テキサスのスーパーコンピュータが癌のホットスポットの発見に貢献
Tiffany Trader

国中の強力なスーパーコンピュータが癌研究のような重要な領域の進展を押し続けている。最新の成功例のひとつが、テキサス先端計算センターのマシンが十字型のDNAセグメントとヒトの癌の関係を明らかにしたテキサス大学オースティン校だ。癌形成に関与する経路に明かりを照らすことで、その研究が癌予防と治療の取り組みの改善をリードするかもしれない。
TACCのサイエンスライターであるJorge Salazarはテキサス大学オースティン校の科学者達がDNAヌクレオチド(別名十字DNA)の短い逆方向反復配列とヒトの癌の間のリンクを明らかにするために、Stampede、LonestarおよびCorralマシンにどのくらい依存していたかに関与している。これは最先端のHPCのリソース無しでは不可能な種類の研究と成果である。
癌研究の最も重要な側面のひとつは、何が正常な細胞を癌細胞にするのか解明することで、そのために、この新しい洞察はとても意味があるのだ。
十字型は一般的なDNA構造だ。短い逆方向反復(逆相補鎖に続くDNA配列)から構成され、これらはDNA複製と遺伝子発現のような本質的なプロセスの調節に重要な役割を果たしている。
StampedeやLonestarクラスタを使って、研究者は、30塩基対以下の短い逆方向反復を特定するために、非継承ヒト癌変異のCOSMICデータベースを徹底的に検索した。彼らが見つけたものは驚くべきものだった。短い逆方向反復は、ヒト癌遺伝子の転座切断点の部位で濃縮していたのだ。転座はDNAが破壊され修復されるところだ。一般的に発生するが、切断は癌の発症に関与している。
これら十字を形成する配列は本質的に染色体切断のマーカーであるが、それが癌の発生を引き起こすのだろうか? この研究チームは、この十字型がDNAの二重鎖の切断の形成を刺激する可能性がある少なくとも2つの方法があることを発見し、ひとつがDNA複製の妨害を引き起こすことで、もうひとつは修復プロセスの中止だ。(下図を参照)
DNAヌクレオチドの短い逆方向反復配列がヒトの癌の切断点に濃縮している。クレジット: Karen Vasquez, UT Austin
検索される数が非常に多いため、この研究は非常に計算集約型である、と研究者Albino Bacollahaは説明している。
Albino Bacollaはリード研究者のKaren Vazquezとテキサス大学オースティン校の薬理学・毒物学部門の教授であるJames T. Delucio Regentsと共に働いている。
「DNAに沿ったすべての位置について、このプログラムは数百回の繰り返しを行わなければなりません。」とBacollaは語った。「次に、これらの繰り返しの数はDNAの長さを掛け合わせ、そして癌患者の転座の数を掛け合わせる必要があります。」
結果として約20億回の繰り返しとなり、最速のデスクトップマシンの範囲から外れ、スーパーコンピューティングの範疇にこのプロジェクトを入れているのだ。
「これは、TACCのリソース無しでこの仕事をすることはできなかったでしょう。」とBacollaは述べた。「このセンターは容量とサポートの面で信じられない程のリソースです。現在、私達はこのリソースとスタッフを良く利用しています。これはテキサス大学オースティン校の研究者にとって素晴らしい機会なのです。」
Vasquez教授は、ヒトの癌の病因におけるもっともらしい説明としてこれを見ている。「これは私達に希望、インスピレーション、そして前身するための熱意を与えてくれます。」と彼女は表明している。
この研究は、国立衛生研究所の一部である国立がん研究所によって資金を供給されている。このプロジェクトは、TACCのWebサイトでさらに詳しくカバーされており、Albino Bacolla、 Junhua Zhao、 Scott SpitserそしてKaren M. Vasquez.と共にSteve Lu、Guliang Wangが共著者であるジャーナルCell Reportsに掲載されている。
アニメーションは直鎖状DNAが十字型状態への遷移を見せている。A-A-C-A-T-G-Tのヌクレオチドの配列(赤、左)にギャップ配列(黒)C-C-C-Aと逆方向反復A-C-A-T-G-T-T(赤、右)が続いている。科学者は、逆方向配列をパリンドロームと呼んでおり、その中5’から3’(上の鎖A-A-C-A-T-G-T、赤)もしくは相補鎖(A-A-C-A-T-G-T、下の鎖、緑)の5’から3’の同じ方法で読み取っている。クレジット:TACC