世界のスーパーコンピュータとそれを動かす人々


3月 26, 2015

IBM、初のOpenPOWERサーバはHPCのワークロードをターゲット

HPCwire Japan

Tiffany Trader

第一回の定例OpenPOWERサミットがNVIDIAのGPU Technology Conference (GTC)と並行してサンノゼで開催され、インテルから市場シェアを奪おうとする多くのハードウェアと発表が行われた。水曜日には財団のメンバーが、システム、ボード、カードおよび中国向けにカスタマイズされた新しいプロセッサまでもの品揃えの1ダース以上のハードウェアを披露した。これらのギアの多くはx86が君臨するハイパースケール・データセンター向けであるが、HPC用にも何かがあった。

ぎゅうぎゅう詰めの会議室の真ん前に誇らしげに展示されているものの中にはTYANの世界初の非IBMブランドのOpenPOWER商用サーバ: IBMの最初のOpenPOWERサーバでエクサスケールへの望みを掛けたFirestonのプロトタイプ:そして最初のGPU高速化OpenPOWER開発者向けプラットフォームであるCirrascale RM4950があった。

2013年12月にIBM、NVIDIA、Mellanox、GoogleおよびTYANが設立したこの財団は、22カ国にまたがる110以上の企業、団体および個人に拡大してきた。OpenPOWERのメンバーによって行われた技術革新は、大規模または倉庫スケールのデータセンター用のカスタムシステム、GPU、FPGAまたは高度I/Oによるワークロードの高速化、SWアプライアンス用のプラットフォームの最適化、および高度なハードウェア技術の活動などがある。

OpenPOWERアーキテクチャは、SOC設計、バス仕様、リファレンス・デザイン、そして同様にオープンソースのファームウェア、オペレーティングシステムおよびサーバ仮想化ハイパーバイザー(KVMのPOWER8派生)を含んでいる。リトルエンディアンのLinuxはPOWERへのソフトウェア移行を容易にするために使われている。これらの特長は水曜日の基調講演でカバーされており、数々のOpenPOWERをテーマにしたセッションの中で議論された。

最初のHPC向けOpenPOWER製品はIBM Power8サーバで、コードネームはFirestoneだ。今年後半に出荷予定のため、このサーバは台湾のWistronが製造しIBMが販売し、NVIDIAとMellanoxの技術を組み合わせている。

「本日公開されたIBMのシステムのプロタイプは
OpenPOWERハイパフォーマンスコンピューティングおよびデータ解析用の新しい高密度Tesla GPU高速化サーバ・シリーズの最初のものです。」とNVIDIAの高速化コンピューティングのゼネラルマネージャであるSumit Guptaはコメントしている。

Firestoneはすでに多くの物が載っている。水曜日のこの会社の技術計算ロードマップ話の中で、OpenPOWERの理事長でIBMフェローであるBrad McCredieはIBMが米国エネルギー省に対し、CORALマシンであるSummitとSierraの開発を支援するために、Firestoneマザーボードを提供すると語った。2017年台のスーパーコンピュータは以前のシステムより5から10倍高速になると予測されており、複数のNVIDIA Testla Volta GPUと一緒にPOWER9チップが使われる予定だ。

NVIDIAのシニアIBMソフトウェア・デベロッパー・リレーションズのマネージャであるJohn Ashleyはこの協力関係におけるNVIDIAの役割について話をした。

「私共が心から信じている事のひとつは異機種コンピューティングです。」と彼は語る。「GPUはすべてのタスクに最適な訳ではありません。GPUが得意としないこともあるのです。私達NVIDIAが得意としない事が起こった時に、POWERプロセッサがとても役に立つのです。このPOWERプロセッサは地球上で最も高速で能力のあるシリアル・プロセッサのひとつであり、本当に自然にフィットするようにこれら2つを一緒にすることができる唯一のものです。だからこのイベントがGTCにおける大きな部分なのです。」

20150319-F1-Cabot-OpenPOWER-Intertwined-Technology-Trends-data-centricハイパースケールとクラウド・データセンターがOpenPOWER製品の最も顕著なターゲットであるが、IBMは多くの価値が同様にハイパフォーマンス・コンピューティング(HPC)にもあることを知ってもらうことを望んでいる。IBMの要請により、Cabotパートナーズのマネージング・パートナーであるMBAのSrini Chariが行った「OpenPOWERによるパフォーマンスの隙間を渡る」と題されたポジション・ペーパーでは、OpenPOWERで設計されたPOWER8ソリューション対インテルチップにおけるx86プラットフォームの性能結果を見ている。従来のHPCと新しいデータ集約型解析のワークフローが試験されている。

問われているのは、HPCの購入決定をガイドするには不適切感が増しているLINPACKのような計算集約型ベンチマークだ。「明らかなのです。」と著者は述べており、「最も実用的なHPCアプリケーションの性能はメモリ、I/Oおよびネットワークにも依存しており、コア当りのFLOPSやコア数だけではないのです。」

下図はデータ中心のHPC性能における良い指標となる標準ベンチマークの早期の結果を示している。

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この図は様々な分野での著名なアプリケーションのベンチマークをまとめている。

20150319-F1-OpenPOWER-POWER8-position-paper-fig9

何がこのような性能の向上を可能にしているのだろうか?このレポートによると、HPCワークロードにとっての、POWER8ベースのIBM Powerシステムの最も重要な特長のリストがここにある。

  1. 大規模スレッド:各POWER8コアは同時に8個のハードウェア・スレッドを処理する能力があり、12コア・チップでは同時に合計96スレッド実行可能。
  2. 大容量メモリ帯域幅:大容量のオンチップ、オフチップのeDRAMキャッシュとオンチップのメモリコントローラによるメモリとシステムI/Oへの超高速帯域幅。
  3. 高性能プロセッサ:POWER8は約4.15GHzのクロックスピードで、250ワット近傍の熱設計電力(TDP)。
  4. 優れたRAS機能:企業における多くの研究(例:ここ、そこの)において、IBM Powerシステムがx86システムより、信頼性-可用性-保守性(RAS)機能、性能、TCO、セキュリティおよび全体的な満足度でより高い性能を持っていることを示している。
  5. コヒーレント・アクセラレータ・プロセッサ・インタフェース(CAPI):CPUへの直接のリンクであるCAPIは、周辺機器およびコプロセッサがCPUと直接通信することを可能にし、実質的に、オペレーティング・システムとドライバーのオーバーヘッドをバイパスしている。IBMはサードパーティーのベンダーに対してオープンとなるようにCAPIを開発しており、設計可能キットまで提供している。CAPI経由でフラッシュメモリを接続した場合には、オーバーヘッドは24:1の割合で低減される。もっと重要なことは、CAPIはFPGAのようなアクセラレータを接続するために使うことができる – POWER8 CPUへの直接接続でワークロード特有の大きな性能向上が図られる。
  6. OpenPOWER財団によるオープンなパートナー・エコシステム。

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