ARMウェーブ:関心、展開、そして開発
John Russell

ARMのHPC支持キャンプが1月初頭に開催され、その後バルセロナ・スーパーコンピューティング・センターで開催されたMont-Blancプロジェクト会議において、Mont-Blancが第三開発段階用のチップとしてCaviumのThunderX2 ARMチップを採択した一方で、クレイ社はイギリスでARMベースのスーパーコンピュータを構築する計画を発表した。先日、フランスのCEAと日本の理研がARMのエコシステムの育成を目的とした緊密なコラボレーションを発表している。この動きは、ソフトバンク社によるARM社の買収、OpenHPCのARMサポートの発表、ARMのSVEスペックのリリース、富士通のポスト京マシンへのARMの採用、そして12月のARM社のHPCツールプロバイダーのAllinea社の買収と言った多忙な2016年に続くものだ。
ARM用のHPCエコシステムの断片は不均一ではあるが、所定の位置に滑り込んでいるようだ。結局のところ、HPC製品に関する市場の牽引力はまだ遠くにあるようだ。しかし、最近の発表では、潜在的なARMベースのHPC製品に必要なコンポーネントを整理する勢いが増していることが示唆されている。多くの問題が残っている。富士通はプロセッサの問題が主な原因としてARMベースのポスト京コンピュータのスケジュールが遅れることを議論しているのだ。それにも関わらず、HPCにおけるARMの関心が高まっている。
Mont-Blancプロジェクト・ミーティングにおける最大の衝撃は、イギリスにおけるGW4コンソーシアム(GW4)向けの巨大なARMスーパーコンピュータを構築するクレイの計画の発表だった。一見、これはARMベースのスーパーコンピュータの最初の製品のように見える。ビクトリア時代のエンジニアであるIsambard Kingdom BrunelからIsambardと名付けられたこの新システムは2017年の3月から12月の期間に提供される予定だ。重要なのは、Isambardが「様々なハードウェアプラットフォームでの評価と比較を可能にするために、同じシステム内で複数の先端的なアーキテクチャを提供することだ。」
ブリストル大学でプロジェクトリーダーでHPCの教授でもあるSimon McIntosh-Smithは、「新しい64bitのARM CPU、グラフィック・プロセッサやインテル社のメニーコアプロセッサなど、科学者達は潜在的なコンピュータ・アーキテクチャの選択肢が増えている。」と述べている。アプリケーションに最適なアーキテクチャを選択することは困難なタスクになる可能性があるために、この新しいIsambard GW4 Tier 2 HPCサービスは、同じソフトウェアスタックを使用して、様々な最も有望な新しいアーキテクチャにアクセスすることを目指している。これはアーキテクチャ間で直接「アップル対アップル」の比較を可能にするユニークなシステムであり、これにより、イギリスの科学者はアプリケーションに最も適したアーキテクチャをより理解できるようになるのだ。
ここに簡単なIsambardの概要がある:
- Cray CS-400システム
- 10,000個以上の64ビットARMv8コア
- HPC最適化スタック
- x86、Knights Landing、Pascalプロセッサとの比較に使用
- 3年間で470万ポンドの費用
使用予定の特定のARMチップは公表されていないが、仕様的にはCaviumのようだ。新システムはイギリス気象庁が管理する予定だ。気象室のHPC最適化のマネージャであるPaul Selwoodは、「このシステムは我々のパートナーと共同して、我々の気象および気候モデルを新しいCPUアーキテクチャに合わせて調整するのに必要な方法に関する見識を加速化することが可能になるのです。」とプロジェクトの発表記事の中で述べている。GW4アライアンスは4つの最先端の研究集約型大学である、バース大学、ブリストル大学、カーディフ大学、エクセた0大学を集結している。
BSCでの会合における二番目の衝撃は恐らくそれほど壮大ではないが、重要であった。Mont-Blancプロジェクトは2011年以来浸透してきている。2015年には小型のプロトライプが構築されており、ヨーロッパの多くがARMベースのプロセッサがHPC代替品を提供し、エクサスケールの取り組みにおけるヨーロッパのコントロールがより大きくなることを望んでいるようだ。64bitのARMv8-AサーバプロセッサであるCaviumのThunderX2チップは、ARMv8-Aアーキテクチャ仕様およびARM SBSAおよびSBBR標準に準拠しており、第三段階のプロトタイプを強化している。
もちろんMont-Blancは、ARMが実際に将来のエクサスケール・システムを含んだより大規模なマシンまでスケールできるかどうかを探求するヨーロッパの取り組みである。Atos/Bullが主契約者である。第三段階のMont-Blancプロジェクトでは、
- ARMアーキテクチャに基づいたエクサスケール・クラスの計算ノードのアーキテクチャを定義し、産業規模で製造できるようする。
- 計算効率を最大限に高めるために使用可能なオプションを評価する。
- 場の受け入れを促進するための適合するソフトウェア・エコシステムを開発する。
先日のCEA-理研の共同発表はもうひとつのARMエコシステムのモーメンタムを牽引するものだ。「我々はARMベースのエコシステムを構築することに全力を注いでおり、ARMに関係する人々にそのメッセージを送ってその人々が私たちと連絡をとってくれることを願っています。」とフラグシップ2020のディレクターでCEA-理研の取り組みのプロジェクトリーダでもある岡谷重雄氏は述べている。とりわけ、プログラミング言語、実行環境、およびエネルギーに最適化されたスケジューラに焦点を当てている。コードの共同開発とコード共有が、この取り組みの大きな部分である。(HPCwire Japan 記事参照 「フランスCEAと理研、ARMとエクサスケールで手を組む」)
ARMへの高まる関心が、今や主要なプレーヤーであるモバイルやSOCの世界を超えて成功に導くがどうかは不明だ。CEAの目標のひとつは、どのワークロードに最高の性能を出すか明確にするために様々なアーキテクチャとARMを比較することである。多くの市場関係者が相対的にまだ小さい市場であるARMのHPCにおける可能性を注視している。HPCにおける成功が低いことが、従来のサーバの成功を必ずしも排除することはできません。 さてどうなることか。