富士通:ポストFX10はエクサスケールへの一歩
富士通はSC13における展示会場において、現在同社が開発を進めている現行FUJITSU Supercomputer PRIMEHPC FX10の後継機種のプロトタイプを展示していた。現行機種であるFX10は国家プロジェクトで開発された「京」コンピュータの商用版だ。FX10は2011年に発表され、これまでに東京大学、名古屋大学、九州大学や台湾中央気象局などに大規模システムが販売されている。今回の開発はこのFX10の後継機種の開発であるため、「ポストFX10」と呼ばれている。
HPCwire Japan取材班はSC13の展示会場において、富士通株式会社次世代テクニカルコンピューティング開発本部第一システム開発統括部の清水俊幸統括部長に話を聞いた。
今回のポストFX10の開発ではエクサスケールのシステムを見越した開発が行われており、総合性能では100PFLOPSを超えるシステム構成が可能な設計となるとのことだ。
開発は必要な技術を先取りすることにより行われており、主に次の改良が行われる。
- CPUの強化 4倍以上の性能アップ
CPU当りの性能が改善され、現在のCPU当り236.5GFLOPSから約1TFLOPSと4倍以上に高速化される。
- CPUとインターコネクト・チップのワンチップ化
FX10で採用されているTofuはTofu2へと改良され、現在CPUとCPU間通信のためのインターコネクト・ネットワーク用に2チップを使っていたものを、半導体技術の進歩により、CPUチップ内にインターコネクト機能を取り込むことによりワンチップ化する。これにより実装密度が上がる。またワンチップ化によりメモリとの距離が短縮化され、メモリアクセス速度の向上と低消費電力を可能とする。CPU間接続には光ファイバー接続がサポートされる。
ポストFX10プロトタイプ | CPUメモリボードの説明図 |
- メモリの強化 HMCの採用
米国マイクロン社との連携により、ハイブリッド・メモリ・キューブ(HMC)を採用し、CPU性能の強化によるB/F値(浮動小数点演算性能に対するメモリアクセス性能、いくらCPUが速くてもメモリからのデータ供給無しでは実行性能がでない)の悪化を抑え、これまでと同じレベルを維持する。これによりアプリケーション移行による性能チューニングを軽減する。
CPUメモリボード・プロトタイプ | シャーシの全体構成 |
清水氏が開発にあたり、特に重要としているのは現在の京やFX10ユーザがスムーズに新機種に移行できることにあるそうだ。「開発にあたっている私どもの強いメッセージとして、汎用のCPUとして様々な分野のアプリケーションに適用できることが重要だと考えています。」さらに、「もちろん京とはバイナリコンパチですし、新機種の性能を享受するにはリコンパイルするだけで良いような環境を提供したいと思っています。」と清水氏は語った。
ソフトウェアやI/O周りについては大きな変更はなく、PCIインタフェースもサポートされる。GPGPUやXeon Phiのようなアクセラレータの搭載については考えていないとのことだ。
清水氏は最後に次のように締めくくった。「何と言っても、私どもは大きな構成まで視野に入れて開発を頑張っています。また次のエクサを考えるならば、大きな構成で実力の出せる、ユーザがアプリケーションを高速に実行することができるシステムを継続的に開発することが重要だと思っています。」
次世代テクニカルコンピューティング 開発本部第一システム開発統括部長 清水俊幸氏 |
ポストFX10の全体構成 |
この新機種は今後、現行の一世代前のFX-1のリプレースや新規の海外の大規模システム顧客、および以前富士通の顧客だった機関への販売展開を行っていきたいとのことだ。
システムは2015年頃に出荷予定となっている。