世界のスーパーコンピュータとそれを動かす人々


2月 25, 2015

東北大学にスパコンのエースが登場

HPCwire Japan

2月20日、東北大学サイバーサイエンスセンターにおいて新スーパーコンピュータが運用を開始し、記念式典が開催された。運用を開始したスーパーコンピュータは日本電気社製の最新鋭機「SX-ACE」だ。今回東北大学が導入したSX-ACEは最初のスーパーコンピュータを1985年に導入したSX-1から7代目となる。

導入したスーパーコンピュータシステムはベクトル型スーパーコンピュータ、スカラ型並列コンピュータ、総容量4ペタバイトのストレージおよび三次元可視化装置から構成されている。ベクトル部分であるSX-ACEは2560ノードから構成され総コア数10,240コア、メモリ容量160テラバイト、理論最大性能が707テラフロップスだ。スカラ部分は68ノードのx86系クラスタで総コア数1,632コア、理論最大性能が31.3テラフロップスとなっている。

先代のSX-9と比較した表を以下に示す。全体性能は約20倍となっているが、消費電力が1.8倍、設置床面積が1.5倍となりそのために今回新しい建屋が建設された。

20150225-J1-acesystem-comparison

東北大学スーパーコンピュータセンターは大学の研究に留まらず、産業利用にも大きく活用されている。例えば国産旅客機MRJの設計に利用されたり、ハードディスク装置の記憶容量を2倍にできる磁気ヘッドの開発などにも貢献している。また今回のシステム更新の目玉のひとつに「リアルタイム津波浸水・被害予測システム」の研究開発が上げられている。これは地震発生後20分以内に「地震断層モデルに基づく津波発生予測」と「10mメッシュの津波浸水予測および被害推計」を行うことであり、SX-ACEは主に後者のシミュレーションを行うこととなる。東日本大震災で大きな被害を被った東北地方のみにならず今後大規模地震が予測される南海トラフなどにも適用される予定だ。

東北大学が採用したSX-ACEは「理論性能よりも実行性能を重視」したアーキテクチャとなっている。最近TOP500で採用が進められているベンチマークであるHPCGの昨年11月時点での結果では18位に入り込んでいる。ここで大変興味深いことがある。この18位に入り込んだSX-ACEは小規模での試験であったため、LINPACK性能ではTOP500には入ることができなかったことだ。(表のHPL Rankの項目では順位が掲載されていない)それにも関わらず、18位と言うかなり上位に食い込むことができている。さらにそのことを示すように、HPLに対するHPCGの比率は10.8、ピーク性能との比率は10.3と、他のシステムを大きく引き離した実行効率を示している。

201500225-J1-HPCG-rank

東北大学サイバーサイエンスセンターの小林広明センター長は、「普通の人々のためのスーパーコンピュータセンター」を目指すとしており、高い生産性と社会に貢献できるスーパーコンピュータを提供し続けていくと語っている。

Hiroaki-Kobayashi
小林広明 東北大学サイバーサイエンスセンター長