世界のスーパーコンピュータとそれを動かす人々


8月 12, 2013

クレイ・スーパーコンピュータ、予報官に竜巻予測情報を提供

HPCwire Japan

Alex Woodie

5月20日にオクラホマ州、ムーア市を襲った竜巻EF5は、いくつかの点で特徴があった。観測以来最大級の竜巻であっただけでなく、予報官が発生の36分前に警告を発し人命保護に貢献したことである。予報に活躍したのは、国立計算科学研究所(NICS)にあるクレイ・スーパーコンピュータだった。

NICSにあるDarterとして知られるクレイ製XC30スーパーコンピュータは、ちょうど春のストーム期の真っ盛りである4月22日から6月7日までの間、オクラホマ大学暴風分析予測センター(CAPS)の研究者に利用されていた。気象予報業務は、国立海洋大気庁が主催する春の警戒気象観測の一部として実施されていたのである。

12000のインテル製Sandy Bridge コアと250テラフロップのピーク性能をもつDarterは、オクラホマ州ノーマンにある国立気象サービスが実施しているような、詳細重大気象予報(SSEF) を計算するために使われていた。結果として、脅威となる他の気象現象と同じように、竜巻の発生も予測して5月20日に36分前に避難警告を出すことができたのだ。

NICSのWebサイトに書かれている状況によれば、5月6日から6月7日にかけてDarterは毎日30もの重大気象予報を出していた。それらの予測情報は水平方向に4㎞四方の格子で切り分けられた米国の大陸全体で生ずる危険気象を含んでいる。

CAPSの気象予測システムでは、重大気象予報を生成するためにDarterに搭載されている複数の数値気象モデルを実行する。Weather Research and Forecast model (WRF-ARW)やAdvanced Regional Prediction System (ARPS) 、海軍のCOAMPSのモデルなどだ。NICSの報告によればさらに、それら気象モデルの一部として、国中から140か所以上のドップラー気象レーダーや従来型の観測情報がリアルタイムに集められ、ARPS 3DVARやクラウド環境での分析システムを用いて、モデルに同化処理されている。

2013年春のストーム期にCAPSの予報官が他の重大な暴風も正確に予測し、テネシー大学にあるNICSのスーパーコンピュータは、その成功に大きく貢献したのである。NICSウェブサイトに開示されているCAPSによる分析によれば、Darterが作成した重大気象予報は、国立環境予測センター(NCEP)が実施する北米中規模モデル予測など他のすべての予報システムよりも降雨量の予測が正確であった。

“NICSが管理するDarterスーパーコンピュータの性能を占有して活用することで、2013年春の試験期を成功裏に終わらせることに貢献したのである。”と、CAPSのファンユ・コンはNICSに語った。”CAPSが、警戒気象観測をするうえで暴風雨級の気象予測をリアルタイムで実施しただけでなく、厳しい気象現象をより高い精度で予測するための気象配置や条件の組み合わせを計算することもできたのである。”

警戒気象観測は、竜巻や激しい雷雨といった危険な対流現象を予測するためのモデルの調査試験として行われる。国立海洋大気庁(NOAA)が主催する今年春の警戒気象観測には、CAPSだけではなく、NOAAのストーム予測センター(SPC)や、国立大規模ストーム研究所(NSSL)も参加した。