世界のスーパーコンピュータとそれを動かす人々


9月 3, 2015

【最短経路設計を探る(1)】

工藤 啓治

最近、「最短経路設計」ということを考えています。求める設計解にたどり着くには、勘と経験であれ、試行錯誤であれ、最適解探索であれ、設計案の検討を繰り返す作業が発生するわけですが、その検討回数を最小にする設計プロセス、すなわち最小の失敗回数で、一気に最後の”成功”にたどり着く方法はないか、ということです。究極は、設計問題が与えられたら、すべての制約条件を満足し、優先度の高い性能を最大限にする設計解を一回目の検討で求められることです。

ここで、一回の回数ではなく、”検討”と書いているのは、100ケースであれ、1000ケースであれ、複数の計算を一回の検討でまとめて行うことを意味しています。言い換えると、検討条件とデータの量に抜け漏れがなく、まとまった一回のパラメータスタディの中に、かならず、目的とする設計解が見つかるということです。しかも、そこにたどり着くための検討ロジックが大切で、詰め将棋のように無駄なく、まっすぐに解にたどり着くロジックでなければならないのです。

理論解ではない限り、もちろんありえないのですけれど、実際上は、試作の世界では、一発試作とか試作ゼロなどのよくある開発目標のように、一般的な考えではあるのです。同様のことをシミュレーションの世界でどうすればできるのだろうかと。

ある意味、それを経験で覚えているのが、熟練者と呼ばれる人たちであろうと思いますが、これまでのように、10年~20年の経験を踏まないと同じレベルにたどり着けないような状況では、間に合わないでしょうし、個人依存のままでは競争には勝つことはできないでしょう。次につながるいい失敗はしてもいいけれども、前と似たようなケースとか、参考にならないケースといった無駄な失敗を踏まない設計プロセスをどうやって決めていき、それを着実に組織として実現するしくみを探れないか、というちょっと壮大な課題なのです。このテーマは息がながそうなので、まずは一回目としておきましょう。

*本記事は、Facebookページ「デザイン&シミュレーション倶楽部」および「ダッソー・システムズ株式会社公式ブログ」と提携して転載されております。