TOP500:世界の中の日本
西 克也

今週発表された新たなTOP500の上位に変化はなかったが、さて日本のスパコンはどうだったのだろうか?かつては米国についで世界で2番目であったスパコン大国日本の現状を見てみよう。
リスト全体ではアメリカは相変わらず233システムをエントリさせており全体の約半分を占めている。次に多いのは中国だ。中国は76システムと前回の63から驚異的な伸びを示している。日本は30システムと数の上ではイギリスと同じで3番目に多いエントリ数となっている。
まずはTOP500全体の合計状況を表1に示す。コア数およびアクセラレータコア数の伸びは小幅であったが、理論最大性能の合計は前回と比較して1割の増加となり、初めて400ペタフロップスを超えた。実行性能の合計もそれにともなって同様に伸びている。
今回値 | 前回からの伸び率 | |
コア数 | 21,666,731 | +4.6% |
アクセラレータコア数 | 4,796,162 | +4.6% |
実行性能(GFLOPS) | 274,100,486 | +9.6% |
理論性能(GFLOPS) | 403,500,906 | +10.7% |
表1. TOP500全体の合計値
さて日本はでどうであろうか、表2に日本のシステムの合計値を示す。
今回値 | 前回からの伸び率 | 全体に占める割合 | |
コア数 | 1,657,278 | +6.3% | 7.6% |
アクセラレータコア数 | 337,246 | +36.1% | 7.0% |
実行性能(GFLOPS) | 23,997,822 | +6.8% | 8.8% |
理論性能(GFLOPS) | 31,072,507 | +7.4% | 7.7% |
表2. 日本の合計値
コア数の伸びは小幅であったがアクセラレータコア数が36.1%増と全体と比較して大きな伸びを見せている。前回日本のアクセラレータコア数の合計は247,800であったので、約9万コア増えたこととなる。これは筑波大学のCOMAシステムが47,824コア、京都大学のcamelliaシステムが28,800コア、FOCUSのSystem Eが11,520コアで、この3システムにより増加した9万コアのほとんどを占めている。いくらアクセラレータのコア数が増えたとはいえ、システム全体に占めるアクセラレータの割合が小さいため、性能の合計値にはあまり貢献していないようだ。理論性能および実行性能の合計とも約7%程度の伸びとなっており、全体平均の約10%の伸びと比較するとあまり良い増加率ではないように見える。
さて、TOP500中の日本のシステムであるが、今回は30システムとなった。前回は28システムであったので2システムの増加とも言えるが、実際には新規が6システムで、リストから外れたのが4システムとなっている。今回リストから外れた4システムには、海洋研究開発機構のSX-9や北海道大学のSR-16000が含まれている。
機関名 | システム | 今回順位 | 前回順位 | |
1 | 理化学研究所 | K computer | 4 | 4 |
2 | 東京工業大学 | TSUBAME 2.5 | 13 | 11 |
3 | IFERC | Helios | 30 | 24 |
4 | 東京大学 | Oakleaf-FX (富士通FX-10) | 36 | 30 |
5 | 九州大学 | QUARTETTO(日立HA-8000-tc) | 37 | 36 |
6 | 筑波大学 | COMA (Cray CS300) | 51 | 新規 |
7 | 電力中央研究所 | SGI ICE X | 63 | 54 |
8 | 高エネルギー加速器研究機構 | HIMAWARI(IBM BG/Q) | 68 | 57 |
9 | 高エネルギー加速器研究機構 | SAKURA(IBM BG/Q) | 69 | 58 |
10 | 筑波大学 | HA-PACS | 89 | 73 |
11 | 国立天文台 | Aterui (Cray XC30) | 90 | 74 |
12 | 京都大学 | camellia (Cray XC30) | 102 | 新規 |
13 | 名古屋大学 | 富士通PRIMERGY | 134 | 108 |
14 | 民間(重工業) | HP | 142 | 新規 |
15 | 筑波大学 | HA-PACS TCA(Cray) | 165 | 134 |
16 | 核融合科学研究所 | Plasma Simulator(日立) | 187 | 152 |
17 | 京都大学 | Camphor (Cray XE6) | 190 | 155 |
18 | 東北大学金属材料研究所 | 日立SR-16000 | 196 | 162 |
19 | 分子科学研究所 | 富士通PRIMERGY | 204 | 168 |
20 | 民間(通信) | HP | 216 | 178 |
21 | 民間(電気) | IBM iDataPlex | 252 | 364 |
22 | 日本原子力研究開発機構 | 富士通BX900 | 269 | 211 |
23 | 民間(IT) | HP | 286 | 229 |
24 | 民間(電気) | HP | 323 | 新規 |
25 | 九州大学 | 富士通PRIMEHPC | 340 | 264 |
26 | 東京大学物性研究所 | SGI ICE | 369 | 272 |
27 | 民間(ソリューション) | IBM iDataPlex | 377 | 新規 |
28 | 東京工業大学 | TSUBAME-KFC | 437 | 311 |
29 | 計算科学振興財団 | System E(Cray CS300) | 452 | 新規 |
30 | 京都大学 | Laurel (Cray XtremeX) | 495 | 378 |
表3. TOP500における日本のシステム
数年前よりHPやIBMが民間のシステムを掲載するようになった。今回も新たに3システムが掲載された。4位の京コンピュータは順位を維持できたが、他のほとんどは順位を下げている。その中で順位を上げているシステムがある。今回252位となった民間のシステムだ。IBM iDataPlexを使用しており前回の364位から大幅に順位を伸ばしている。電気関係の民間ということであるが、このサイトはちょっと興味深い。まずひとつには前回のIBMシステムを増強したようだ。IBM iDataPlexのコア数を7,088コアから9,968コアに増強しており、実行性能も前回の140TFLOPSから196TFLOPSと40%増大している。このおかげで順位が364位から252位にあがったのだ。また、この企業は今回HPのシステムも導入したようだ。HPのシステムは323位にリストされて新規追加となっている。この企業は2つのシステムをランクに入れており、合計の理論最大性能は479TFLOPSで1システムであれば110位以内にランクされる大規模システムだ。
また筑波大学が3つのシステムをランク内に出したことも興味深い。最新のCOMAおよび従来のHA-PACSとHA-PACS TCAであるが、100位以内に2システムと165位に1システムであり、暫くは3システムともTOP500に残りそうだ。
次回のTOP500リストは2014年11月に行われるSupercomputing 2014会議において発表される。