのPCで技術計算を行っており、たった5%のユーザがLinuxシステムで高度な計算を行っているそうだ。彼のプレゼンテーションではこの95%のユーザと5%ユーザの架け橋を如何に取るかがスーパーコンピュータの産業応用にとって非常に重要であると力説していた。

最後に参加者は京コンピュータを見学し終了した。次のHPC User Forumは9月にシアトルで開催される予定だ。

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