世界のスーパーコンピュータとそれを動かす人々


10月 31, 2014

シミュレーションに情報爆発は起きている?-(3)蓄積から知識化へ

工藤 啓治

シミュレーションのデータは日々世界中で保存されてはいますが、保存されてどうなっているのでしょうか?実は、大半はどうもなっていません。個人PCか、せいぜい共有ディスクに置かれているだけで、再活用される手立ても無いままなのです。以前書いたように、この状態を深刻な課題と見て対応するか、あるいはこのままにしておくかで、将来の設計開発のあり方が大きく変わってくるのではないかということを、ここでは指摘したいのです。

(1)蓄積:データを系統立てて管理し、瞬時に検索ができる管理状態を実現するステップ

すべての履歴データは、いつ、だれが、どこを、どうした、なぜ、結果、判断といった属性情報群やパラメータや接続され、トレーサビリティ可能なデータの集合体として蓄積

(2)収集:大量の元情報から必要な情報を検索し、抽出するステップ

どのような情報を得たいかという意図を与えながら、データを絞り込んで収集を行う。最大値や最小値の設定、制約条件や特定の条件での探索、最適設計探索も広い意味での絞り込みの例。次のステップでの分析を行うためのデータ一式を集める段取りを担う。

(3)分析:絞り込んだ設計空間と解空間の関係性を分析するステップ

設計意図を持って、データを個別ではなく集合体として、多様な視点で分析する。サンプリングの全体特性であれば、寄与度(パレート図)を見る、回帰分析をして、解空間の挙動を可視化するなど。多目的解集合は、強い意図で絞り込まれた設計-解空間なので特別なパターンが見られることが多い。データの意味を思考しながらの操作であることが重要。

(4)知識化:設計知見を獲得するステップ

製品の性能設計に関する履歴情報が十分に集まり、設計意図通りのデータが絞り込まれ、分析手順が確立されてくれば、その手法と結果が、組織の設計知見となる。誰しもここを目標にしたいはずです。

以上の4つのステップが実現されることは、一つの目標像になるでしょう。そうした事例が登場したら、産業界に大きなインパクトを与えることになると思われます。ところが現実は、大半がまだステップ(1)に至るかかどうかという段階なのです。

*本記事は、Facebookページ「デザイン&シミュレーション倶楽部」と提携して転載されております。