IBM、ディープラーニングの「レッドハット」に
John Russell

IBMは、ディープラーニング・ツールCaffe、Theano、およびTorchなどを含めて提供していたPowerAIスイートにTensorFlowやChainerディープラーニングフレームワークを追加した事を発表した。これは、新しいディープラーニング市場でリーダーシップを発揮するというIBMの取り組みの一つのステップである。人気のあるフレームワークを含んだソフトウェア・ディストリビューションを提供することは、ディープラーニングの商用利用に向けた自然な一歩であると、IBMのHPC・分析分野担当の副社長であるSumit Gupta氏は述べた。
「PowerAIで行ったことは、ディープラーニングと機械学習のためのソフトウェアについてそのディストリビューションを行うことです。このアイデアは、Linuxの世界から来たものです。ほとんどのエンタープライズの顧客は、Linux.orgを利用してLinuxを手に入れるのではなく、Red HatやSUSEから調達しています。 現在のディープラーニングの世界は、ユーザーがソフトウェアをTensorFlow.orgやCaffe.orgからダウンロードするオープンソースコミュニティです。しかし、サポートされているディストリビューションを入手することを希望する顧客がいます。そこで、私達はすべてのディープラーニングフレームワークが事前にまとめられバンドルされたバイナリとしてPowerAIを作成しました。これによりいくつものフレームワークのダウンロードやインストールの難しさを解決しました。たとえば、TensorFlowは100種類のパッケージに依存しています。」
「ある意味では、ディープラーニングのRed Hatになっていることを強調したいと思います。 LinuxにとってのRed Hatと同様に、ディープラーニングにとってIBM PowerAIです。」
「もちろん、TensorFlowは元々Googleによって作成され、オープンソースコミュニティに組み込まれた。 TensorFlow のエンジニアリングリーダーであるRajat Monga氏は次のように述べている。「TensorFlowは、コンピュータビジョンから音声認識、テキスト分析に至るまで、幅広い分野のディープラーニングを展開する企業にとって急速にその実用的な選択肢になっています。 IBMがTensorFlowについてエンタープライズレベルのサポートを行う事は、多くの組織がこのフレームワークを導入するのに役立ちます。私たちはこのサポートをうれしく思っています。」
IBMのリリースによれば、「IBM技術サポートサービスは、従来のハードウェア・サポート・サービスに追加して、PowerAIスタックに関する革新的なエンタープライズレベルのソフトウェアサポートを新たに構築します。さらに、IBMグローバル・ビジネス・ソルーションとしては、Tensorflowなどの一般的なフレームワークを活用する一方で、PowerAIプラットフォーム上にソリューションの構築を行うためにコグニティブ・ビジネス・ソリューションの実践の一環として新たなディープラーニングの設計・開発チームを設立しました。」
IBMのOpenPOWER担当ゼネラルマネージャーであるKen King氏は、「あらゆる企業が、現在アクセスしているデータを活用するための新しいAI手法を検討しています。 PowerAIは必要なソフトウェアをパッケージ化し、TensorFlowのような主要なディープラーニングフレームワークに関するエンタープライズレベルのサポートを提供します。企業がこれらの新しいAI手法を使い、データ分析用の新しいコンピュータモデルを簡単に構築できるようにします。」と述べている。
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Powerベースのサーバーの販売も大きな目標だ。 昨年9月には、Power8ベースの新しいマシンがいくつか発表された。その中に、Power8+チップとNVIDIAのP100 GPUと通信するためのNVLinkなどを搭載したMinskyプラットフォームも含まれていた。PowerAI はMinskyに最適化されている。Gupta氏は「例えば、TensorFlowはPCIe GPUを搭載したx86システムと比較して、Minsky(HPCのPower System S822LC)で30%高速で動作します。それはCPUとGPUの間のNVlinkの価値を証明するものです(文末にシステムの詳細比較あり)。」と述べた。
Gupta氏は、TensorFlowを米国で最も人気のあるディープラーニングフレームワークの1つに挙げる一方で、Chainerを日本では最も人気があるソフトウェアとした。 PowerAIスイートには、CAFFE、Chainer、TensorFlow、Theano、Torch、cuDNN、NVIDIA DIGITS、その他数種類の機械学習とディープラーニングのフレームワークとライブラリーが含まれている。IBMのPowerAIのロードマップには、Microsoftのコグニティブツールキット(以前はCNTK:Cognitive Toolkitと呼ばれていた)やAmazonのMXNetのサポートが含まれている。
PowerAIソフトウェアの最新版は、既にダウンロード可能になっている。 NVLinkとP100 GPUを搭載したハイエンドのMinskyシステムを提供するHPC専用クラウドNimbixでも利用可能になっている。 Gupta氏によると、「Nimbixでは数ヵ月前に設置したMinskyクラウドを多くの顧客が使用している。」という話だ。
具体的な数字や名前は明らかにされなかったが、Gupta氏は「Minskyの市場での人気は非常に強い。」と述べている。
* IBMが提供する30%の優位性の詳細:
TensorFlow 0.12 / Inceptionv3のトレーニングで画像/秒の性能を30%向上させた。
TensorFlow 0.12(model-Inceptionv3、dataset-ImageNet2012)によりトレーニングを500回反復実行したIBMの内部測定の結果である。
HPC用PowerシステムS822LC; 20コア(2×10cチップ)、POWER8; 3.95GHz(ピーク); 512GB RAM; 4x Nvidia Tesla P100 GPU; Ubuntu 16.04、TensorFlow 0.12Competitive System:E5-2640v4; 20コア(2×10cチップ)。Broadwell; 3.4Ghz; 512GB RAM; 4x Nvidia Tesla P100(PCIe)GPU; Ubuntu 16.04、TensorFlow 0.12.1。
一般的な画像認識フレームワークであるInception v3モデルを実行して、従来のPCIeで接続された4つのNVIDIA Tesla P100を搭載したシステムした。
関連リンク:
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