世界のスーパーコンピュータとそれを動かす人々


11月 24, 2015

TOP500の新たなベンチマークHPCGで京は2位

HPCwire Japan

先週米国オースティンで開催されたSC15において、TOP500の新たな性能指標となるベンチマークHPCG(High Performance Conjugate Gradients)のランキングが発表され、日本の「京」コンピュータが引き続き2位となった。1位も前回と同じ中国のTianhe-2であった。

 

HPCG201511

 

HPCGnumber
HPCG登録台数の推移

HPCGはTOP500の現在の性能指標として使われているLINPACKベンチマークと比べるとコンピュータの異なる面に焦点を当てており、計算機としてのトータルなバランスを検証することができるベンチマークだ。特に従来のLINPACKベンチマークはすでに20年以上が経過しており、性能指標としての利用に懸念が生じてきたためにこの新たなベンチマークHPCGが作られ、LINPACK性能値とは別に2014年6月よりランキングが発表されている。2014年6月には登録台数が15システムのみであったが、今回は64システムと順調に台数が伸びており、新たなベンチマークとしての普及が進んでいることが伺える。

ランキングを見ると少し興味深いことが見つかる。それはTOP500のランキングに入っていないシステムがHPCGにランキングされていることだ。特に日本の東北大学と大阪大学のNEC SX-ACEはTOP500には掲載されていないが、HPCGにおいては33位と34位に入っている。NEC SX-ACEについては実は以前からHPCGにおける高い性能に着目されており、恐らくその点でTOP500への登録よりはHPCGへの登録を優先させたのではないかと考えられる。

TOP500のオーガナイザーはHPCGはLINPACKを置き換えるものではない、別のリストとして当面は運用する方針である。それはやはりここまで定着してしまったLINPACKのランキングを止めることに産業界の抵抗があるからだ。数年前に行われたHPCGのBOFにおいても産業界から置き換えに対する抵抗意見が述べられていた。本来のスーパーコンピュータの性能をどのように数値化するかは昔からの課題だ。1つだけのベンチマークでシステムの全体性能を測ることは不可能であることは誰もが理解しているのではあるが・・・