科学・工学分野における人工知能に対応できる人材育成
Alex Woodie オリジナル記事「Educating an AI-Ready Workforce for Science and Engineering」
AI革命が進むにつれ、研究機関は科学者や技術者を新たなAIパラダイムに適応させる方法を模索している。良い知らせは、AIの利用が既に学術界や企業内で確固たる地位を築いていることだ。次の段階は、AIを自然に使いこなす次世代の科学者・技術者を育成するための訓練をさらに洗練させることである。
生成AIがわずか数年で社会に与えた広範な影響は否定できない。ソフトウェア開発を含む複数の分野が生成AIによって変革されつつあり、開発者の90%が生成AIを既に活用している。これは本日発表されたGoogleの2025年版DORAレポートによるものだ。
DORAレポートの調査対象となった5,000人の開発者のうち、約3分の2がソフトウェア開発でAIを多用している。具体的には37%が「中程度」、20%が「かなり」、8%が「非常に」依存していると回答した。回答者の5人に4人はAIが生産性を向上させたと述べ、59%はコード品質に好影響を与えていると認めている。
高等教育におけるAIの全体的な導入率はこれと全く同じである。先週発表されたCopyleaksの「2025年教育分野におけるAIトレンドレポート」によれば、学生の90%が学業目的でAIを利用しており、29%が毎日使用していると回答した。調査対象学生の4分の3は、過去1年間でAIの利用が増加したと述べている。
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| 学生がAIを利用する動機(出典:Copyleaks) |
学生は様々なタスクにAIを利用している。具体的にはアイデアのブレインストーミング(学生の57%)、アウトラインの作成(50%)、初稿の作成(44%)などだ。40%弱がAIで表現を言い換えたり言い回しを変えたりすると回答し、35%が他人の作品を要約するのに使用、33%がスペルチェックに利用、28%が数学の問題解決に活用している。
Copyleaksは報告書で「これらの数字は、AIが単なる課題の近道ではなく学習パートナーとして扱われていることを示している」と述べている。「AIはもはや実験段階ではない。日常的な学術活動に組み込まれている。学生はAIを、学習や作業の構造化、精緻化を支援する協力者と見なしている」
人工知能は、他の分野や一般教育ほど科学技術分野ではまだ広く普及していない。しかし推論エージェントの登場により状況は変わる見込みだ。これにより科学者たちは、仮説生成、実験設計、データ分析の自動化、文献レビューの実施、研究提案書の作成など、現在科学者が担っている多くの業務をエージェント型AIが処理できるようになることを期待している。
「我々は科学の進め方を変えたい」と、理化学研究所計算科学研究センター(R-CCS)の松岡聡センター長は、サンノゼで開催された兆パラメータコンソーシアム(TPC)の会議で述べた。「AIを単なる補助ツールとして使うのではなく…あらゆる場面で活用したい」
次世代の科学者にAIツールを活用させる教育競争が今、始まっている。TPCの創設メンバーであるアルゴンヌ国立研究所は先週、約200名のSTEM教育者・学術リーダーを招き、初の「AI STEM教育サミット」を開催した。「一つのエコシステム、多様な道筋―AI対応STEM人材の育成」と題されたこのイベントは、イリノイ州のANL施設で行われた。
「次世代の科学者、技術者、革新者を育成することは、アルゴンヌ研究所の最優先事項の一つだ」と、アルゴンヌ研究所所長のポール・カーンズは、このイベントの開会の辞で述べた。「科学によって世界を変え続ける我々の能力は、今日ここで構築しているようなパートナーシップにかかっている。」
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| アレクサンダー・ロドリゲス教授は、ミシガン大学で「科学のための AI」の授業を行っている(出典:ミシガン大学) |
アルゴンヌ研究所の特別研究員であり、データサイエンス・ラーニング部門の副所長であるラジーブ・タクールは、AI の未来に向けて学生を育成することは研究所の仕事だと述べた。
「アルゴンヌでは、科学者たちがすでに AI を活用して、エネルギー、国家安全保障、人間の健康に関する発見を加速させている」とタクール氏は語った。「AI は、私たちが大きな課題を解決するのに役立つだろう。しかし、その真価は、まだ想像もできないような発見や革新によって発揮されるだろう。それは、AI の活用方法を知っている人々によって可能になるのだ。」
アルゴンヌ国立研究所のAI STEM事業が教師向けAI教育を提供することを目指す一方、エネルギー省傘下の別の研究所である国立エネルギー研究科学計算センター(NERSC)は、次世代のAI活用科学者を育成する新たなプログラムを開始する。このプログラムはより直接的なアプローチを取る。
NERSCは来月、遠隔学生トレーニングシリーズを開始する。参加者は、大規模なAI適用に関する理解を深め、科学シミュレーションとAIの連携を学び、推論ワークフローを掘り下げ、AIアクセラレータが科学のためのAIをどのように可能にしているかを探求する。このイベントの詳細はこちらで確認できる。
AI for Scienceプログラムも、全国の大学やカレッジで急増している。ミシガン大学のコンピュータサイエンス・エンジニアリング学部では、科学的なプロセスに AI を応用する方法を学生に教えることを目的とした新しい授業が開始された。2024 年秋に開始されたこのコースは「科学のための AI」と呼ばれ、AI に関連するさまざまなトピックを深く掘り下げる。
「多くのコースが AI の基礎を教えているが、科学や工学の分野で見られる技術的課題に取り組むという、その最近の進展について扱っているものはほとんどない」と、アレクサンダー・ロドリゲス教授は今年初めに述べた。「このコースの革新的な点は、学際的なアプローチにある。学生たちに、AI を使って複雑な科学的問題に取り組むためのツールを提供しながら、科学の核心的な原理に根ざした姿勢を保つことを教えているのだ。」
テキサスA&M大学もまた、AI時代における科学技術の実践方法の核心的な課題に取り組んでいる大学だ。同学コンピュータ科学工学科の教授、ジ・シュイワンは最近、学術誌『Foundations and Trends in Machine Learning』に掲載された主要論文の共著者となった。この論文は科学のためのAIの基盤技術について論じている。「我々は AI を利用して、科学の理解を加速し、より優れたエンジニアリングシステムを設計している」と Ji 教授は述べている。
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ノースウェスタン大学も、次世代の AI を活用した科学者を育成するために具体的な取り組みを行っている。マコーミック工学大学院の新しい授業「AI for Science」では、学生たちに「AI が、材料発見、気候・環境科学、生命科学・医療アプリケーション、天体物理学・宇宙論、さまざまなシナリオで展開される機器など、さまざまな科学的アプリケーションにおける発見を加速する可能性がある」ことを教えている、と同大学は「AI for Science」のコース説明で述べている。
12月、学術界を代表するHPC(ハイパフォーマンスコンピューティング)とAI研究者たちがサンディエゴに集結し、第39回ニューラル情報処理システム年次会議(NeurIPS 2025)を開催する。このイベントでは「AI for Science」ワークショップが行われ、科学分野におけるAI研究の最新動向を共有する場となる。詳細はこちらで確認できる。
AI for Scienceは有望な分野であり、世界中の大学、研究機関、企業で数多くのプログラムが展開されている。この新たな学問分野が今後数年間でその価値を証明するにつれ、AIを活用して科学的発見を加速させる次世代の科学者を育成するためのリソースがさらに増えると予想される。









