エクサスケールに向けて
Tiffany Trader

エクサスケールの障壁が益々近づくにつれて、世界中のエキスパート達はこの主要な進歩を可能にするように注意を向けている。主題に対して本当に深く潜り込んでいるのはハーバードの工学・応用科学である。この期間の2014年夏の「話題」の課題はスーパーコンピューティングが進歩する過程を見ることだ。
特集記事「Built for Speed: Designing for exascale computers」の中でBrian Hayesは、全ての注目すべき科学を可能にするにはコンピュータが十分に高速であることが必要だと考えている。
Hayesは血行力学の分野では、最善の修復戦略をピンポイントで行うために外科医が患者の動脈内の血流の詳細なシミュレーションを行うことが可能であり、ブレークスルーの用意ができていると説明する。しかしながら、現在では1秒間の血流をシミュレートするのに最高速のスーパーコンピュータでさえも約5時間掛かっている。医学における真の変革の効果を得るには、科学者や専門家は現在のものより1000倍高速なコンピュータが必要だ。
コンピューティングにおける次のステージに行くことは、SEASの優先事項のリストの上位にある。気候学、材料科学、分子生物学や宇宙物理学のような領域の研究者がこのような強力なリソースを仕様する準備を進めている間に、学校の科学とエンジニアリンググループが目標を支援するためにソフトウェアおよびハードウェアのプロジェクトに貢献している、とHayesは書いている。
ここからHayesは、前の1000倍のマイルストーンよりもエクサスケールをもっと重いチャレンジにする多くの課題について詳しく説明している。しばらくの間チップメーカーは性能を上げるために動作主端数を増加することに依存してきたが、この時代は終わっている。
「現代のコンピュータにおける制限速度は今や電力消費量により設定されています。」とHayesは書いている。「他の全ての要因が一定だとすると、プロセッサチップを動作させるのに必要な電力量は、動作周波数の3乗に比例して増加します。速度を倍にすると必要な電力は8倍になるということです。」
トランジスタを縮小し、各チップに複数のコアを置くことで(マルチコア)、2005年頃から毎秒あたりの合計演算数を増やすことができた。しかしもちろん、
信頼性を維持できなくなる前にどのくらいまでサイズを小さくできるかには基本的な限界がある。
アーキテクチャの観点から見ると、システムは1980年代のカスタム構築のハードウェアから、1990年代および2000年代の普通にいつでも買える部品になってきた。現在は再び特殊技術に揺り戻している。最初のペタフロップスマシンであるRoadrunnerは、特殊なCell BEコプロセッサをCPUと一緒に搭載したハイブリッド設計を使っていた。そして今や殆どのトップスーパーコンピュータはヘテロなアーキテクチャをベースとしており、CPUとアクセラレータまたはコプロセッサを混成して使っている。
課題はハードウェア側だけではない。Hayesのインタビューを受けた、コンピュータ科学のWang教授でありIACSのディレクターのHanspeter Pfisterは、エクサスケールに行くには根本的に新しいプログラミング・モデルが必要であると考えている。Pfisterは、マシンを全速で評価したりランクできるのはLINPACKベンチマークのみであると指摘している。他のソフトウェアではシステムの潜在的性能のたった10パーセントしか活用できない。オペレーティングシステム、ファイルシステム、そしてデータベースやネットワークを接続するミドルウェアにも問題がある。
Pfisterはまた、MPIとCUDAのようなプログラミングツールの将来については非常に懐疑的である。「CUDAで10億コアのことを考えることはできません。」と語る。「そして次のプロトコルが出現する時には、それはMPIではないと心の中で分かっています。リソースをアロケートしたり最適化するのは人間の能力を超えているのです。」
エクストリームコンピューティングに向けた唯一の筋道のたったソリューションは、ハードウェアの人間とソフトウェアの人間を同じ部屋に置くことであると信じている人がいる。このアプローチは「コデザイン」と呼ばれ、ユーザが欲しいものと製造者が供給できることのギャップを橋渡しする助けをする。アメリカ・エネルギー省は3つのコデザイン・センターを設立しており、この種のアプローチを促進している。
アメリカのDOEは当初は2018年頃にエクサスケール・マシンを登場させるつもりだったが、主にこの試みに資金を供給する政治が欠けていたために、予定が遅れたのだ。その後目標として2020年が噂されたが、それもまた過度に楽観的だった。核管理計画の支援における仮想核爆弾試験を実施する必要性において、エクサスケールは後回しよりも早めにするように支援すべきだというひとつのデータがある。この部分についてインタビューを受けたある専門家によれば、このプログラム単体でもエクサスケールマシンを確保するのに十分である。他にも国家安全保障において重要であるアプリケーションがある、例えば気候モデルだ。