世界のスーパーコンピュータとそれを動かす人々


12月 18, 2013

物理学処理のためのx86の代替

HPCwire Japan

Tffany Trader

世界的LHCコンピューティンググリッド(WLCG)として知られる世界的な分散コンピューティングシステムは、約40カ国の150以上のコンピューティングセンターからのリソースを結集している。その使命は、スイスのジュネーブにある欧州原子核研究機構(CERN)の外側にある大型ハドロン衝突型加速器(LHC)によって毎年生成される25ペタバイトのデータを格納し、配布・分析することであり。この規模のプロジェクトは、ひとつの施設によって提供出来るものよりも遥かに多くの計算リソースを必要とし、それ故に、多組織な国際的グリッドコンピューティングシステムを必要とする。この基盤が、ヒッグス粒子存在の可能性のような発見を行う科学を支援する。

今後、さらに多くの容量が必要となる。これは、この科学的機器の可能性を最大限に実現するために、データセットを2~3桁増加せざるをえないことが予想される。今後数年間で関連するLHCコンピューティングを維持することは、ハードウェア側での大きな進歩が必要になる。2005年頃から、プロセッサはその凄まじい電力需要を主因として、規模の限界に突き当り始めた。この課題が、汎用のx86-64プロセッサ以外の新しいプロセッサアーキテクチャへの関心を主導している。

この状況が、科学コンピューティング向けのARMプロセッサおよびIntel Xeon Phiコプロセッサの実行可能性を調べるために著名な科学者の国際チームがヒントを与えてきた。彼らの書いた論文では、これらのプロセッサにソフトウェアを移植し、実際の物理学アプリケーションを使用してベンチマークを実施した彼らの経験を説明している。彼らの目標は、実用的な物理学処理に利用されるこれらのプロセッサの潜在能力を評価することである。

ARMの調査のため、テストの設定には、2つの低コスト開発ボード、ODROID-U2とODROID-XU+E、それぞれeMMCとmicroSDスロットを装備、複数のUSBポートおよびRJ-45ポートの10/100Mbps Ethernetが含まれていた。それぞれに5V DC電源アダプターを使用している。

著者は、「U2ボード上のプロセッサは、モバイルデバイスで使用するためにSamsungによって生産されたシステム・オン・チップ(SoC)のExynos 4412 Primeです。」と書いている。それは、2GBのLP-DDR2メモリを持つ1.7GHzで動作するクアッドコアのCortex A9 ARMv7プロセッサだ。そのプロセッサはまた、ARM Mali-400クアッドコアGPUアクセラレータを含んでいるが、その作業のために使用しなかったと、この論文では説明している。

彼らは続けて、「XU+Eボードは、ARMのbig.LITTLE構成により1.6GHz駆動の4つのCortex-A15コアと1.2GHz駆動の4つのCortex-A7コアを持つ最新のExynos 5410プロセッサを搭載し、2GBのLDDR3メモリと、同様にPowerVR SGX544MP3 GPU(この作業でも不使用)を持っています。」

Phiの調査のために、チームはPhiカード上で直接実行できるアプリケーションやベンチマークテストを支援するための基本的なHEPソフトウェア開発環境を作成した。その設定は、32論理コアを持つIntel Xeon ボックスにXeon Phi 7110Pカードを採用して、付加した。

論文では、各テスト環境のためのハードウェアおよびソフトウェアの仕様だけでなく、既存の様々な課題や制限もさらに精査している。実験結果と一般的なツールのサポートについての議論もある。著者は、「様々なアーキテクチャについて比較と最適化する際に、全体のベンチマーク結果の取得と同様に詳細に取得した性能を理解することが重要である。」

予測できるように、単一コア性能は、ARMv7プロセッサは従来のx86プロセッサよりもはるかに低いが、ワット当たりの性能は、ARMチップのためのより改善されている。著者は、「科学的な(汎用)コンピューティングでの使用の可能性がクリアされている。」と結んだ。彼らはまた、「ARMv7へのIgProfプロファイラとDMTCPチェックポイントパッケージの両方の移植が成功しました。」と報告している。これらの肯定的な最初のテストにもかかわらず、HEPコンピューティングのためのこれらの代替アーキテクチャの利点について明確な答えがある以前により多くの仕事をする必要がある。

この研究を記述した論文は、アムステルダムの高エネルギー核物理学におけるコンピューティング第20回国際会議(CHEP13)の論文集に提出された。