NEC、次世代スパコン計画Auroraの内容が明らかに
日本電気は米国ソルトレークシティーで開催されていたスーパーコンピュータの世界最大の国際会議であるSupercomputing 2016の展示会場において、同社の現行SX-ACEに継ぐ次世代スーパーコンピュータ開発計画であるAuroraの概要を明らかにした。製品名は未定だが2018年に出荷を予定している。
NECの次期スーパーコンピュータは、従来のベクトルプロセッサを継承するとともに、小中規模向けに独自メモリを搭載したPCIベースのボードとなることとなった。フロントエンドにx86プロセッサを置くことでI/Oなどはx86を介して行われ、ユーザビリティを上げている。基本的にコプロセッサもしくはアクセラレータボードと言った感じになってはいるが、NECの担当者によればアクセラレータではなく、あくまでもベクトルプロセッサが主であるとのことだ。
ソケット当りのコア数は明らかにされていないが、現行のSX-ACEが4コアであることからそれ以上となるだろう。また、1コア当りの性能は150GFLOPS以上とされており、現在のSX-ACEが1コア当り69GFLOPSであることから2倍以上の性能向上となっている。メモリバンド幅はコア当り150GB/s以上となっており、現行の4コアで256GB/sから向上される。
コンパイラなどのソフトウェアすべてx86側で実行され、作成された実行モジュールはx86側とは完全に独立して実行される。
展示されていた実物は1Uサーバにベクトルプロセッサが2基搭載できるミッドレンジ向けのサーバだ。1台のサーバに2基のベクトルプロセッサが搭載されてはいるが、メモリを共有している訳ではなく、単独のノードとして機能するため、同じサーバ内でもx86を介してMPI通信を行う。また複数ノードの場合にはInfiniBandでノード間を接続する。
価格は明らかにされていないが、最小構成のワークステーションでは、1基のベクトルプロセッサを搭載したモデルで目標価格は100万円を切る構成としたいそうだ。
既存の東北大学や海洋研究開発機構向けの大型システムについては別の筐体設計となるようだ。また大型システム用のノード間結合についても不明のままだ。その辺りのスペックについては徐々に明らかになることだろう。
スパコン業界はエクサスケールを目指してプロセッサに関しては混迷の時代の入ってきた。富士通はARMを採用し、NVIDIAのプロセッサは今回Green500で首位を獲得した。また、インテル社もx86路線の継続とPhiさらにはFPGAを導入したシステムに注力してきている。一方でIBMはOpenPOWERでのシステムで攻勢をかけている。この市場の中で新たに投入されるベクトル・プロセッサがどのように市場を築いていくのか今後注目される。