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11月 18, 2019

AMD、HPCの本命、高性能第二世代EPYC Romeを本格投入へ

小西史一

スポットライト

2019年9月中旬にDell Technologiesより、AMDの新しい第2世代のEPYCプロセッサー(7002シリーズ コードネーム Rome)用に新たに設計されたDell EMC PowerEdgeサーバーが5機種同時に発表された。

そして、今後ますますスピード、信頼性、コスト効率がシビアに要求されるHPC分野において、まさにリファレンスとなる構成のR6525とC6525の2機種が今回の発表に含まれている。

その特徴は、Romeの能力を最大限発揮するために全てが最適に設計された通称”Rome on Rome”であることだ。

この10月より受注を開始するPoweredgeサーバの心臓部のEPYC Romeについて、AMDでEPYCを担当するScott Aylor氏(Corporate Vice President & General Manager, Enterprise Solutions, AMD)に直接話を聞く機会を得られたので、幾つかの質問に答えていただいた。

 
  AMD Scott Aylor氏
   

先ずはこれまで幾度となく新しいCPUの技術をHPC業界にもたらしてくれたAMDが、HPCユーザに示してくれる新しいEPYCについて聞いてみた。
Aylor氏は、AMDが強く受け入れられている分野の1つはHPC分野であると考えており、EPYCの投入もよりAMDは、その市場に戻ってきたと明確に答えている。

「第1世代のEPYCは、高いコア密度とメモリ帯域で、HPCにおけるユーザのニーズを掴んだと考えています。そして、8月にサンフランシスコで発表した第2世代のEPYCの主要な技術的な進歩は、TSMCと密接に連携した、7ナノメートルの高性能な製造技術に移行したことで、コア密度を2倍にする事ができたことです。そしてHPC分野で特に重要な浮動小数点のベクトル幅を128-bitから256-bitへ2倍に、L2キャッシュも1コアあたり4MBと2倍になりました。これは、2019年の大きなニュースです」。

そしてさらに、第1世代のEPYCとの第2世代のEPYC Romeの違いについて次の様に付け加えた。

「第2世代のEPYCは、第1世代とピンコンパチブルになっていますが、その違いはハイブリッドマルチダイ実装をしている点にあります。Romeの中央にある大きな長方形は、I/Oダイと呼ばれ、全ての物理インターフェースとメモリが収められています。そして、その周辺にチップレットと呼ぶ小さなダイはCCD (Core and Cache die)で、8個のCPUとキャッシュが実装されています。

 
   

このInfinity FabricによりI/Oダイには、それぞれの8個のCCDから接続されています。このInfinity Fabricは非常に重要で、求められるスケーラビリティのレベルをみれば、その帯域は非常に大きく、さらにレイテンシーは、極めて小さくなければならないからで、Infinity Fabricに関する多くのアーキテクチャーの進歩が存在します」と説明してくれた。

次に日本の市場の特徴や、そのプロモーション戦略について聞いてみた。

「日本の市場では、非常に大きな違いがあると考えています。グローバルな企業だけでなく、国内のパートナー企業にも非常に強い結びつきがあると考えています。そして世界規模の企業と世界水準のテクノロジーにアクセスする必要があるとも考えています。その良い例が、Dell Technologiesです。

Dell Technologiesとの関係は、すでにグローバルなあらゆる地域にあると感じていますが、ディストリビューターのエコシステムの存在や、市場に焦点を当てる傾向のISVエコシステムがあるか等に着目すると、日本に合うユニークな戦略は重要と考えています。

いま私たちが集中する傾向にあるのは、日本において支配的で優勢な産業や業種のワークロードを実際に見ることであり、それらの分野でEPYCの価値について考える事です。例えば日本の主要なHPC市場の1つが自動車ですが、自動車はCFDや有限要素解析を必要とする市場で、自動車業界のリーダー的企業が日本に存在する事と相まって、私たちが持つ卓越したコンピューティングパワーを提供することで貢献できると考えています。

日本の素晴らしい多くの技術力、特に自動車に関しては、私たちにとって大きなチャンスと考えています。よって、私たちは、再びこの強い分野に集中していきたいと考えている」。

日本のHPC業界は保守的な顧客層も依然として存在しており、そのような日本の顧客を満足させるためには、EPYC Romeに対する何らかのグローバルなリファレンスや、ロードマップ等のコミットメントがあれば教えてください。

「日本には非常に保守的な環境があり、その信頼性を再獲得することは簡単ではありませんが、挑戦する必要があると考えています。そのポイントとしては確実にロードマップを実行していく事です。競合他社がいくつか課題を抱えている可能性がある中で、AMDは安定して実行してきた分野です。おそらく注目に値するもう一つの事は、今日の世界最大のコンピューティングの消費者がAMDを選択しています。

例えば、世界最大のOEMであるDell Technologiesは、その市場シェアの大部分で、5つもの異なるプラットフォームへの移行をしています。さらに、主要なクラウドプロバイダであるAzureやAWSなどもEPYCを中心に構築されている最大ボリュームインスタンスです。GoogleインフラストラクチャとGoogle Cloudに関する発表も最近追加しました。中国市場を見ると、TencentやBaiduのような企業も採用し成長を続けています。

 
   

私が言いたいのは、日本市場に向けて、仮想化やHPC分野でのEPYCの必要性を証明する必要があるということですが、より多くのコンピューティングの必要性を抱えている企業は、AMDにその将来を賭けています。私たちは、Dell Technologies、AWS、Azure、Googleなどのコンピューティングの観点から世界最大かつ最高の企業がAMDに将来を賭けていることを保証するために作業を行って来ている為にリスクはありません。」

世界中のメジャーなHPCやクラウドでEPYC Romeは採用されている事から、日本国内の保守的な層のユーザにも受け入れられると熱の入った説明をして頂きました。最後に日本のEPYCユーザに対して、コメントをお願いしました。

「EPYCのロードマップは安定しており、AMDがやりたいと考える事を実現しました。現状のパフォーマンスや、市場シェアを問わず、ロードマップに従って、計画を実行していくのが重要と考えています。
EPYC Romeの導入を待つべきではないし、待つ理由はありません。代替え案を見ると、その案は妥協であったり、同じレベルのパフォーマンスを提供していなかったり、同レベルのセキュリティを提供せず、同じレベルのエコシステムと相互運用を提供していません。まさに、「今が導入の時」です。今が私たちの技術を評価する時が来ています。AMDに移行する決定は、きっと非常に明るい未来が待っていると考えています。この事は一時的なものではなく、これから長く続く始まりです。日本のお客様が満足してくれる事を願っています。」

 非常に高密度なコアとメモリ帯域と拡張性を備えた、いま大注目のEPYC Romeに対するAMDの熱量が伝わるインタビューとなった。その性能を余すこと無く引き出すには、EPYC Rome ネイティブなサーバの利用は不可欠となります。記事では割愛したがAylor氏からは、EPYC Romeに対応する5つのプラットフォームすべてをゼロから完全に新しく設計し、それにより、より高いDDRメモリ速度や、PCI Gen4、より高い帯域の利用できるDell EMCの製品について言及がありました。

次の記事では、そのAMDの新しい第2世代のEPYCプロセッサ用に新たに設計されたDell EMC PowerEdgeサーバについて、その全容を紹介します。

アイキャッチ画像出典:https://www.amd.com/system/files/documents/TIRIAS-White-Paper-AMD-Infinity-Architecture.pdf

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